院長インタビュー

慢性期呼吸器疾患に対応でき、地域に親しまれる病院に——牧田病院の目指す“全人医療”とは

慢性期呼吸器疾患に対応でき、地域に親しまれる病院に——牧田病院の目指す“全人医療”とは
牧田 比呂仁 先生

認定医療法人社団憲仁会 牧田病院 理事長

牧田 比呂仁 先生

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医療がどんどん細分化され、専門的になってきた現代。しかし、高齢化に伴い、患者さん一人ひとりが複数の病気を併存して持つこともまれではありません。また、肺疾患は比較的長期治療が必要となることもある医療分野です。医療法人社団憲仁会 牧田病院(以下、牧田病院)は、さらに公益性をもたせるため、2020年5月現在で認定医療法人申請中であり、呼吸器内科の専門的な知見とともに、患者さん、ご家族と話し合い、希望に沿った長期治療ができるよう、全身管理を施す“全人医療”を心がけています。北海道大学と緊密に連携を取り、呼吸器内科学の臨床研究に貢献しながら、地域の皆さんにファミリードクターとして親しまれる牧田病院の理事長である牧田(まきた) 比呂仁(ひろに)先生にお話を伺いました。

牧田病院 外観
牧田病院 外観

1965年に先代が始めた牧田医院は、地域のかかりつけ医として患者さんに親しまれてきました。1979年には患者さんの数も増え、医療法人社団憲仁会を設立。入院用のベッドを57床に増床してからは、地域密着型のファミリードクターのみならず、入院加療の可能な地域の病院となり貢献してきました。当院は開院当初から内科、呼吸器内科、アレルギー科、漢方診療と広く患者さんを診療してきましたが、2005年に私が理事長になってからは、北海道大学病院と連携して、特に呼吸器内科に特化して治療にあたっています。高齢化社会を迎えるこの時代、呼吸器症状で苦しんでおられる患者さんは、ますます増えてくると思います。そして、同じ病気でも個々の患者さんの痛みや苦しさはそれぞれ違います。「むやみに細分化されたデータに頼らず、一人ひとりの患者さんの特性を見極め、迅速な診断と最新の治療を患者さんに提供したい」。医師、看護スタッフはそんな思いを胸に日々尽力しています。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

当院には、日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医が在籍しており、喘息慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、慢性呼吸不全、睡眠時無呼吸症候群肺がんなどの呼吸器系の病気に特化した診療を行っています。また、内科も設けており、高血圧糖尿病などの病気にも対応しているため、体調に不安があれば、まずはホームドクターとして気軽に受診していただきたいと思っています。特に、呼吸器系の病気と長く付き合っていかねばならない患者さんに対しては、より患者さんに適した医療環境をお届けできるよう職員一同、日々努力しています。

また、患者さんの症状を緩和し、全身状態がよりよい方向に向かうよう、心身共にトータル・ケアを行う東洋医学も取り入れました。そのほか、アレルギー疾患や喫煙習慣、生活習慣病といった慢性的な病気などに対する治療や、身体活動性ならびに身体機能維持を目指す通所のデイケアセンターにおけるデイケアでは薬湯を用意するなどの独自の取り組みも行っています。ここは、当院の目指す全人医療の一環として今後もより注目していただきたい分野です。

執務にあたる牧田 比呂仁先生
執務にあたる牧田 比呂仁先生

当院の特色は、慢性期呼吸器疾患患者さんの治療を担う病院として、北海道大学病院、地域の基幹病院の後方支援体制が構築されていることです。臨床研究では、北海道大学病院の医師主導の臨床研究を支援する病院という役目も果たしています。また、新薬の開発のための治験にも積極的に取り組んでいます。呼吸器系の病気の中には完治が難しいとされるものもあり、まだまだ未知の部分が多い医療分野であるともいえるでしょう。そのため、患者さん一人ひとりに適した医療を提供していくためにも、基礎的な研究が不可欠と考えます。私もこれまで診療の傍ら、いくつかの研究論文に関与してきました。2005年には日本における医学の研究活動を支援するため、ドイツの製薬会社であるベーリンガーインゲルハイムが設立したベルツ賞(2等賞)を、2016年には日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 第5回の学会賞を共同受賞しました。こうした研究の成果が認められたことは、いずれ患者さんの治療に役立っていくという意味で大変喜ばしく思っています。呼吸器疾患で苦しむ患者さんのため、“苦しさ”や“生きづらさ”または“息づらさ”を少しでも緩和してあげられることを目標に、今後も地道とも言える研究を怠ることなく継続していく所存です。

