S414x320 1d9524bf f2c6 46fb aacd a73d4630bcb0

メディカルノートニュース

公開日 : 2016 年 10 月 14 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

がんサバイバーの支援と今後のがん検診の在り方-増え続ける医療費を抑えるために

公益財団法人 日本対がん協会会長/国立がんセンター名誉総長
垣添 忠生先生

日本対がん協会の会長を務める垣添忠生先生は、ご自身が2度のがんを経験したがんサバイバーであり、また、最愛の奥様をがんで亡くされた患者遺族でもあります。40年以上にわたり、がんのあらゆる側面に向き合ってきた垣添先生は今、日本対がん協会の会長として、国と相補完するがん対策を推し進めています。本記事では、日本の医療費がパンク寸前ともいわれるなかで、がん検診やがんサバイバーの支援をどのように行っていくべきか、垣添先生にお話しいただきました。

高齢者のがん検診-がん検診は「リスク層別化」が重要

発見が遅れると個人の心、身体への負担だけでなく、国の医療費負担も大きくなる

高齢化が進むわが国では、75歳以上の高齢がん患者が急速に増加しています。欧米では国の行うがん検診の対象者は、大体60歳くらいの方までとされていますが、日本では検診に上限は存在しません。極論を言えば、100歳の方でも検診を受けられるのです。

私は診療の現場を離れた現在でも、月に1度、合計4家族とのがんの面接相談を行っていますが、がんと診断された患者さんは、その年齢にかかわらず強く治療を希望されるものです。

がんが早期に発見された場合は、高齢の患者さんであってもかなりの治療が可能です。しかし、進行がんの治療は難しく、特に抗がん剤を用いる場合には、患者さんにかかる身体的負担も大きく増えてしまいます。

更に、高齢者の方のがん治療を考える際には、国の医療費負担についても考えねばなりません。社会保障費がこのまま増大を続けると、医療費がますます増えるとなると、国の財政はパンクしてしまうでしょう。

これからの高齢者のがん検診の在り方

検査を受ける高齢者イメージ画像

2016年4月、日本対がん協会では「がん検診研究部」という組織を本部に立ち上げました。今年は、高齢者のがん検診の在り方について議論が交わされており、検診の「リスク層別化」も重要な論点のひとつです。

国が行う従来のがん検診の目的は、がんで亡くなる人を減らすというものでした。しかし、70歳や80歳を超えた方に対し、延命を目的として検診を行うことは、適切とはいえません。

高齢者のがん検診の目的は「QOL(生活の質)の維持」とし、何らかのスクリーニングを行ったうえで、がんを発症するリスクの高い方のみに対象を絞り、有料で実施するというのが、私の考えです。たとえば胃がん検診は、ピロリ菌に感染しており、ペプシノーゲン(PG)濃度に異常がある人を対象とするといった考え方です。

国の財政基盤が揺らいでいる中で、増える高齢者のがんをどのようにして早期発見するか、それを研究することも、私たち日本対がん協会の重要な責務のひとつと考えています。

若い世代のがん検診-一律ではなく、個々人に応じた検診頻度を設定する

効率的な子宮頸がん検診とは

乳がんや子宮頸がんは若い世代に好発するがんです。これらのがんの検診も、時代と技術の進歩に応じて見直していく必要があります。

子宮頸がんの検診は、これまで20歳以上を対象とした細胞診が主流でしたが、近年、細胞診にHPV(ヒトパピローマウイルス)のDNA検査を加えた併用検診を行うことで、検査の精度が格段に上がるという報告がなされ、専門家たちの注目を集めています。

HPV-DNAの解析は、細胞診で採取した検体の残りを使用できるため効率的です。たとえば、細胞診でもDNA検査でも陰性を示した低リスクの方の検診頻度は、3年に1度程度としてもよいでしょう。

逆に、どちらも陽性反応を示した場合は、すぐに確定診断のための検査を受けるよう指示します。このように、その方のリスクごとに検査頻度を定めていくことも、効率のよい検診を実現するために重要です。