サルコイドーシスは、心臓や肺、目などさまざまな部位に生じます。特に、中年期以降に発症し、病変臓器が3つ以上にのぼる場合は、治療薬が効きにくく重症化しやすいともいわれています。一方で、軽症のサルコイドーシスは自然治癒することが多く、治療の前に充分な経過観察期間を設けることもあるといいます。
東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科教授の本間栄先生に、肺サルコイドーシスの検査と診断、全身のサルコイドーシスの治療方針についてお話しいただきました。
肺サルコイドーシスは、治りやすさや治療期間によって3つの型に分類されます。
記事1『サルコイドーシスの原因と症状とは?全身に肉芽腫ができる指定難病』にも記したように、重症化しやすさや治りにくさには人種差がみられます。たとえば、黒人の肺サルコイドーシスの画像所見をみると、肉芽腫が大きく、肺に空洞がみえることもあります。そのため、後述するように諸外国では肺病変が死亡原因となることも多くなっています。
日本人でも、中年以上の患者さんで、3つ以上の病変臓器がある場合は難治化しやすい傾向があります。組み合わせはさまざまですが、心臓、肺、眼が病変臓器となることが多いように思われます。また、神経症状も他部位のサルコイドーシスと共に現れやすい傾向があります。
日本人のサルコイドーシスには、他の国の傾向とは異なり、心臓病変が死亡の原因となることが多いという特徴があります。一方、欧米などでは肺サルコイドーシスによる呼吸不全が死亡原因として最も多くなっています。
東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科では、肺サルコイドーシスが疑われる場合、レントゲン検査、CT検査、血液検査、尿検査を行っています。血中カルシウム濃度や尿中カルシウム濃度の値は、診断やその後定期的な治療効果をみるための重要な手がかりとなります。
また、ツベルクリン反応をみることも、サルコイドーシスの診断の参考になります。過去に結核菌に感染していたりBCG接種を受けていたりする場合、ツベルクリン反応は陽性(赤くなること)を示しますが、サルコイドーシスを発症している場合、ツベルクリン反応は陰転化します。
ただし、近年では過去に結核菌に感染した経験がない若い患者さんも増えており、サルコイドーシスに罹患していなくともツベルクリン反応が陰性となるケースが増えました。そのため、ツベルクリン反応陰転化は、あくまで診断の補助と捉えることが重要です。
このほか、肺サルコイドーシスに対するPET検査は心サルコイドーシスと異なり保険収載されていないため、ガリウムシンチグラフィを行なうこともあります。
肺サルコイドーシスの診断を確定させるために、気管支鏡を用いて病変部位の組織生検を行います。検査画像で影になっている部分の組織を採取し、気管支肺胞洗浄検査でリンパ球の有意な増加等を確認できれば、診断を確定できます。
過敏性肺炎、結核や非結核性抗酸菌等でも、サルコイドーシスと同様に類上皮細胞肉芽腫が形成されます。そのため、病変が肺のみに限局している場合は、肉芽腫を確認しただけではサルコイドーシスと確定することはできません。
ただし、全身の複数臓器に肉芽腫が確認できた場合は、鑑別診断の必要はありません。したがって、どの臓器にどういった症状が出ているかにより、診断に至るまでの期間は異なります。
上記のような理由から、確定診断までに日数を要する症例もありますが、この期間に治療を開始することはできません。というのも、多くの短期改善型サルコイドーシスは第一選択薬であるステロイド薬が短期でも効果を示すため、病変が治癒してしまい、診断をつけることは困難になるからです。
また、サルコイドーシスではなく結核などの感染症であった場合、ステロイド剤は病状を悪化させるリスクがあります。そのため、症状がある場合でも、治療は確定診断を待って開始します。
まず、ステロイド剤を単剤で処方します。短期改善型サルコイドーシスに対するステロイド剤の効果は高く、多くの場合1~2か月で改善がみられます。
私は肺サルコイドーシスを専門としていますが、治療開始後の肺所見を観察すると、わずか数か月で結節が顕著に減少していることがわかります。
ステロイド単剤では効果がみられない場合は、免疫抑制剤を処方します。
軽症のサルコイドーシスで、ステロイド剤に対する反応がよい患者さんも多数みえます。ただし、軽症の場合は自然治癒することも多いため、充分に経過観察の期間をとることもあります。なぜなら、ステロイド剤には胃潰瘍や感染症、糖尿病、骨粗しょう症などの副作用もあるからです。