呼吸器専門医数は2012年8月の調査で4,851名と、17,679名の消化器病専門医や12,472名の循環器専門医に比べて数が少なく、それだけに呼吸器系の病気、特に慢性期を専門とする当院の存在意義は大きいと思っています。今後、さらなる高齢化社会に向けて、その存在意義はますます大きくなることでしょう。そのため、リハビリテーション施設や感染対策設備などのハード面でも、より充実した内容を患者さんに提供できるよう、日々対策や研究を重ねています。

呼吸器系の病気の慢性期における治療は長期間に及ぶことがあり、特にその期間は患者さんをサポートすることが重要です。患者さんが積極的に、それぞれに合ったリハビリテーションに取り組んでいただける環境を提供したいと考えています。また、在宅酸素療法やNPPV(noninvasive positive pressure ventilation:非侵襲的陽圧換気療法)、CPAP(Continuous positive airway pressure:持続陽圧呼吸器)を導入/管理する体制を整えています。高濃度の酸素吸入を必要とする入院患者さんには、積極的にネーザル・ハイフローを導入しております。気管内挿管、または気管切開孔からの気管カニューレによる人工呼吸療法、またはNPPVとは異なり、比較的楽に家族と会話をしたり食事をしたりすることが可能であるため、患者さんの生活の質(QOL)を上げることができるからです。こういった一人ひとりの生活について、ご本人やご家族と共に具体的に考え、よりよい対応を模索していくのが当院の務めであると思います。

さらに、当院はそれぞれの患者さんにご自宅でより快適な日常生活を送っていただきたいという思いから、入院期間が終わっても患者さんが在宅でのリハビリテーションを続けていただくことが可能な体制を構築したいと考えております。そのほか、介護保険で利用できる各種サービスの情報についても提供を行っています。

当院は、患者さんに生きがいのある生活を送っていただくためにも欠かせない、通所リハビリテーションを設置している施設です。看護師や作業療法士、理学療法士、介護スタッフが従事しており、充実したリハビリテーションあるいは各種レクリエーションになるよう努めています。

このように専門医や専門スタッフの配置により、在宅酸素療法や糖尿病管理、胃ろうや神経難病といった医療ニーズの高い患者さんに対しても一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドのリハビリテーションを提供することが可能となっています。1人でリハビリテーションに取り組むときよりも、患者さんの意欲が上がり、顕著な成果が現れることを期待しています。

介護保険によってどのようなサービスが受けられるのか、患者さんご自身やご家庭だけでは把握しきれずに不安を感じる方も多いと思います。ここでは専門家による介護認定申請のお手伝いや、申請が認められた後のケアプランの作成など、患者さんやご家族の皆さんが手続きを行う際の困りごとを相談できる窓口を設けています。医療法人である利点を活かし、医療と介護の切れ目のないサポート体制を構築しておりますので、制度の活用について疑問点がある方や分かりにくいと感じている方は、ぜひご相談ください。

牧田先生

呼吸器内科は、これからの高齢化社会のなかで、ますます需要が高まる分野となるでしょう。特に慢性期の呼吸器疾患患者さんは、呼吸負荷によるサルコペニア摂食障害うつ病フレイルと密接な関連があり、また心血管系疾患、脳疾患、泌尿器疾患といった複数の併存症を有する方もいるため、幅広く管理を要する領域です。呼吸器内科は、患者さん一人ひとりと長く関わることが多い診療科であると思っています。永遠と続く“息切れ”が、とてもつらい症状であるからこそ、その間、患者さんに寄り添っていくなかで、ゆっくりとした病気の回復や、より患者さんが過ごしやすい環境が構築される過程を共に喜べることは、医療従事者として大きな魅力です。当院が継続的に充実した医療を提供するためにも、ぜひ我々に力を貸していただきたいです。

当院では、多くの患者さんに安心していただける病院を目指しています。北海道大学や各病院、研究機関とも密に連携し、一人ひとりの患者さんに対して、固定観念にとらわれない柔軟な医療サービスを受けていただけるよう、これからも尽力していきます。体調面に不安のある方や介護保険などについて不安がある方など、小さなことでも構いませんので、ぜひ相談にいらしてください。

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