生理不順(生理の遅れ)が生じる理由としてまず考えられるのが、妊娠によるものと、生活習慣や病気が関係しているものとの2つです。特に性行為があって生理が遅れている場合には、何が原因となっているか判断がつかないこともあります。また、一般的に生理不順の定義を理解していない場合もあるため、まずは生理不順とはどういった状態なのか、または生理と妊娠の関係を理解することが大切です。
生理不順は医学的に“月経不順”と呼ばれます。生理が始まった日を1日目として、次の生理が始まる前日までが生理(月経)周期と定義されており、この周期が25~38日であれば正常であるとされています。そのため、予定から多少ずれていたとしても25~38日の範囲内に収まっていれば正常な生理といえます。
一方、前回の生理開始日から39日以上経過しても生理が来ない場合は“稀発月経”、24日以内に再び生理が来る場合は“頻発月経”、妊娠以外の原因で3か月以上生理が来ない場合は“無月経(続発性無月経)”といいます。なお、生理(出血)の期間は通常3~7日程度ですが、出血期間に異常が見られる場合も生理不順に含まれます。
女性には妊娠するために必要な子宮や卵巣が備わっており、約1か月に1度のペースで子宮の内側を覆っている子宮内膜を厚くさせて妊娠の準備を整えます。しかし、妊娠しなかった場合には、この厚くなった子宮内膜は剥がれ落ちて血液と共に体外に排出されます。これが生理(月経)です。
一方、妊娠した場合は厚くなった子宮内膜は剥がれ落ちずに受精した卵子を受け入れて発育させます。したがって、妊娠している場合は生理が来ないことになります。
生理不順は、前述のとおり病気(稀発月経または続発性無月経)や生活習慣によって生じている場合と、妊娠によって生じている場合の2通りが考えられます。
性行為があって生理不順が生じている場合は妊娠をしている可能性が考えられます。そのため、まず妊娠検査薬を使用して妊娠の可能性を確認するとよいでしょう。妊娠検査薬が陰性、または妊娠の可能性がなく生理が39日以上遅れている場合は、婦人科系疾患の疑いも含め産婦人科の受診を検討するとよいでしょう。
一方、性行為がなく生理不順が生じている理由には、過度のダイエットや肥満、ストレスによるホルモンバランスの乱れなどの生活習慣を原因とする場合や、子宮内膜症、子宮筋腫や子宮がんなどの婦人科系疾患による場合が挙げられます。また、卵巣機能不全(早発閉経)の初期症状として、生理不順がおこることもあります。
もし子宮内膜症などの婦人科系疾患や卵巣機能不全(早発閉経)によって生じている場合は、早めの治療が必要な場合があります。ダイエットや肥満などが原因となっている場合であっても、不妊症につながる可能性が考えられます。そのため、前回の生理開始日から39日以上経過しても生理が始まらないときは、病気の可能性も含めて産婦人科の受診を検討するとよいでしょう。
性行為があり生理が遅れている場合、妊娠を確かめる方法としては市販の妊娠検査薬を自宅で使用する簡易的な検査方法があります。しかし、妊娠検査薬には使用にあたって注意点などが存在するため、まずは薬剤師に相談した上で購入するようにしましょう。
市販の妊娠検査薬は、尿中のhCG*(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という、妊娠中にのみ産生される物質を検出することで妊娠判定するものです。尿中hCG値は妊娠週数によって変動があり、5~6週後に急速に上昇するため、それ以前は妊娠検査薬で正確な判定ができないことがあります。実際に妊娠3週目では陽性率が85%程度、4週目以降で100%になるという報告があるため、妊娠検査薬は妊娠4週目(前回の月経開始日から28~34日目)以降に使用するのがよいとされています。
ただし、市販の妊娠検査薬は生理予定日(妊娠4週相当)から使用可能のもの、生理予定日の約1週間後から使用可能のものなど商品によって使用できる時期が異なるため、薬剤師に相談し説明書を読んでから使用するとよいでしょう。
妊娠検査薬で陽性判定であっても正常な妊娠をしているとは限りません。流産や異所性妊娠(子宮以外の場所に妊娠している)の場合でも陽性判定が出ることがあります。異所性妊娠の場合は、急な腹痛やおなかの中で大量出血が起こることもあるため、陽性判定が出た場合も早めの受診が必要となります。
生理不順が生じている場合に考えられる理由はさまざまありますが、性行為がある場合は妊娠の可能性もあります。この場合は、まず妊娠検査薬を使用するとよいでしょう。性行為がなく妊娠の可能性がない場合や妊娠検査薬で陰性だった場合でも、生理不順の原因を明らかにし、適切な対処を行う必要があります。いずれにしても適切な検査・治療に進めるよう、産婦人科などの受診を検討するとよいでしょう。
順天堂大学医学部附属順天堂医院 産科・婦人科 教授、ローズレディースクリニック 医師、国際医療福祉大学 医学部 産婦人科 教授、 国際医療福祉大学 高度生殖医療リサーチセンター センター長
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