院長インタビュー

地域に信頼される病院をめざして-生まれ変わる鹿児島市立病院の取り組みとは

地域に信頼される病院をめざして-生まれ変わる鹿児島市立病院の取り組みとは
坪内 博仁 先生

鹿児島市立病院 病院長

坪内 博仁 先生

鹿児島市立病院は、1940年(昭和15年)に鹿児島市立診療所として開設されました。1945年(昭和20年)鹿児島市立病院に改称し、それ以来公的総合病院として地域住民の医療ニーズに応えてきました。2015年(平成27年)5月に、新病院に移転し、新たな姿に生まれ変わりました。その過程でどのような取り組みを行い、どのような姿を目指しているのか、病院長である坪内博仁先生にお話を伺いました。

地域医療の核を担う鹿児島市立病院

鹿児島県下には500床を超す大規模な公的医療機関は鹿児島大学病院と当院だけという状況です。当院は574床、28診療科を擁し、鹿児島大学病院に次ぐ規模を誇る総合病院で、鹿児島県の医療の中核を担っています。

また、鹿児島市内には県立病院がなく、総合的な診療機能に加えて、救命救急センター、脳卒中センター、成育医療センターを設置し、救急医療、周産期母子医療、小児医療など政策的な医療を担っており、最近は地域がん診療連携拠点病院としてがんにも力を入れているという特徴があります。併せて、基幹災害拠点病院にも指定されています。

種子島・屋久島もカバーする救急医療

当院の特徴のひとつは、救急医療です。ドクターカーとドクターヘリの基地病院として病院前救急医療に力を入れており、ドクターヘリは種子島・屋久島などもカバーしています。当院に救急センターができたのは1985年のことで、長い間地域の救急医療を支えてきた歴史があります。近年、救急医療の高度化・専門化がすすみ、新病院ではそれに対応するため救急医を増やし、救命救急を含む初療は救急医が行い、脳卒中、心臓病、消化器疾患などは専門の診療科が引き継ぐという体制を確立しました。救急車の受け入れ率は格段に上がっています。現在、ドクターヘリおよびドクターカーは、日曜・祝祭日を含む日勤帯の365日運用しています。

また、救急隊員への勉強会を定期的に開催し、迅速で的確な救急搬送ができるような体制作りにも力を入れています。今後は、若い医師の育成も行いながら救命救急センターの充実を図り、鹿児島県全体を支援できる病院をめざします。

地域を支える成育医療センター

当院は5つ子ちゃんの誕生で知られた病院で、成育医療には40年ほどの歴史があります。新病院になったことを機に、新生児医療、産科医療、小児医療の3部門を合わせて成育医療センターとして整備しました。これにより、出生前から小児期まで一貫した医療の提供が可能となりました。新生児内科は、36床のNICU、12床のGCU、32床の回復期病床の計80床の規模を誇ります。鹿児島県で唯一の母体胎児ICU(MFICU)も6床あり、全国的にみてもレベルの高い周産期医療が提供できていると自負しています。当院の新生児内科には多くの医師が全国から研修に来てくれています。

鹿児島県内で生まれた早産児や低出生体重児の搬送先としても機能しています。新生児搬送は大人の救急搬送以上にリスクが伴います。当院は新生児専用のドクターカーを有し、また、ドクターヘリに新生児搬送用の機器を装備しています。ドクターカーによる新生児搬送は年間約100件、ドクターヘリによる新生児搬送も40件ほどにのぼります。

がん診療のさらなる充実を図る

当院のこれまでの大きな特徴は、救急医療と成育医療でした。今後、ますます高齢化がすすみ、鹿児島県でもがん患者さんが増加することが予想されています。2人に1人はがんになるという時代ですから、今後がん診療にも力を入れていく必要があります。当院では、消化器がん肺がん、泌尿器系のがん、乳がんや子宮がんなど全領域のがんに対応できるよう診療体制が充実してきました。

また、新病院では乳腺外科を新設し、婦人科と協力して、女性医師と女性技師による乳がん・子宮がんの検診を同時に受けられる女性専門外来を週に1回行っています。加えて、外来化学療法のための医師を招聘(しょうへい)し、外来の化学療法が著しく増えてきました。

手術支援ロボット ダヴィンチ
リニアック室

2016年には低侵襲手術を行える手術支援ロボット ダヴィンチを導入しました。泌尿器科の医師が前立腺がんや腎がんの手術に使用しており、患者さんの評判もよいようです。また、放射線治療用の機器、リニアックを更新し、放射線治療の精度が上がってきました。本年度はPET-CTも導入したので、がんの診断力も上がっていくでしょう。最新機器の導入と、がん診療に携わる医師の増員で、より高度で専門的ながん診療ができる体制になってきました。

さらに緩和ケアや患者さん支援も進めて、患者さんのためのトータルのがん診療体制を整えていきたいと思っています。

市立病院としての地域との関わり

新病院になったのを機に、地域の医療機関との連携に取り組んでいます。地域の先生方から紹介していただける病院になるよう、また、地域の先生方に転院を引き受けていただけるよう努めています。地域の先生方の信頼を得るためには、診療の質を高くすることと、患者さんの満足度を高くすることが大切だと考えています。それには職員自身の満足度が高いことも必要です。

