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不妊症の原因と治療法——再生医療であるPRP療法とは?

不妊症の原因と治療法——再生医療であるPRP療法とは?
小島 加代子 先生

高木病院 副院長、高木病院 不妊センター センター長

小島 加代子 先生

目次
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妊娠や出産を望む男女が避妊しないで性行為をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないことを“不妊”といいます。子どもがおらず、不妊の心配をしたことがある夫婦の割合は2015年の時点で55.2%にのぼり、実際に検査や不妊治療を受けたことがある夫婦の割合は28.2%でした。患者さんの年齢や状態に応じて治療方法が異なる不妊治療は、精神的な落ち込みや身体的な苦痛、経済的な負担などが伴います。いつか子どもを授かりたい——。その一身で不妊治療に励むカップルを応援し、治療にあたる小島加代子(こじまかよこ)先生(高木病院 副院長/不妊センター センター長)に、不妊症の原因や、PRP療法についてお話を伺いました。

妊娠するためには、体の中で卵子と精子が出会い、受精して着床するまでに、あらゆる条件がそろう必要があります。また、原因不明で不妊症になることもあります。以下では、女性と男性それぞれの不妊原因についてご紹介します。

  • 排卵因子

規則的な月経がある女性の体は、月経の約2週間前に“排卵”をします。排卵がきっかけとなって女性ホルモンの分泌に変化が起こり、子宮内膜がしだいに厚くなります。ふかふかのベッドのようになった子宮内膜は、受精卵の着床を待ちますが、妊娠が成立しなければ剥がれ落ち、出血と共に体の外へ排出されます。これを月経と呼びます。

しかし、月経不順の女性の場合、出血があっても排卵をしていない場合があります。月経の約2週間前に排卵が起こらなければ、妊娠することはありません。排卵が起こらない原因は、女性ホルモンに影響を与える甲状腺の病気や肥満、体重の減少、卵巣症候群などが挙げられます。また、まったく月経がない場合はまれに早発卵巣不全早発閉経)を起こしていることもあります。

  • 卵管因子

卵管とは、卵巣から放出された卵子を取り込み、受精した卵子を子宮に運ぶ細い管のことであり、子宮の左右両側についています。その卵管が癒着したり、炎症が起こっていたりすると、卵子が待つ位置まで精子がたどり着くことができず、受精ができません。何とか受精できたとしても、その受精卵が子宮へと移動することは容易ではありません。このような卵管のトラブルのことを、卵管因子といいます。

  • 頸管因子

頸管は子宮の入り口で、腟と子宮口をつなぐ部分です。通常、腟内は細菌の侵入を防ぐために酸性に保たれていますが、排卵が近づくとアルカリ性で粘り気のある頸管粘液(おりもの)が分泌され、精子が入りやすい状態になります。頸管粘液の分泌が少ないと、精子は子宮内に侵入しにくくなり、妊娠が難しくなります。この状態を頸管粘液不全けいかんねんえきふぜんといいます。

  • 免疫因子

私たちの体には、細菌やウイルスから身を守るために備わっている“免疫”という仕組みが備わっています。異物から体を保護する大切な仕組みですが、時に精子を攻撃してしまうことがあります。女性の体内に精子を攻撃する抗体(抗精子抗体)があると、精子の動きがはばかられ、妊娠が難しくなります。

  • 子宮因子

子宮筋腫子宮内膜ポリープなどの病気、先天的な子宮の形態異常、子宮内腔癒着などにより、子宮そのものに異常がある場合があります。不正出血や長引く月経、ひどい月経痛がある場合は、早めに検査を受けましょう。

子宮内膜という組織あるいはそれに似た組織が、何らかの原因で子宮の外側に発生し増殖してしまう病気です。発症は、20~30歳代の女性に多くみられます。

  • 造精機能障害

精子がない、あるいは数が少ない場合や、精子自体の運動性が弱いと、妊娠が難しくなります。

  • 精路通過障害

精巣で精子を作る能力はあっても、精管の閉塞(へいそく)で、射出精液中に精子が認められない状態です。

  • 性機能障害

勃起障害(ED)や、腟内射精障害など、性行為で射精できない障害を指します。一般的には、ストレスや妊娠への精神的なプレッシャーなどが原因といわれていますが、糖尿病などの病気が原因であることもあります。

