インタビュー

AGAの治療で髪の毛は増える? 皮膚科でのAGA治療と薬剤の効果、費用について

AGAの治療で髪の毛は増える? 皮膚科でのAGA治療と薬剤の効果、費用について
伊藤 泰介 先生

浜松医科大学 皮膚科学講座 准教授

伊藤 泰介 先生

この記事の最終更新は2016年05月27日です。

日本人男性の多くが悩むAGA男性型脱毛症)は進行性の脱毛症であり、自然治癒することはありません。しかしながら、病院で適切な治療を受けることで、大半の方にはよい効果が現れ、実際に精神的な苦悩から解放される方も多いと、脱毛症外来を担当されている浜松医科大学 皮膚科学講座 准教授の伊藤 泰介(いとう たいすけ)先生はおっしゃいます。

本記事では、AGAの治療に使われる薬剤の効果や副作用、通院頻度や年間にかかる費用の目安について、伊藤先生に解説していただきました。

AGAの治療には、現在次の薬剤が使われています。

  1. フィナステリド……2型5α‐リダクターゼを阻害する効果のある内服薬。2016年現在世界60か国以上で承認されています。
  2. ミノキシジル……血管拡張作用や皮膚の線維化抑制効果のある外用薬。第一類医薬品であり、安全性に関して薬剤師の情報提供を受けたうえで、薬局で購入することも可能です。
  3. デュタステリド……1型・2型5α‐リダクターゼの両者を阻害する効果のある内服薬。2016年6月に発売されました。

これらは、いずれも日本皮膚科学会からの男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版で推奨度Aの“行うよう強くすすめる”と分類されています。単体でも効果は得られますが(後述)、内服薬と外用薬の併用で相乗効果が期待できます。

AGAを治療する専門の診療科は皮膚科です。近年ではAGA専門クリニックや美容皮膚科、美容外科などでも治療を受けることができますが、公益社団法人日本皮膚科学会認定である皮膚科専門医の立場から述べると、まずは皮膚科を受診するのがよいかと考えます。

特に“診断”に関しては皮膚科で受けることをおすすめします。

20歳代~50歳代の方と70歳代~80歳代の方では同等の治療効果が現れるとは考えにくく、基本的には若い方のほうが治療効果が出る見込みも高くなるため、気付いたときや気になり始めたときに病院を受診することをおすすめします。

効果を実感するまでにかかる期間は、およそ半年から1年ほどです。(※個人差があります)

AGAの治療は継続中には効果を得続けることができますが、中止すると“本来の状態”に戻ってしまいます。ここでいう本来の状態とは、治療を始める前の状態ではなく、患者さんが治療をしていなかった場合のその年齢での状態を指します。

ここで覚えておいていただきたいのは、AGAが進行性の脱毛症であるということです。たとえば20歳で治療を開始し50歳でやめた場合、その患者さんの毛髪の状態は“20歳以前の状態”ではなく“無治療であれば50歳のときこうなっているであろう、本来の自分の状態”になります。これは遺伝子でプログラムされているものであり、残念ながら変えることはできません。AGAの治療をやめたときに“以前より毛量が少なくなった”と感じる方がいらっしゃるのは、このような理由によるのです。

診察ではAGAの診断のために、問診(カウンセリング)・頭部撮影による所見確認・ダーモスコピー検査などを行います。

ダーモスコピー検査は、本来ほくろや腫瘍(しゅよう)などの色素病変を拡大鏡(ダーモスコープ)で観察し、良性か悪性かを判断するために行われるものです。

これを頭皮に用い、薄毛部分の毛髪の太さなどを確認することでAGAの診断を行います。毛髪が薄くなっている部分には、太い毛(終毛)と細い毛(軟毛)がまだらに生えています。国際的な診断基準では、薄毛部分に2割以上軟毛化があればAGAが疑われます。また軟毛の毛穴付近がやや茶褐色状になっていることがあります。髪の毛の太さは、側頭部や後頭部の毛髪と比較することで軟毛化を判断します。

なお、血液検査はAGAの直接的な診断には結びつきません。

軟毛化 伊藤泰介先生より
軟毛化とは:写真提供 伊藤泰介先生より

AGAの診断は決して難しいものではありません。特に男性の場合は、抜け方のパターンによって判断しやすいため、ほかの脱毛症円形脱毛症など)とも容易に見分けることができます。

ただし少数ですが、同じ部分にAGAと円形脱毛症を合併していることがあり、この場合はどこがAGAでどこが円形脱毛症か区別することは困難になります。

FPHL(女性のAGA)の場合は、全体的に毛髪が薄くなるため、亜鉛や鉄欠乏による脱毛症などとの鑑別が難しくなります。

通院は2か月に1回、もしくは3か月に1回程度必要です。フィナステリドを内服した場合、多くの方は3か月~6か月で効果が現れ始めますので、6か月目の診察を効果測定の1つの目安としています。

