院長インタビュー

患者さんに寄り添った医療の提供─金沢医科大学病院

患者さんに寄り添った医療の提供─金沢医科大学病院
北山 道彦 先生

金沢医科大学病院 元病院長・病院担当理事

北山 道彦 先生

この記事の最終更新は2018年06月14日です。

石川県河北郡に位置する金沢医科大学病院では、患者さんに寄り添った医療の提供と、若手医師の育成に尽力されています。同院は、2017年に病院中央棟が竣工されて以来、職員がより患者さんに寄り添えるように多くの取り組みを行ってきました。それらの取り組みや、遺伝子医療などについて金沢医科大学病院 病院長の北山道彦先生にお話を伺いました。

※この記事は、2018年3月の取材に基づいて記載されています。現在とは状況が異なる場合があります。

病院中央棟外観(金沢医科大学病院よりご提供)

当院は1974年9月に開院いたしました。その後は診療科や病床数の拡充を続けてきました。また、建物の老朽化に伴い、2003年10月に病院新館、2017年7月に病院中央棟を開設いたしました。診療科や病床数だけでなく、施設面の拡充も行い、地域への医療提供や若手医師の育成に尽力してまいりました。

当院は開院当初から、「患者さん中心の医療」「安全で高度な先進的医療の提供」「病診・病病連携に基づく地域医療連携の推進」「良医の育成」を基本理念としています。私は職員やその身内に何か困ったことがあった際に、自分たちが働いている病院で治療を受けようと思い、頼ってもらえるような病院づくりを目指しています。

そのため、当院の理念のもと、多くの取り組みを行っています。その中でも、病院中央棟の開設に伴いサービスを開始した、いくつかの取り組みについてご紹介いたします。

当院では病院中央棟の開設に伴い、院内に案内コンシェルジュを配置いたしました。案内コンシェルジュは、専用のスタッフではなく、事務職員が交替で行っています。2018年3月時点では、男女30名以上の案内コンシェルジュが活躍しています。

案内コンシェルジュは、病院中央棟ロビーで、来院された患者さんや入院患者さんのご家族のご案内などを行っています。検査室や診察室の案内だけでなく、初めて来院された患者さんに受診手続きのご案内もしています。

案内コンシェルジュは、制服やネームプレートを着用しています。院内で何か困ったことがありましたら、案内コンシェルジュを頼っていただきたいと思います。

1階エントランスホール(金沢医科大学病院よりご提供)

案内コンシェルジュが発足した背景には、患者さんと接する機会がない職員の、患者さんやそのご家族と接する機会を作りたいという思いがありました。私は、患者さんに寄り添った医療を提供するうえで、職員自身も患者さんのことを知っておくべきだと考えています。

そのため、職員に案内コンシェルジュを担当してもらうことで、患者さんがどのような気持ちで来院されているのか、患者さんのご家族の不安などを理解してほしいと思っています。

当院は、県内で行われる様々なイベントに派遣するメディカルサポートチームを2017年秋に新設いたしました。メディカルサポートチームは、救命救急科医師と、内科系または外科系の医師、看護師、事務職員で編成されています。

メディカルサポートチームを派遣することで、イベント中に発生した怪我や事故などに迅速に対応することができます。

メディカルサポートチームは、2017年9月に開催された「ツール・ド・のと400」と2017年10月に開催された「金沢マラソン2017」へ派遣いたしました。県内で開催されるイベントで当院のメディカルサポートチームを派遣し、イベント参加者のみなさまに安心していただけるように後方支援に尽力しています。

メディカルサポートチームが出動する際には、救急医療キットや人工呼吸器、検査装置などを搭載しているドクターカーに搭乗し、緊急時の初期対応を行います。これからも、県内で開催されるイベントでは出動し、イベントの後方支援に努めていこうと考えています。

当院では患者さんやご家族への配慮の一つとして、補助犬同伴受入れを行っています。例えば、以前お子さんの出産に立ち会いを希望される親御さんがいらっしゃいました。その親御さんは、補助犬の介助が必要な方で、当院は補助犬同伴で出産の立ち合いをしたいとご相談を受けました。

そこで、当院の産科婦人科に相談し、補助犬の同伴受入れを引き受けることとなりました。当院では、患者さんやご家族へ寄り添った医療、サービスの提供を心掛けています。そのため、補助犬による介助が必要な方も、お気軽にご相談していただきたいと思います。

当院には、40の診療科があります。それぞれが得意な分野であり、地域の皆様への医療の提供に尽力しています。内視鏡センターや、乳腺センターのように、様々な診療科の外科医と内科医が協力をして診療にあたる部門もあります。

その中でも、特徴的な3つの診療科、部門についてご紹介いたします。

病院中央棟外観(金沢医科大学病院よりご提供)

形成外科では、1987年3月に「熱傷センター」を開設いたしました。それ以降、当院は北陸三県において、形成外科領域の基幹病院の役割を担っています。熱傷センターでは、広範囲熱傷から特殊な熱傷まで、多くの重症な熱傷に対する治療を行ってきました。

