院長インタビュー

高度医療と地域連携の力で地域を支える東京都立多摩南部地域病院

高度医療と地域連携の力で地域を支える東京都立多摩南部地域病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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東京都立多摩南部地域病院は東京都南部の多摩市にあり、地域の中核病院として地域の医療向上に熱心に取り組んでいます。同院では地域で完結する医療を目指し、質の高い医療の提供やきめの細かいケアで患者さんやご家族に寄り添そう支援も行っています。

同院の取り組みや今後について、院長の桂川 秀雄(かつらがわ ひでお)先生にお話を伺いました。

東京都立多摩南部病院は、平成5(1993)年に東京都と東京都医師会が設立した公設民営病院としてスタートしました。現在は287床、26診療科を有する東京都立病院機構の病院として地域に医療を提供しています。

当院は東京都多摩市に位置し、当院が属する南多摩医療圏(東京都、八王子市、町田市、日野市、多摩市、稲城市)は人口約140万人が生活する地域です。当院は地域医療支援病院であり、地域の先生方との医療連携を厚くし、地域全体で質の高い医療を提供しています。

多摩市は都下の中でも高齢化の進みが早い地域であり、近年はお子さん世代がご高齢のご家族を連れてお越しになることも、90代の方がご自身で受診されることもあります。

当院は、1997年に医療法が改正され地域医療支援病院(第一線の地域医療を担うかかりつけ医、かかりつけ歯科医等を支援する能力を備えた、地域医療の中核を担う病院)が誕生した翌年、東京都内の病院として初めてその承認を受けました。以来地域の先生方とは強い連携を維持しており、現在も当院の紹介率・逆紹介率はともに90%を超える割合で推移しています。この数字は、初診の患者さんの何%が紹介で来られた方か、逆に何%の患者さんを当院から地域の先生にご紹介したかの割合を示しており、90%は全国で見ても高い数字です。今後も当院は地域の先生方との良好な関係のもと、患者さんが安心してこの地で医療を受けられるよう努力していきます。

当院は東京都指定の二次救急医療機関として救急の患者さんを365日24時間体制で受け入れており、2023年には計1万人を超える救急患者さんを診療しました。そのほか、急性の心血管疾患に対する迅速な対応を行うために設立された東京都CCUネットワークに参加しています。

また、当院にいらっしゃるご高齢の方は主訴以外にも高血圧や腎臓病など、さまざまな病気をお持ちの方が多い状況があります。当院には、患者さんに対して総合的な診察を行いその方に適した治療の道筋を考える“ホスピタリスト”的な総合診療医が2名在籍し、特定の臓器に偏らない総合的な医療を提供します。地域医療において総合診療的な医療は重要であり、当院では呼吸器内科や消化器内科などの医師も総合診療を学ぶなど、総合診療医の育成にも力を入れています。

がん医療では地域で完結できる体制を目指し、急性期から緩和ケアまでの一貫した総合的な医療を提供しています。

がん治療3本柱の一つである手術においては、手術支援ロボット“ダビンチ”を2023年に導入し、手術も開始しており、人間以上の可動域を持つロボットを使った精緻で安全かつ低侵襲(体に負担がかからない)な手術を行っています。ロボット手術は導入直後は前立腺がん大腸がんのみ手術を行っていましたが、現在は腎臓がん胃がんにも適応を拡大しています。なお、手術支援ロボットの操作には所定の認定資格が必要です。当院では認定資格を持つ医師の育成に力を入れており、定期的に開催するロボット手術の勉強会では地域の連携医の先生方もご参加されています。

また、緩和ケアを専門に扱う緩和ケア科においては、多職種によるチームで医療を提供しており、患者さんやご家族のQOL向上の実現を目指しています。2024年4月には緩和ケア病棟・病室をリニューアルオープンし、全室に個室トイレ、手すり、間口の広い開閉式ドアを設置したほか、アメニティも充実させました。患者さんやご家族にとって少しでも癒しの空間になればと思います。

当院の内視鏡センターは、地域の内視鏡検査施設の中核となるよう質の高い医療を提供しています。内視鏡下の治療はダビンチとあわせて患者さんの負担軽減につながるため、がん治療やERCP(胆のう・膵臓の内視鏡検査)での内視鏡治療をこれから増やしていきたいと思います。なお、当院では2024年後半に内視鏡センターをリニューアルする予定で、今後は黄疸や下血などといった緊急性のある症状にも対応していきます。

当院では、患者さんや地域の方の一助となるようさまざまなサポート窓口を設置しています。

たとえば患者・地域サポートセンターでは、患者さんを地域の医療機関へスムーズにご紹介するための地域連携や、患者さんに対する入退院の支援、また退院後の社会復帰・生活支援や福祉制度などのソーシャルワークに関すること、患者さんやご家族をサポートする業務を行っており、看護師や薬剤師などの医療従事者だけでなく、ソーシャルワーカーや事務スタッフなど、多職種が業務にあたっています。

また、認定看護師が主体となり、看護や日常生活のサポートするライフサポート外来も開設しています。たとえばリウマチサポート外来では治療薬の説明や補助具のお試しや調整を行います。またライフサポート外来では在宅での看護・介護のアドバイスを行っています。ぜひ患者さんやご家族のこまごまとした悩みや小さな困りごとなどをご相談いただき、安心して生活が送れることができればと思います。

当院は、開設以来地域のかかりつけの先生方との連携を大切に、公立病院として地域に根差した幅広い医療サービスを提供してまいりました。地域医療連携の推進という理念のもと、救急やご紹介を通じて地域住民の皆様の健康を守っていきたいと考えています。また、設備面でも拡充を図り、皆様に安心して受診していただける環境を整えています。当院は以前より二人の主治医制を提唱しています。日々のケアは地域の主治医の先生方が、入院や緊急時は当院が病院主治医として担当し困ったときに頼られる存在になることを目指していきます。

これからも地域包括ケアシステムの一端を担い、医療を通したまちづくりに貢献できるよう尽力してまいります。

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