AGAの治療は自費診療になるため、施設により差が大きく開きます。

浜松医科大学医学部附属病院の例を挙げると、フィナステリドが1錠250円前後ですので、1か月(30日)でおおよそ7,500円(院外処方)、初診料や再診料、処方箋料や調剤料などを合わせると、1年間で約10万円前後の費用がかかります。

一方デュタステリドは一般的にフィナステリドも高額となります。その価格は処方箋薬局により異なります。

また、薬局では5%ミノキシジルの外用薬が、1本7,000円前後で販売されています。これを1か月に1本買うとすると、年間で10万円前後の費用がかかります。

そのため、ガイドラインに沿った治療を両方行うと、1年で20万円前後かかるという計算になります。

施設によっては、フィナステリドやデュタステリドを院内処方とし、診察費用を込みにして月額単位で費用を提示していたり、美容皮膚科や美容形成外科などでは、HARG療法やミノキシジル内服薬などを行っていたりするところもありますので、治療にかかる費用はこの限りではありません。

フィナステリドやデュタステリドはジヒドロテストステロンを抑制する作用があり、男性のみに推奨されている薬剤です。妊娠可能な女性は使用不可とされており、特に妊娠中の女性はフィナステリドやデュタステリドに触れないよう注意せねばなりません。

男子胎児を妊娠している場合は、ジヒドロテストステロンの抑制作用により男児の外性器の発育に影響を及ぼす危険性があります。

性的な障害について、フィナステリドの国内臨床試験では、性欲減退1.1%、勃起機能不全0.7%と報告されています。また、その後の使用成績調査では、943例中2例のみに性欲減退が認められました。一方、デュタステリドは臨床試験において性欲減退2%、勃起不全5%などが報告されています。

ミノキシジルの外用薬は、薬剤師の指導のもと薬局でも購入できる第一類医薬品ですが、頭皮のかぶれかゆみなどの副作用があります。

特に循環器系の持病がある方は、塗布するだけで血圧が低下したり、足がむくんだりする可能性もあるため、購入前に医師に相談したほうがよいでしょう。

ここまでに述べてきたように、日本ではフィナステリドがAGAの治療薬として処方されてきました。このフィナステリドは、2型5α‐リダクターゼを阻害する効果があります。そして2016年6月、本邦でも韓国についで、1型と2型5α‐リダクターゼを両方阻害する“デュタステリド”がAGAに適応拡大されました。

なお、毛乳頭に発現する5α‐リダクターゼは2型だけですので、AGAに特化した治療を行うのであればフィナステリドのみでカバーできます。

1型5α‐リダクターゼが関連しているのは前立腺や皮脂腺であり、すでに2009年からデュタステリドは前立腺肥大の治療薬として使用されていました。

今回デュタステリドの適用が拡大され、AGAの治療にも使用できるようになったのです。

デュタステリドとフィナステリドでは、前者のほうが髪の毛の本数が増えたというデータが出されています。つまり頭部全体を見たときには、デュタステリドのほうが効果が期待できるということです。また、フィナステリドは一般的に前頭部への効果は弱いといわれていますが、デュタステリドは前頭部に強いとされています。このほか、フィナステリドを服用してもAGA治療効果が得られなかった人が、デュタステリドを服用したところ改善したという論文も出ています。

デュタステリドとフィナステリドでは、半減期にも大きな差があるので、副作用にも目を配らねばなりません。半減期とは、血中の薬物濃度が2分の1に減少するまでにかかる期間を指す言葉です。フィナステリドの半減期は3~4時間半ですが、デュタステリドはおよそ3~5週間を要するため、副作用が生じたときには悩まされる期間も長引いてしまうのです。

デュタステリドとフィナステリドは、どちらも精子の運動率の低下や精液の量の減少などに少なからず影響があるとされています。臨床試験に基づく安全性に関する論文は出ているものの、妊娠への影響が分かっていないことは懸念されますが、2016年時点では、大きな問題は起こっていません。

2017年に日本皮膚科学会によりAGA診療のガイドラインが改訂されました。この改訂ではデュタステリドが男性型脱毛症の治療の推奨度A(行うよう強くすすめる)で追加されました。自家植毛術については男性には推奨度A、女性には推奨度B(行うようすすめる)というように分けています。

さらに2010年度版には入っていなかったLEDおよび低出力レーザー照射が推奨度Bとなっています。2010年版では推奨度C1(行ってもよい)となっていたアデノシンが推奨度Bにランクアップしています。これは2013年、 2015年、2016年と効果を証明する論文が発表されたことによります。

ガイドラインはあくまで目安であり、医師の診療をしばるものではありません。各人に合わせた診療が行われ、よりよい治療と結果が出ることが期待されます。

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