その他にも形成外科では、難治性皮膚潰瘍(なんちせいひふかいよう)などに対する皮膚再建外科手術、手外科疾患(指の切断など)、頭蓋骨・顔面骨の形態異常などの高度な再建手術を行っています。

泌尿器科では、膀胱炎尿路結石症、前立腺肥大症などの排尿障害の治療を行っています。また、尿路に発生するがん膀胱がん前立腺がんなど)や腎移植まで、泌尿器に発生する病気に対して幅広く診療にあたっています。

当科は、2015年5月に手術支援ロボット「da Vinci(ダビンチ)」(以下、ダビンチ)を導入いたしました。ダビンチの導入に伴い、ロボット支援下前立腺全摘除術の治療も開始しました。ダビンチを使用した手術では、患者さんへの負担や合併症のリスクが少なくなることが期待されています。

ダビンチを使用したいくつかの病気に対する手術は、保険適用がなされています。保険適用の病気などは、当院スタッフにお尋ねください。

当部門では、2013年5月に「胸痛ホットライン」を設置いたしました。胸痛ホットラインは、緊急の治療を要する急性心筋梗塞、不安定狭心症大動脈解離などのサインである「胸痛」を訴える患者さんに対して迅速な対応を行う専用の電話窓口です。

救急隊から直接電話が来ることが多く、2017年は1年間で時間外を含め174件の連絡がありました。胸痛だけでなく呼吸苦の患者さんも胸痛ホットラインを介して、当院に搬送されました。胸痛ホットラインでは、胸痛を訴える患者さんだけでなく、胸痛ホットラインに連絡が来た患者さんの全てを受け入れています。胸痛ホットラインに連絡があった全ての患者さんを受け入れることで、迅速な治療の提供や救急隊がどこの病院に搬送すればよいかなどの悩みも解消することができると考え開通いたしました。

急性心筋梗塞や大動脈解離などは、一刻も早い処置が求められます。迅速な治療を行うためには、救急隊と病院との連携が必要不可欠です。そのため、ハートセンターに携わる循環器内科、心血管カテーテル治療科と救急隊で勉強会を開催し連携を深めています。

搬送されてくる患者さんの中には、他の原因による胸痛であるケースもみられます。その場合は、該当する診療科への手配も行います。これは40もの診療科を持つ当院の強みであると考えています。

当院ではゲノム医療センター(旧遺伝子医療センター)を開設し、遺伝子検査や染色体検査、遺伝カウンセリングなどを行っています。遺伝性の病気は、生まれつきの症状がみられます。ご家族やご自身に遺伝性の病気がみられ、お困りのことがある際には同センターを頼っていただきたいと思います。そのため、同センターには、遺伝の診療を行う医師と、保健師、遺伝カウンセラーを配置しています。

同センターの新井田(にいだ)教授を中心に、北陸地域の遺伝子医療の提供に取り組んでいます。

同センターでは、遺伝カウンセリングを行っています。遺伝カウンセリングでは、お話をゆっくり伺い、相談にいらした患者さんやご家族と信頼関係を築くために、完全予約制にしています。遺伝カウンセリングは遺伝の診療を行っている医師や保健師などを中心に会話を重ねていきます。また、必要に応じてほかの診療科で遺伝の病気を診療している医師ともお話しいただけます。

遺伝の病気では、様々な症状がみられます。そのため、他科と協力をすることが重要になると考えています。

遺伝カウンセリングを通して、遺伝子の病気や遺伝に関する悩みに対して、解決できるように尽力しています。

同センターでは、発達に遅れがみられる赤ちゃんや筋緊張(きんきんちょう)(筋肉の持続的な収縮状態)が弱いダウン症の赤ちゃんを対象に、赤ちゃん体操・療育相談を行っています。

赤ちゃん体操教室では、生後から一人で歩けるようになるまでの赤ちゃんを対象としており、同教室は小児科医が行う診察や発達のチェック、赤ちゃん体操指導員が行う体操指導などを実施しています。小児科医の診察や発達チェックは2か月毎に行っています。

また、保健師に育児相談や療育相談、ダウン症の情報提供もあります。

赤ちゃん体操・療育相談は予約制になります。疑問や予約は当院のゲノム医療センターへお問い合わせください。

同センターでは、2018年からがんゲノム医療連携病院としてゲノム医療センターが稼働しています。

当院は、金沢医科大学の病院でもあるため、若手医師の育成に力を入れています。当院に臨床研修に来た医師の福利厚生の一つとして、金沢医科大学レジデントハウスがあります。

金沢医科大学レジデントハウスは、本学の創立40周年記念事業の一環で竣工された研修医のための寮になります。レジデントハウスの2階には、音響設備を整備した談話室を設けており、症例検討会や、研修会などに使用することができます。また、4階にはカンファレンスルームがあり、電子カルテ端末が整備されています。

レジデントハウスで住環境を整備し、臨床研修医が当院で多くのことを学ぶ環境を整えたいと考えています。

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  • 金沢医科大学病院 元病院長・病院担当理事

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