院長インタビュー

地域医療の拡充と高度な医療の提供を目指す名古屋市立大学病院

地域医療の拡充と高度な医療の提供を目指す名古屋市立大学病院
間瀬 光人 先生

名古屋市立大学病院 病院長、名古屋市立大学 理事、名古屋市立大学病院 脳神経外科 部長

間瀬 光人 先生

目次
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愛知県名古屋市に病院を構える名古屋市立大学病院は、大学病院として救急医療や高度な医療の提供にとどまらず、地域住民の皆さんがいかなるときも地域で生活し続けられるような取り組みを積極的に実施しています。

今回は、病院長を務める間瀬 光人(ませ みつひと)先生に、同院が提供する医療や新たな取り組みなどについてお話を伺いました。

名古屋市立大学病院 外観 提供写真
名古屋市立大学病院 外観

当院は救命救急センターを設置し、心疾患脳卒中などの血管障害や外傷などの緊急性の高い救急患者さんを受け入れる体制を整えています。緊急手術を要する患者さんのみならず、それ以外の救急患者さんの受け入れにも24時間体制で対応しています。

救急搬送の様子 提供写真
救急搬送の様子

こうした救急医療体制を実現するためには、救命救急センターと各診療科との連携が欠かせません。医師や看護師をはじめとする多職種のスタッフが診療科の垣根なく緊密な連携を取ることで、適切な医療を切れ目なく提供できるように努めています。

当院は、医療の側面から地域住民の皆さんがより安心して暮らすことができる地域づくりに貢献してまいります。

大学病院である当院は、より高度な医療を提供するという役割を担っています。この役割を全うするために、特定の症状や病気および、その治療に特化したセンターの新設に力を入れています。そこでは、専門的な知識を有する多職種のスタッフが連携しながら患者さんそれぞれに合った診療を行う体制を整えています。

治療の様子 提供写真
治療の様子

当院では、2019年にがん診療・包括ケアセンターを設置しました。ここでは、大学病院という強みを生かして複数の診療科や多職種のスタッフで連携しながら先進的ながん診療の提供を目指しています。

加えて、がん患者さんの抱える悩みや社会復帰を支援する取り組みも重要であると考えています。その取り組みの1つであるがん相談支援室では、治療や社会復帰に関する不安に限らず経済的な悩みまで多様なご相談に対応しています。

当院では、これからも先進的な技術を積極的に取り入れるとともに、患者さんの心や生活に寄り添い、サポートする体制を整えていきます。

当院では50年以上の歴史があるペインクリニック外来を核として、2017年にいたみセンターを設置いたしました。いたみセンターでは、腰下肢痛・坐骨神経痛帯状疱疹(たいじょうほうしん)に伴う神経痛・四肢血行障害に伴う痛み・術後遷延痛(手術後の長引く痛み)・頭痛や顔面痛など、急性痛から慢性痛の幅広い痛みに対する診療を行っています。薬物治療をはじめ、神経ブロック療法や脊髄刺激療法、理学療法、心理療法など多様な治療を提供しています。

慢性的な痛みの場合、痛みがある部位だけでなく、さまざまな要因が関係していると考えられます。代表的なものとして、脊椎などの骨・神経・筋肉・筋膜といった神経障害性疼痛、あるいは脳のはたらきなどが挙げられます。そのほか、糖尿病などの内科疾患や普段の運動・動作・姿勢の習慣、不安やストレスなどの心理面も深く関わってきます。そのため、いたみセンターでは、痛み診療を専門とする麻酔科医、看護師、理学療法士、臨床心理士、精神科医などの多職種のスタッフがそれぞれの専門知識を生かしながら痛みの治療と心のケアをチームで行っています。また、痛み診療に関わるさまざまな職種のスタッフの教育・育成にも携わっています。

無痛分娩センターでは、硬膜外麻酔を用いた硬膜外分娩(いわゆる無痛分娩)を行っています。硬膜外分娩には、痛みが和らぎ出産後の体力の早期回復が望めるといったメリットがありますが、一方で麻酔の使い方を誤ると、呼吸困難や意識消失などの麻酔合併症が起きる可能性があります。このようなリスクがあるため、無痛分娩センターでは日本麻酔科学会認定の麻酔科指導医・麻酔科専門医*による麻酔管理のもと、徹底した安全確保に努めています。さらには緊急時の対応に関するトレーニングやカンファレンスを定期的に行うことで、合併症が現れた場合でも適切に対応できる体制を整えています。