いろいろな取り組みで、今では紹介率約70%、逆紹介率80%ほどに上昇しました。もちろん、平均在院日数も毎年確実に短くなり、2016年度は12.7日でした。2018年には地域医療支援病院の承認を受けるべく、準備をしているところです。

鹿児島には桜島や新燃岳という爆発を続けている火山があります。当院は、いざという時には基幹災害拠点病院として火山の大爆発などの大規模災害に対応する必要があります。新病院は免震構造で、屋上ヘリポート、自家発電装置、災害時医療スペースを整備し、地下水の利用が可能です。また、現在、大災害時に医療が継続できるようBCPの策定を進めています。このように、大規模災害時にも医療を提供する体制を整えています。

鹿児島大学と連携した教育システム

当院のユニークな点は、鹿児島大学大学院の連携講座を設置していることです。これは2016年に設置したもので、当院の職員が大学院に進学できるシステムです。当院に連携講座を設置した背景は、当院には大学病院とほぼ同程度の入院患者がいること、各診療科の部長クラスは鹿児島大学大学院の准教授や講師経験者多く、教育実績が豊富であること、そして、向学心のある医療スタッフが多いことなどです。当院のスタッフでもある客員教授の指導の下臨床研究を行い、論文を作成して鹿児島大学大学院の審査に合格すれば、学位を取得できるようになっています。

このシステムでは、鹿児島大学は医師を派遣している地域の基幹病院を活用して高度の医療人を育成できます。それは、地域医療創生に貢献し、大学としての役割を果たせます。一方、当院は高度医療人を育成でき、患者さんに高度専門医療が提供でき、地域医療の貢献につながります。大学にとっても、当院にとっても、また大学院生にとっても、そして地域にとってもよいシステムだと思います。2017年現在、9名の大学院生が在籍しています。教育・人材育成という面でも、市立病院としての役割を果たしたいと思います。

鹿児島市立病院がめざす病院のあり方

地域の医療ニーズにきちんと応えられる病院でありたいと考えています。成育医療については今の高いレベルを維持すること、救急医療はさらに充実するよう救急医の確保と育成を行うこと、そしてがん診療の充実を図ることを考えています。さらに、市立病院としての総合的な診療基盤もしっかりと確保していきたいと思います。たとえば、耳鼻咽喉科や眼科は鹿児島県内に入院手術ができる病院が少ないという現状があります。そういった診療科を支援することも、市立病院としての大切な役割です。

こういった病院のあり方を踏まえ、今後も高度で専門的な医療を提供するため、優秀な医療スタッフを確保し、レベルアップを図っていきます。そういった取り組みが、患者さんや地域医療機関からの信頼につながると考えています。

地域のみなさまへのメッセージ

当院は、2015年に新しく生まれ変わりました。新病院でも、「安心安全な質の高い医療の提供」という基本理念を掲げています。鹿児島市民や鹿児島県民の皆さまに信頼され、満足していただける病院をめざし、高いレベルの医療技術と思いやりに満ちたケアを提供できるよう、職員一同、絶えず自己研鑽してまいります。

国は、2025年の団塊の世代が後期高齢者に入る時期を見据えて、病院の機能分化・強化を推し進めています。当院のような大規模病院は、専門医が多く、高度の医療機器も整備されていることから、入院患者さんを中心とした医療を提供するよう求めています。軽い病気の場合には、かかりつけの先生に診てもらい、問題があれば大きな病院を紹介してもらうというシステムです。国はそういう仕組みを進めるために、紹介状なしに大病院を受診する初診患者さんには、初診時選定療養費を負担していただくという制度を作っています。

市民のための市立病院だから、軽い病気でも重い病気でもいつでも紹介状なしに診療してほしいという気持ちはよくわかります。外来では軽い病気でもたくさんの患者さんを診て、入院ではがんなどの難しい患者さんを診療する、そのどちらもできればいいのですが、現状ではそれは難しい状況です。入院までの期間が3か月以上、長い場合は半年以上かかる診療科もあります。がんでは、そんなに長く待っていただくわけにはいきません。がんなどの重い病気になった場合、県外の病院に行かなくても、鹿児島市立病院でレベルの高い医療が受けられることは市民の皆さまにとって、大事なことだと思います。市立病院は、そういう医療を提供するのが役割だと考えています。どうかご理解いただきたいと思います。皆さまの暖かいご理解とご支援をお願いいたします。
 

  • 坪内 博仁 先生の所属医療機関

    鹿児島市立病院

    • 内科血液内科リウマチ科外科精神科神経内科脳神経外科呼吸器外科消化器外科腎臓内科心臓血管外科小児科小児外科整形外科形成外科皮膚科泌尿器科産婦人科眼科耳鼻咽喉科リハビリテーション科放射線科歯科歯科口腔外科麻酔科乳腺外科呼吸器内科循環器内科腫瘍内科消化器内科糖尿病内科内分泌内科膠原病内科脳神経内科病理診断科
    • 鹿児島県鹿児島市上荒田町37-1
    • 鹿児島市電2系統「市立病院前駅」 徒歩1分
    • 099-230-7000
    S150x150 d3b89728 9b1e 4369 8b38 315ca9b26edf