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インタビュー

膀胱がんの原因・症状・診断-痛みのない血尿には注意が必要

膀胱がんの原因・症状・診断-痛みのない血尿には注意が必要
戸邉 豊総 先生

済生会宇都宮病院 泌尿器科 主任診療科長

戸邉 豊総 先生

この記事の最終更新は2016年07月13日です。

膀胱がんは高リスク因子である喫煙や化学物質、特定の感染症による慢性的な炎症など、外的因子によって発症することが知られています。早期のうちに発見できれば内視鏡による治療が可能ですが、進行すると膀胱を全部摘出しなければならない場合もあります。膀胱がんの原因と初期症状、そして検査や診断について、済生会宇都宮病院泌尿器科主任診療科長の戸邉豊総先生にお話をうかがいました。

膀胱がんのリスク要因としては年齢・性別・人種などもありますが、もっとも大きな要因は喫煙であるとされています。また、その他には化学物質も関係しているといわれています。かつて京都の西陣織職人に膀胱がんが多くみられ、染色に用いる化学物質の染料の影響があったということがわかりました。膀胱がんはこのような外的因子によって発症することが証明されているがんです。

膀胱がんも他のがんと同じように宿主側の因子と環境因子の両方が関係していますが、その環境因子のひとつとして「職業」が挙げられます。第1次産業従事者よりも第2次産業従事者のほうが膀胱がんになりやすく、また化学薬品である種々の薬液を使用する機会の多い皮革職人や美容師などリスクが高めとなっています。前述した化学物質のほか、多くのがん同様に放射線の影響も指摘されています。

このほか、感染症による炎症も膀胱がんの原因となります。エジプトのナイル川流域に特有の風土病であるビルハルツ住血吸虫症に感染すると、膀胱内に扁平上皮がんを生じる原因となることが知られています。

また、嗜好品ではコーヒーが膀胱がんと関係があるといわれています。コーヒーの摂取については膀胱がんと正の相関があり、緑茶ではそれが認められなかったという論文が発表されています。しかも意外なことに、喫煙とコーヒー摂取が重なると膀胱がんになりやすいというわけではなく、むしろ非喫煙者のコーヒー摂取のほうがよりオッズ比が高いという解析結果があります。

日本で喫煙と膀胱がんの関係について追跡したコホート研究(観察的研究)では、やはり喫煙している人に膀胱がんが多いという結果が出ています。また別の日本の研究によれば、コーヒーを1日に1杯以上飲む人のほうが飲まない人に比べると膀胱がんの頻度が倍以上であったというデータがあります。これに対して緑茶はむしろ膀胱がんの発症を抑える傾向があり、コーヒーはリスクを高めるということがいわれています。ですから、膀胱がんのリスクからいえばコーヒーは飲みすぎないほうがいいのかもしれません。

膀胱がんが見つかるきっかけとして多いのは血尿で、8割は無症候性の血尿です。血尿といっても膀胱炎などいろいろな原因で起こることがありますが、痛みのない無症候性の血尿があったときには一度泌尿器科にかかっておいたほうがよいでしょう。

診断は下腹部の超音波検査、膀胱のファイバースコープ検査などによって行なわれます。昔は硬性膀胱鏡と呼ばれるまっすぐな硬い内視鏡で診ていましたが、今はファイバースコープ(軟性膀胱鏡)で痛みなく検査ができます。

さらに現在ではNBI(Narrow band image:狭帯域光観察)といって、通常とは波長の異なる特殊な光を当てることで見えにくいところもよりくわしく見ることができるようになり、早期発見につながるようになっています。

ファイバースコープの所見から、有茎性(ゆうけいせい)・広基性(こうきせい)・乳頭状(にゅうとうじょう)・非乳頭状(ひにゅうとうじょう)など、がんの形態を観察し、さらにCT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)などの画像診断によってがんの根の深さ(浸潤の程度)を確認して診断します。

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