当院の無痛分娩センターは、産婦人科医・助産師・麻酔科医・小児科医など各分野の専門スタッフがチームで母児のケアを行っている点が特徴です。各分野の専門スタッフが知恵を出し合い、より安全で産婦さんのニーズに沿った硬膜外分娩を目指してまいります。

*日本麻酔科学会認定麻酔科指医:田中 基(たなか もとし)先生

手術の様子 提供写真
手術の様子

低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)センターでは、手術支援ロボットda Vinci(ダ・ヴィンチ)Xiを用いて、患者さんの体の負担が少ない低侵襲な手術の提供を目指しています。ダ・ヴィンチを使用することで、立体的な画像をその時々に応じて拡大しながら手術ができるため、鮮明な術野でより正確な手術を行うことができます。また、小さな切開創で痛みや出血を抑えられるため、早期の退院や社会復帰を目指すことが可能です。

当院では、泌尿器科、小児泌尿器科、消化器・一般外科、呼吸器外科、産科婦人科において、ダ・ヴィンチによるロボット手術を実施しています。これからも低侵襲手術センターでは、患者さんの負担を軽減した、安全な手術を提供できるように心がけていきます。

2025年の開棟を目指し、救命救急と災害医療を担うセンターの建設計画を進めています。新型コロナウイルス感染症への対応の経験から、感染症と通常診療に同時に対応できるように設計を進めています。救急医療ならびに災害医療は、いかなるときも切れ目なく医療を提供し続けることが重要です。当院は、救急・災害医療センター(仮称)の整備によってさらに病院機能を拡大させて、地域住民の皆さんが安心して暮らすことができる地域づくりに貢献してまいります。

2020年11月に開設した脳神経機能再生センターでは、パーキンソン病など脳神経機能に関する病気の患者さんを総合的に診ることを目的に設置されました。脳神経外科・脳神経内科・リハビリテーション科などの複数の診療科の多職種のスタッフが連携することで、治療にとどまらずリハビリテーションや社会復帰などの支援を行っています。

高齢化が進むにつれて、パーキンソン病の患者さんは増加傾向にあります。脳神経機能再生センターでは、地域住民の皆さんが年齢を重ねても住み慣れた地域で生活し続けられるよう、医療面から支援していく所存です。

2020年12月に循環器内科や心臓血管外科を中心に麻酔科・集中治療部などで組織されたハートチームによって心臓弁膜症の治療にあたる心臓弁膜症センターを開設いたしました。心臓弁膜症では、心臓の血液の流れを調節する心臓弁のはたらきが悪くなったことで、逆流が生じたり狭くなったりして血流が悪化し、息切れ、動悸、胸痛などの症状などが現れます。そのため、重症な場合には早期に手術する必要があります。

ハートチームで診療科の垣根なく患者さん一人ひとりの症状について議論することで、適切な治療方針を決定する体制を構築しています。このように、心臓弁膜症治療の連携を強化することで、開胸することなく、医療用の細い管であるカテーテルによって大動脈弁を手術するTAVIなどの患者さんの負担が少ない手術の提供にも尽力しています。

間瀬先生

当院は、若手医師の皆さんにとって働きやすく、学びやすい環境を提供します。各診療科の熱心な指導医が、皆さんの「知りたい」「学びたい」という気持ちに、持っている知識と技術で可能な限り応えたいと考えています。また、指導にとどまらず、皆さんと一緒になってよりよい医療を患者さんに提供したいと願っています。ぜひ共に働きましょう。

当院は、地域住民の皆さんに安全で質の高い高度な医療を提供するということをモットーにしております。大学病院は堅苦しいというイメージがあるかと思いますが、当院では専門の医師が皆さんに寄り添い、安心して受診できるように環境を整えています。気になる症状や病気などがありましたら、気兼ねなくご相談いただけますと幸いです。

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  • 名古屋市立大学病院 病院長、名古屋市立大学 理事、名古屋市立大学病院 脳神経外科 部長

    間瀬 光人 先生

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