福岡県北九州市の西部、八幡西区にある福岡県済生会八幡総合病院は、2024年12月に同じく北九州市の西部の八幡東区から新築移転しました。この地域の基幹的な病院である同院の地域における役割や今後について、院長の古森 公浩(こもり きみひろ)先生に伺いました。
当院は済生会の病院です。済生会は、1911年に明治天皇によって設立されました。“恵まれない人々のために、医療と救済を提供し、生活困窮者を支援する”ことを目的とし、以来110年以上にわたり“施薬救療の精神”を基本理念とし、日本最大の社会福祉法人として活動を続けています。
済生会八幡総合病院は1927年に八幡東区春の町で発足し、2026年には99年目、2027年には100年目を迎える長い歴史を持つ病院です。九州で始めて人工透析設備を設置して透析治療を行ったり、西日本で始めて腹腔鏡下胆嚢摘出術を行ったりするなど、新しい医療に取り組む先進的な病院でありつつ、八幡東区の皆さんからは“済生会の病院”として親しまれてきました。
そのような当院は2024年12月、西隣の八幡西区則松へ移転しました。移転後もこれまで実践してきた地域に優しい医療を提供するとともに、若年層の比率が高い八幡西区に対応した医療サービスの提供や、地域住民の医療ニーズに応じた柔軟な体制で診療に当たっています。
新病院では、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、内分泌・代謝・糖尿病内科、腎臓内科、脳神経内科、外科、呼吸器外科、血管外科、人工透析外科、整形外科、脳神経外科などの30診療科を有しています。さらに、診療だけでなく人間ドックや脳ドックも充実させ、無症状の脳疾患や危険因子の早期発見・予防に努めています。
当院では移転を機に改めて救急医療に力を入れています。とくに一刻を争う脳卒中症例を積極的に受け入れており、速やかに検査・治療が行えるように取り組んでいます。更に、この春からは脳卒中ホットラインも開設し、より迅速で専門的な対応を可能とします。
当院ではがん、脳卒中、心筋梗塞の3大疾患をはじめ、多くの高度急性期医療に対応しています。がん治療においては外科、内科、放射線科、病理診断科医師が連携して診断から治療方針までを決定し、手術、化学療法、放射線治療(他院と連携)による集学的治療を提供しています。
また、前兆なく発症することもある心筋梗塞に対しては、その前段階である狭心症の段階でカテーテル治療等を行い、随伴する不整脈や心不全に対しても対応できる体制を整えています。腹部大動脈瘤は動脈が破れる前に皮膚切開をしない低侵襲(体への負担が少ない)な治療を行い、閉塞性動脈硬化症では下肢の切断に至る前にカテーテル治療とバイパス手術を同時に行うハイブリッド手術を行うなど、低侵襲で新しい治療を行えるのが当院の特徴といえるでしょう。
新しい治療への取り組みは整形外科でも行っています。変形性膝関節症に対しては、骨切り、人工関節などの外科的治療を行っています。しかし、様々な理由で手術を受けられない、受けたくない方もいます。そこで、変形性膝関節症に対するラジオ波焼灼治療(クーリーフ)は、人工関節などの手術を行わずに痛みを軽減する新しい治療法です。この治療ではラジオ波を用いて痛みを伝える神経を冷却しながら焼灼し、痛みの信号を遮断することで変形性膝関節症の痛みを抑えます。変形性膝関節症でお悩みの方はぜひ一度当院にご相談ください。
近年患者さんが増えている慢性腎臓病の治療も当院では力を入れています。血液透析・腹膜透析の両方に対応するほか、シャントトラブルに対する血管内治療にも対応するバスキュラーアクセスセンターとしての役割も果たしています。また、地域の透析患者さんの救急入院に柔軟に対応できる体制をとっています。当院の腎臓の治療の歴史と蓄積を踏まえ、引き続き質の高い医療を提供していきます。
また、年々進む高齢化によって増えている認知症への対策も重視しています。移転にあたっては高齢者急性期ケア病棟を新設し、当院での治療中に認知症が進行しないよう多職種によるプロジェクトチームを発足させ、患者さんへのケアを行っているところです。
移転に伴い、内視鏡手術支援ロボット“ダヴィンチXi”を導入し、外科、呼吸器外科、泌尿器科の手術で運用を開始しています。従来の腹腔鏡手術と比較し、より精巧な手術が可能になっています。また、新しい手術室はバイオクリーンルーム・ハイブリット室・陰陽圧室1室を有した計7室あり、年間約2,500件の手術件数を、安全・安心に行えるよう整えました。また呼吸器外科では、最新の医療機器(コーンビームCT,ダビンチXi)を導入し手術の低侵襲化に努めています。さらに創部を小さくする工夫も行うことで、高齢の患者さんでも術翌朝より離床でき、術後1週間未満の早期自宅退院が可能となっています。
新病院のコンセプトは“最新の医療と最高の療養環境の提供”です。その例として、イギリスの病院の100年に及ぶ院内感染との戦いから多くの知見を取り入れ、新病院では院内感染に強い、清潔さを保ちやすい病室を作りました。
また、トヨタの生産方式から学んだアメリカの病院の知見にも学び、コンパクトな病棟とすることでスタッフステーションから病室までの距離を短くしています。さらには患者さんのプライバシーを保つため、全355床のうち77.5%にあたる275床を個室にしました。そのほかにも、パンデミック対策や事務手続きの効率化につながる病棟とすることで、患者さんに少しでも快適にお過ごしいただけたらと考えています。
当院は地域の医療機関や福祉施設と密につながり、地域全体で皆さんを診させていただく体制を作っています。地域医療連携室では紹介患者さんの受診予約、画像診断(放射線・内視鏡等)の検査予約、開放型病床利用の手続き、地域医療連携登録医の受付や手続き、入院依頼・相談、診療情報提供書のFAX送受信や送付などをスムーズに行うことで、地域医療の中心的な役割を担っています。また、地域の医療従事者を対象とした研修会を積極的に開催しています。
今後はさらなる連携強化を行い、地域の医療・介護従事者とともに成長することで地域全体医療の質の向上に貢献できたらと考えています。
当院は“高い志を持ち「心温まる思いやりの病院」を実践する”を理念とし、地域社会・地域医療に貢献したいと考えています。私は職員やその家族が病気になったとき、自分が入院したい、家族を入院させたい病院でありたいと思っています。新病院でも、職員一同がそうあれるように精進していく所存です。
当院は血管外科疾患(動脈瘤や閉塞性動脈疾患)、腎疾患・血液透析(バスキュラーアクセス)、脳神経外科疾患はもとより、すべての医療で患者さんに安心をお届けできるよう取り組んでまいります。それとともに、明治天皇の設立趣旨にのっとり、無料定額診療事業も積極的に推進することで済生会の病院として期待される役割も果たしていきます。
どんな小さなことでも、安心して福岡県済生会八幡総合病院にご相談いただければ幸いです。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。