インタビュー

血液内科で扱うさまざまな貧血症-鉄欠乏性貧血だけが「貧血」ではない

血液内科で扱うさまざまな貧血症-鉄欠乏性貧血だけが「貧血」ではない
増田 義洋 先生

済生会宇都宮病院 血液リウマチ科 主任診療科長

増田 義洋 先生

この記事の最終更新は2016年06月23日です。

貧血というと大した病気ではないと考える方もいらっしゃるかもしれません。あるいは鉄欠乏性貧血を思い浮かべる方も多いことでしょう。しかし、貧血症状を引き起こす病気は他にもあり、その原因はさまざまです。また、その一方でご高齢の方が意外な理由で体調を崩し、貧血症を疑われるケースもあるといいます。血液内科で扱うさまざまな貧血症について、済生会宇都宮病院血液リウマチ科主任診療科長の増田義洋先生にお話をうかがいました

我々医師が貧血というときには、酸素を運ぶ血液中のヘモグロビンが少ないことを指しますが、一般の方が貧血と呼んでいるのは一種の脳虚血(のうきょけつ)であることが多いと思われます。

鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)は読んで字のごとく、鉄分が足りない状態をいいます。女性の場合は月経出血で体から失われるという要因が大きく、男性の場合はほとんどが消化管出血、たとえば潰瘍や、あるいは消化器系のがんが主な原因となりますので、そういった疾患を疑ってスクリーニング(ふるい分け)をする必要があります。

巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)は、その原因によってビタミンB12欠乏性の貧血と葉酸欠乏性貧血の2つに大きく分けることができます。DNAの合成に必要なビタミンB12や葉酸が不足すると、骨髄の中で赤芽球は大きくなるものの、DNAができないために分裂しなくなります。赤芽球が異常に大きいまま赤血球になることによって貧血が起きることから、巨赤芽球性貧血と呼ばれます。

溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)は、できあがった赤血球が壊れて起きる貧血の総称です。赤血球が壊れる理由はさまざまであり、その原因がわかればそれぞれに対処できるものもありますが、生まれつきというものもあります。そういった先天性の貧血はおおむね根治療法がありません。遺伝性球状赤血球症(いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう)やあるいはサラセミアなどがそれにあたります。

済生会宇都宮病院ではさまざまな施設から紹介された患者さんを受け入れています。その中にはたとえば介護老人保健施設にいらっしゃる高齢の方の調子がすぐれない、貧血ではないかということで来られることがあります。

しかしその原因が実は栄養失調であるというケースがしばしばみられます。ビタミンB12欠乏は悪性貧血で有名なのですが、ビタミンB1やB6の欠乏というケースが意外に多いのです。あまり食事をとっていないという状況からビタミン欠乏を疑って調べてみるとやはりビタミンB1やB6の値が低く、結果としてビタミン剤を出しただけで良くなってしまうという方がかなりいらっしゃいます。

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