  • 加齢

男女共に、年齢を重ねるごとに、妊娠する、させる力が低下していくことが分かっています。女性は30歳を過ぎると自然妊娠ができる確率が減り、35歳を過ぎるとより難しくなります。男性も加齢とともに徐々に精子の質が低下するといわれています。

治療方法は、患者さんによってそれぞれです。卵管に問題がなければタイミング法からスタートし、人工授精、体外受精や顕微授精へとステップアップしていきます。

  • タイミング法 

排卵日の周辺で性行為を促すことで、妊娠を目指す方法です。

  • 人工授精

男性のマスターベーションで採取した運動性のよい精子を洗浄および濃縮し、女性の排卵日に子宮の中に注入して受精を手助けする方法です。

  • 体外受精(顕微受精)

卵子と精子をシャーレの中に入れ、受精が確認できたら子宮に戻す治療方法です。精子の数が少ない方には顕微受精を行います。

  • レスキュー・イクシー(ICSI)

体外受精した当日に卵子の受精兆候を観察し、兆候のない卵子に顕微授精を行う方法を、レスキュー・イクシー(ICSI)と呼びます。体外受精後、4時間後、5時間後、6時間後と1時間おきに受精兆候を確認します。兆候がない場合、夕方から夜にかけて顕微授精を施行します。当院では胚培養士がICSIを行っています(2019年12月時点)。

レスキュー・イクシー(ICSI)

培養室で精子と卵子を確認する培養士
培養室で精子と卵子を確認する胚培養士

PRP療法とは、血液中の血小板に含まれている成長因子の持つ力を利用し、私たちの体にもともと備わっている“治る力”を高めることで、病気やけがを治す再生医療です。

けがをしたとき、できた傷が徐々に塞がりカサブタができて、いつの間にか元通りに治っていた経験はないでしょうか。傷が治る一連の流れには、血液中に含まれる“血小板”が大切な役割を果たしています。血小板は、出血を止めるほかに、細胞の成長を促す物質などが含まれているため、PRP療法を行うことで、子宮内膜が厚くなったり、着床しやすくなったりするといわれています。

PRP療法は厚生労働省に再生医療等提供計画を届出する必要があります。当院ではそのプロセスを経て、PRP療法を開始しております。2019年12月現在、全国では12の病院で不妊治療にPRP療法を実施していますが、九州地方では、当院が初となります。

患者さんから採取した血液を、遠心分離機を用いて血漿部分のみ分離、抽出し、濃縮したPRP(多血小板血漿:Platelet-rich plasma)をカテーテルで患者さんの子宮内へ注入します。個人差はありますが、長期間にわたって治療効果が認められます。また、治療は繰り返し行うことが可能です。

PRP療法は、日本ではまだ保険診療として認められていません。そのため、治療を受ける方は自由診療となります。PRP療法にかかる費用は、2回の注入で20万円(税抜き)、もしくは1回の注入で15万円(税抜き)です。

PRP療法は、患者さん自身の血液を使うため、副作用が起こる可能性は低く、患者さんの体にも負担が少ないと考えられています。ただし、子宮内へ注入する際の痛み、出血などの副作用は考えられます。もちろん一時的な症状ですが、体調に異変を感じたら、速やかに担当医師へお知らせください。

その他、PRP療法に関するお問い合わせは、当院までご連絡ください。

産婦人科直通 TEL 0944-87-8822

診療体制スタッフ

当院は1991年に不妊外来を開設しました。それ以降、医師、看護師、胚培養士、体外受精コーディネーター、臨床心理士が全員横並びとなり、チーム医療にあたっています。定期的なカンファレンスを行い、患者さんの情報などを共有しています。当センターでのこれまでの移植総数は15,211人で、計3,261人の体外受精児が誕生しました(不妊外来開設から2019年9月までの統計)。

読者の皆さんへのメッセージ

1991年以降、患者さんにやさしい治療を目指して、カップルのサポートをさせていただいています。「赤ちゃんがほしい」という願いを叶えるために、これからも、私たちができることに精一杯取り組んでいきます。

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  • 高木病院 副院長、高木病院 不妊センター センター長

    小島 加代子 先生

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