軽症のサルコイドーシスの治療は、このように治療効果と薬の副作用を天秤にかけながら計画的に行っていきます。
3年以上持続する遷延型サルコイドーシスには、経過観察という選択肢はなく、ステロイド剤を使わざるを得ません。長期にステロイド剤を処方する場合は、上述した副作用を軽減するために、胃薬や骨粗しょう症を防ぐ薬なども処方します。
ただし、処方量はそれほど多量ではないため、うつ状態など、日常生活に大きな支障をきたす副作用を訴える患者さんはほとんどみられません。
また、病変部位によって処方するステロイド剤のタイプも変えています。たとえば、肺サルコイドーシスのみの患者さんには、喘息患者さんなどに処方する吸入ステロイド剤を処方することもあります。吸入ステロイド剤は全身性の副作用を防ぐことができます。目だけに病変が生じている場合は点眼ステロイド、皮膚病変のみの場合はステロイド軟膏(塗り薬)など、あらゆる形のステロイド剤を患者さんに応じて使い分けています。
治療により完治し薬を完全にやめられる患者さんと、病状は安定しても生涯にわたり薬の服用を続ける必要がある患者さんがいます。完全に治るまで充分に治療を行った場合、基本的に再発はしません。
サルコイドーシスの再発は、ステロイド剤が不十分な状態で治療を中断してしまった場合などに起こります。
日本のデータでは、報告されている全サルコイドーシスのうち、自然治癒した患者さんと治療により治癒を得られた患者さんは合計で約4割、慢性化したものの状態が安定している方は2~3割、治療しても進行していく難治例は約1割となっています。
サルコイドーシスの患者さんでも、問題なく妊娠、出産されている方は多数おられます。ただし、ステロイド剤などの薬を服用している場合は、あらかじめ主治医に妊娠・出産を希望していることを伝え、治療方針について早い段階から相談することが大切です。
また、妊娠中はステロイドホルモンが分泌されることにより一時的に病状がよくなるものの、出産後から再び分泌されなくなるため、病状が悪化する傾向にあります。ステロイド剤を補充することで症状は落ち着きますが、薬の影響を考慮し、母乳哺育は控えていただく必要があります。
難治性サルコイドーシスとはステロイド剤や免疫抑制剤が効かない型を指します。そのため、肺高血圧症や心臓病変がある場合は、抗不整脈薬を処方する、重症例であればペースメーカーを入れるといった治療を選択します。
また、サルコイドーシスのみに限った話ではありませんが、呼吸不全に対しては酸素療法やリハビリテーションなどの非薬物療法も行っています。
今後は、肺サルコイドーシスによる肺線維症に対しても、特発性肺線維症に対する抗線維化薬などが用いられるようになるかもしれません。(※現時点では保険収載されていません。)
国外では、サルコイドーシスに対するTNF阻害薬(生物学的製剤)の効果をみる臨床試験も行われています。海外のデータのみしか報告されていないため、近い未来日本で臨床応用できるわけではありませんが、世界的なサルコイドーシスの治療発展につながっていってほしいと願っています。
また、びまん性肺疾患研究グループでは、現在進行形で肺サルコイドーシスの新分類を作っています。具体的には、線維化するタイプ(S型)、類上皮細胞肉芽腫が多量に形成されるタイプ(G型)、G型に線維化が加わるタイプ(GS型)の3つに分け、予後と治療法を検討しています。今後、一人ひとりの肺サルコイドーシスに応じてオーダーメイド医療を行っていくために、この試みも着実に前進させていきたいと考えています。
東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森) 客員教授、東邦大学医療センター 大森病院間質性肺炎センター 顧問、医療法人社団同友会春日クリニック 医員
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サルコイドーシス
わたしはサルコイドーシス です。 高血圧で、上と下が近いです。 循環器系ですよね? 150-95などです。リウマチの先生は、一か月測ってと、血圧が高くなると、頭痛くなります。心臓サルコイドーシス は、 死ぬ可能性が高いと、 やはりちゃんと循環器受診が良いですか?
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