髪の毛にはヘアサイクルという周期があり、一定の周期で成長と縮小を繰り返しています。しかし、ヘアサイクルが乱れ、成長する期間が短くなると毛が十分に成長できずに細くなったり、抜け毛の量が増えたりして薄毛につながることがあります。薄毛にはさまざまな原因があり、その原因によって適切な治療法が異なるため 、薄毛に悩んでいる場合は、まず皮膚科を受診するとよいでしょう。
本記事では、薄毛の治療法や自宅でできるセルフケアについて詳しく解説します。
薄毛の原因にはさまざまにありますが、薄毛の中でも代表的な病気である男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia :AGA)を中心に治療法を解説します。
男性型脱毛症(AGA)の治療は基本的に薬物療法によって行われます。薬にはフィナステリドやデュタステリドの内服、ミノキシジルの外用が推奨されています。
一方、女性型脱毛症(Female Androgenetic Alopecia :FAGA)は、フィナステリドやデュタステリドの内服は推奨されておらず、ミノキシジルの外用を基本として治療を行います。また、円形脱毛症の場合は、ステロイドなどの外用、セファランチン内服、紫外線照射療法などを行います。
男性型脱毛症の場合は、植毛が検討される場合もあります。女性型脱毛症の場合は男性型脱毛症よりも推奨度は下がりますが、植毛を行ってもよいとされています。ただし、推奨される植毛の方法は自毛植毛術であり、人工毛植毛術は安全性に関する根拠が乏しいため、専門家からは推奨されていません。自毛植毛術とは、比較的薄毛になりにくい後頭部や側頭部の自分の毛を薄毛の部分に移植する方法です。なお、植毛は保険適用外です。
男性型脱毛症や女性型脱毛症に限らず、薄毛や脱毛の原因がストレスだといわれることがありますが、科学的な証拠はありません。ただし、皮膚炎を合併すると毛の量がますます減ることが知られているため、頭皮も含めてきちんとシャンプーをし、頭皮を清潔な状態にした方がいいでしょう。なお、過度な洗髪やマッサージは刺激となり皮膚炎を悪化させることもあるため注意が必要です。これも医師の指導に従って行います。
円形脱毛症や脂漏性皮膚炎、抜毛症(ストレスなどで髪を自分で抜いてしまう病気)、そのほかさまざまな病気が原因となっている場合もあります。そういった場合は、まず原因となる病気に対する治療が必要となります。薄毛の治療は基本的に皮膚科で行うことが可能ですが、抜毛症の場合は精神科の受診が必要な場合があります。
薄毛に対してできるセルフケアとしては、まず市販薬の活用が挙げられます。代表的なものには、発毛を促進する目的の発毛剤と、頭皮の環境を整えて抜け毛を防ぐ目的の育毛剤があります。これらの市販薬には、医療機関での治療にも使われるミノキシジルが配合されているということが特徴です。しかし、副作用が生じる可能性もあるため、購入の際は必ず薬剤師に相談したうえで使用してください。また、育毛シャンプーや育毛用品も数多く販売されていますが、これらは育毛剤と同様に抜け毛を予防するもので、発毛剤のように髪を新たに生やす効果は期待できないと考えられています。
ただし、薄毛にはさまざまな原因があり、場合によっては病気が隠れているものもあるので、まずは医療機関の受診を検討してください。
薄毛を改善するには、原因に合わせた適切な治療が必要になります。しかし、それを自己判断することは困難です。そのため、まずは皮膚科を受診して医師に診断を受けたうえで、医師の指示に従って自分の薄毛に合った治療を受けることが重要です。
医療法人 桃恵会 心斎橋いぬい皮フ科 院長、大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座 特任教授
医療法人 桃恵会 心斎橋いぬい皮フ科 院長、大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座 特任教授
日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医・代議員日本アレルギー学会 アレルギー専門医・指導医・試験問題作成委員会日本褥瘡学会 評議員日本抗加齢医学会 抗加齢専門医・評議員日本臨床毛髪学会 理事長日本毛髪科学協会 副理事長・資格審査委員会委員長・中長期事業計画委員会委員日本美容皮膚科学会 理事・機関誌編集委員会委員長・推薦委員会委員・学術教育委員会委員・用語集検討委員会委員毛髪科学研究会 世話人・監事日本研究皮膚科学会 評議員日本皮膚免疫アレルギー学会 代議員・広報委員会委員日本化粧療法学会 評議員
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