「脱毛症」について、皆さんはどれだけのことをご存知でしょうか。「年を取った男性の頭部が薄くなる現象」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
脱毛症は読んで字のごとく、毛が減ってしまう病気のことです。もちろん、前述したようにある程度年を取られた男性に多くみられる現象の一つでもあります。しかし、それ以外にも脱毛症は様々な分類がされています。今回の記事では、横浜労災病院皮膚科部長の齊藤典充先生に、脱毛症の中でももっともメジャーな症状である男性型脱毛症(AGA)とはどんな病気なのかについてお話をお伺いしました。
男性型脱毛症(AGA)は思春期以降に発生する、進行性の脱毛症です。男性型と名前がついていますが、男性ホルモンの作用によるもので、男性では20代後半から40代後半で多く見られます。脱毛のパターンにも特徴があり、前頭部の髪の生え際がM字型にまたは頭頂部がO型に薄くなり、その範囲が徐々に広がっていきます。女性の場合には閉経後に発症することが多く、生え際のあたりに影響が出ることは少なく、頭頂部の毛髪が薄くなる傾向があります。
円形脱毛症が自分では気が付きにくいのに対し、男性型脱毛症(AGA)については自ら「頭皮や髪の様子がおかしいようだ」と気づき、来院する患者さんがほとんどです。発症するとまず髪のハリやコシが失われ、うぶ毛のような頼りない毛に変わっていきます。その後にじわじわと脱毛していくので、進行の過程で何かがおかしいと気づく患者さんが多いようです。
男性型脱毛症(AGA)が起きる原因は、男性ホルモン(テストステロン)がジヒドロテストステロンに変換され、それが前頭部から頭頂部の毛髪の毛根に作用することで、髪の毛の成長期が短くなり、その結果毛髪が徐々に頼りなくなります。また、遺伝的・環境的な様々な要素も関わっているといわれており、父親が男性型脱毛症(AGA)である場合には、遺伝する傾向が強いようです。
治療を行うことは不可能ではありません。しかしこの場合の治療とは、抜けた部分に毛を生やすということではなく、脱毛を今以上に進ませないことが主な目的です。
注意して頂きたいのは、一度毛が生えなくなってしまった部分は、基本的にはもう生えてこないということです。それでも弱ってしまった毛を元気にすることはできるので、全体的に髪のハリを戻してあげると薄毛の部分は目立ちにくくなります。
おもにテストステロンからジヒドロテストステロンに変換されるのを阻害する薬を投与します。これにより短くなった成長期を伸ばし、毛髪の伸長を再び活性化させます。これを目的とした治療では実に98%の患者さんに、現状維持の効果がありました。
円形脱毛症と同様に、処方されている漢方薬はいくつか存在していますが、エビデンス(確証)が確立しているものはありません。
ちまたには男性型脱毛症の改善をうたうサプリメントや育毛サロン、育毛剤などが多数存在しますが、科学的根拠が明確ではないものも多くあります。しかし、なかには開発段階で医師が関わり、しっかりと研究を行ったうえで販売されている商品もありますので、もしも使うのであればそのようなものを選ぶと安心でしょう。
ただし、市販されているサプリメントのいずれも髪を生やす作用があるわけではなく、これらはあくまで頭皮の血流をよくして毛根に栄養を届けるためのものです。サプリメントを試してみたいという方は、最低でも3か月から半年ほど、頭皮のかぶれに注意しながら症状に改善があるか様子をみてみるといいでしょう。
男性型脱毛症は遺伝的リスクが多いものではありますが、必ず遺伝するわけではなく、予防を行うことが難しい病気です。
テレビや雑誌では頭皮をマッサージする方法が脱毛に効果があると紹介されていたり、整髪料にも脱毛予防のための商品が色々と販売されていたりしますが、これらも地肌の血行を良くすることが目的です。必ずしも脱毛を予防する方法ではないということを、覚えておいてください。むしろ、色々な育毛方法を試しすぎて地肌を痛め、かえって脱毛を促進させてしまう患者さんが多いため注意が必要です。
患者さんからよく聞かれる質問として、「シャンプーはどのくらいのタイミングですればいいか」「どのような食品を多く食べればいいのか」というものがあります。シャンプーはその方の地肌の状態など個人差が多くあるため、一律に「何日おきがベスト」という日数はありません。また、食品に関しても残念ながら、ひとつのものを多く食べることで髪が生えやすくなるというものは存在しません。一般的によく「わかめやひじきが髪にいい」などと言いますが、それぞれの黒々とした色合いが髪にいいのではないかとされていただけのようです。食事はバランスよく色々なものを摂取することが大切です。
いずれの脱毛に関しても症状が進む場合、また市販の商品で改善が見られない場合には、早めに医師の元を訪れることが状況を悪化させない秘訣になります。皮膚科で、いつからどのような症状が出ているのかを相談してみてください。症状にあった治療を行うことが一番の治療になります。
なごみ皮ふ科 院長、神奈川県皮膚科医会 副幹事長
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