茨城県筑西市にある茨城県西部メディカルセンターは、地域の中核病院として急性期の患者さんを中心に医療を提供する病院です。
二次救急に注力するとともに、新しい技術を駆使して脊椎外科手術に取り組むなど、さまざまな医療を提供する同センターの地域での役割や今後について、院長の梶井 英治先生に伺いました。
当院は筑西市の筑西市民病院と桜川市の県西総合病院の2つの公立病院を再編統合し、2018年に開院しました。開院にあたっては、筑西市と桜川市の両市長や自治体職員の皆さん、茨城県、筑波大学や自治医科大学、そして住民の方々の協力をいただき、医師不足や救急体制が課題として挙げられていた当時の茨城県西部地域の未来を担う病院として船出しました。
当院は現在、251の病床と16の診療科を有し、二次救急医療機関として入院や手術が必要な重症患者を365日24時間体制で受け入れる体制を整えています。
また、高齢化を見据えて予防を重視しており、2025年春には当院の敷地内に新たな健診センターのオープンを予定しています。
当院では救急科を中心に病院挙げて、急性期の入院や手術が必要な患者さんを中心に二次救急医療を提供しています。HCU(高度治療室)を備えており、人工呼吸器が必要な重症度の高い患者さんの治療にも対応できる体制を整えています。救急車の受け入れ台数は増加傾向にあり、2023年度の救急搬送受け入れ台数は2,749台でした。
また、当院は茨城県から筑西・下妻医療圏の地域災害拠点病院に指定されており、屋上ヘリポートや自家発電・井戸水利用装置を備え、災害時の患者受け入れやDMAT(災害派遣医療チーム)の体制を整備してきました。最近では、2024年の能登半島地震時に当院からDMATチームを派遣しています。災害に対する当院の取り組みは、住民の安心と信頼に応えるための重要な要素となっています。
当院の整形外科では、骨・関節・筋肉・腱・靱帯・神経などの病気に対し、地域の医療機関と連携して患者さんの病態に応じた治療を提供します。治療対象となる主な疾患は、頚椎症性脊髄症・腰部脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、変形性膝関節症などの関節疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症に伴う骨折などで、さまざまな症状に対する治療を行っています。
また、人工関節治療の経験豊かな医師が在籍し、関節の痛みや手術に対して確かな技術で対応しています。特に、人工股関節手術などに対してはコンピューターナビゲーションシステムを活用し、患者さんへの負担の少ない低侵襲な手術を行っています。
このシステムでは、術中にモニター上で人工股関節の位置をリアルタイムで確認することができるため、より正確な手術が可能となります。当院はこのシステムを導入する、県内でも数少ない病院の一つです。
さらに、脊椎手術においては “O-arm”(オーアーム)と呼ばれるCTナビゲーション機器を使用しています。これによって高精細な3D画像をリアルタイムで撮影しながら手術を行えるようになるため、術中に骨や関節の正確な位置確認ができ、より高い精度で手術を行うことができるようになりました。
当院ではこれらの新しい技術を駆使し、患者さん一人ひとりに合わせた治療の提供を心がけています。
当院の形成外科は皮膚科と連携し、外来および入院診療を行っています。
形成外科という診療科は、他科と比べ聞きなれない方や、どんな治療をするのか分からない方も多いかと思います。同科の治療対象は頭や顔を含む体の表面全体の外傷、やけど、手術痕に伴うケロイド、皮膚や皮下の腫瘍の切除、傷あと、熱傷瘢痕、粉瘤などと幅広く、これに対して見た目や機能に関する改善を目指した治療を行います。さらに同科は皮膚のみならず、陥入爪、加齢による眼瞼下垂などの症例も積極的に受け入れています。
また、眼形成外来では、毎月第2月曜日に眼形成外科を専門とする日本形成外科学会認定専門医が診療を行っています。対象となるのは眼瞼下垂症や逆さまつげ、眼瞼内反症など、まぶたに関するさまざまな疾患で、これらに対してガイドラインに沿った適切な手術や治療を行っています。
これらは保険適用内での治療が可能です。専門外来を希望される方は、予約のうえご来院ください。
眼科に関しては眼の外傷や急性緑内障発作などの救急治療に対応するほか、急性期に特化せず総合的な幅広い診療を行っており、白内障、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症、翼状片などのさまざまな病気に対応しています。より専門的な治療が必要な場合は、筑波大学附属病院の眼科など、他の医療機関と連携し、患者さんに合わせた治療を行っています。
当院は地域医療の連携を目的に、“二人主治医制”を行っています。これは、地域のかかりつけ医の先生を“第一の主治医”、当院の医師を“第二の主治医”とし、互いに連携を図りながら患者さんの治療を進めていく体制です。
実際の治療では、普段は第一の主治医にかかっていただき、精密検査や入院治療が必要になれば、第一の主治医から第二の主治医である当院にご紹介いただきます。その後、状態が落ち着けば第一の主治医に再び紹介するという流れで地域のかかりつけ医の先生方と連携を図り、治療を行います。
このように1人の患者さんを2人の医師が見守る二人主治医制は、徐々に多くの患者さんにご理解いただくに至り、浸透してきました。当院では今後も地域の医療機関や他診療科との協力のもと、診断から治療、術後のフォローアップまでこの地域内で完結して行うことを目指していきます。
当院では保護者の子育てと仕事の両立を支援するために、2つの専用保育室を設置しています。
1つ目は院内保育室“あおぞら”です。これは茨城県西部医療機構職員向けに福利厚生として設置された保育室で、生後6か月から小学校就学前のお子さんまでを対象としています。保育室では通常の保育に加えて、週2回の夜間保育や一時保育も実施し、産休や育休から復帰する職員が安心して勤務できるようサポートしています。
2つ目は、病児保育室“ひまわり”です。ここは発熱などの急な病気で集団保育が難しくなった場合に、仕事を休めない保護者のために一時的にお子さんをお預かりする施設です。
対象は筑西市、桜川市、下妻市にお住まいの生後6か月から中学校就学前のお子さんであり、必要に応じて当院の小児科医による診察や看護師によるケアも行います。これらの保育室を通じて保護者の方々が育児と両立しながら、安心して働けるよう、当院は今後も環境を整えていきます。
我々は2018年の開院から5年間を病院の充実・発展へ向けてのファーストステージとして、地域の皆さんと交流させていただきながら、病院の基礎づくりを進めてまいりました。この間に地域医療を守り育てる地域の輪ができ、少しずつ広がりつつあります。
現在は更なる発展に向けたセカンドステージに入り、統合前の2つの病院の歴史を受け継ぎながらも、明確になってきた改革すべき点を改革し、新しい文化を作っていく所存です。
我々はこれからも当センター内の職員の輪、医師会や医療機関、行政との輪、そして何より地域の皆さんとの輪を大切に、地域住民の皆さんに満足していただき、愛着を持っていただける病院を目指してまいります。
地方独立行政法人 茨城県西部医療機構 茨城県西部メディカルセンター 病院長
梶井 英治 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。