花粉症とは、花粉によってアレルギー反応が起き、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど鼻の症状や、かゆみ、充血など目の症状が生じる病気です。花粉症の薬には症状のタイプや重症度によってさまざまな種類があります。さらに、薬の入手手段も薬局やドラックストアで購入できる市販薬と、病院を受診して医師の処方によって手に入る処方薬があり、いずれも症状や重症度によって適切なものが異なります。
本記事では、花粉症の薬の種類や副作用、薬が効かないと感じた場合の対処法について解説します。
花粉症の薬は主に内服薬と点鼻、点眼薬に分けられます。
花粉症で用いられる内服薬(飲み薬)は全身にはたらきかけ、花粉症の症状を和らげる効果があります。内服薬の種類には、第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬などが挙げられます。
点鼻・点眼薬とは鼻や目に直接付ける薬のことで、たとえば目薬は点眼薬ということになります。点鼻・点眼薬は鼻や目の症状が特に強い場合に使用されます。花粉症の症状を和らげる点鼻薬の種類としては、鼻噴射用ステロイド薬、第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬などが、また、点眼薬としては、抗ヒスタミン薬や、ステロイド点眼薬などが挙げられます。
花粉症の治療薬には、症状のタイプや重症度に合わせてさまざまな種類があります。以下では、それぞれの薬の特徴について解説します。
第2世代抗ヒスタミン薬は、初期から重症までさまざまな重症度の人に処方され、くしゃみや鼻水などの鼻の症状を和らげる効果があります。また、点眼薬として使用される場合、目のかゆみを抑える効果もあります。
アレルギー原因となる物質の分泌を抑える薬で、初期や軽症の段階で処方されます。即効性がないため、花粉の季節よりも前から服用することが大切です。
抗ロイコトリエン薬は、鼻づまりの症状を和らげる薬です。どの重症度でも処方されることがあり、血管を拡張し、鼻の通りをよくする効果があります。
鼻づまりに効果があり、初期から重症まで処方されることがあります。
サイトカインと呼ばれる物質の中でもアレルギーの発症に関与するもの放出されることを防ぐことにより、アレルギー反応を和らげます。初期や軽症の段階で処方されます。
点鼻、点眼薬としてステロイド薬が使用されることもあります。くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど鼻の症状がある場合には点鼻薬として初期のうちから使用されるほか、重症になると点眼薬や内服薬としても使用されます。
主に重症で鼻づまりの症状があるとき、期間を限定して点鼻薬として使用します。根本的な治療ではなく、連用すると使用しないときにリバウンドの鼻づまりが強まります。
花粉症の薬には症状を和らげるのではなく、アレルギー反応を和らげ、花粉症の根治を目指す薬もあります。このような治療方法を“アレルゲン免疫療法”といいます。現在、スギ花粉による花粉症には、“舌下免疫療法”と呼ばれる治療方法が行われており、舌の裏に治療薬を置き、数分後に飲み込むことを繰り返すことにより、スギ花粉によるアレルギー反応を抑えることができるといわれています。ただし、この治療方法には花粉症の症状がない季節を含め、3~5年の継続が必要とされます。治療中は症状を抑える薬を併用することが可能です。
花粉症は症状や重症度によって効果のある薬が異なるため、効果の強い薬を一概に示すことはできません。そのため、その人の症状や重症度にあった薬を服用することが大切です。
花粉症の疑いがあっても病院を受診せず、自己判断で市販薬を服用している人の場合、薬を服用していても“効いている気がしない”ということもあるかもしれません。この場合、症状や重症度にあった薬を服用できていない可能性があるため、病院を受診し、医師から症状や重症度にあった薬を処方してもらうことを検討しましょう。また、病院で処方された薬を服用しても“効かない”と感じる場合、受診の際にその旨を医師に相談しましょう。
“花粉症の薬は眠くなる”というイメージを持つ方もいますが、これは“第1世代抗ヒスタミン薬”と呼ばれる、過去に使用されていた治療薬に強い眠気の副作用があったためです。同じ抗ヒスタミン薬でも、現在よく使用されている第2世代抗ヒスタミン薬、とりわけ後期(非鎮静)第2世代抗ヒスタミン薬は眠気・だるさが生じにくくなっています。また、点鼻、点眼薬は内服薬と比較すると血液に薬が入ることが少ないため、眠気などの副作用を抑えることができます。
そのほかに注意する薬として、重症のときに使用される“点鼻用血管収縮薬”や“経口用のステロイド薬”が挙げられます。点鼻用血管収縮薬は即効性がありつけるとすぐに効果が現れる一方、使用しすぎると薬剤性鼻炎にかかり、かえって鼻づまりが強くなるため、症状の強い1~2週間のみに限定して使用するようにしましょう。また、経口ステロイド薬も服用を続けていると感染症にかかりやすくなったり、骨がもろくなったり、さまざまな副作用が現れることがあるため、特に症状の強い1週間程度の使用にとどめます。
花粉症を疑う症状が続く場合には自己判断で市販薬を服用する前に、まず病院を受診することを検討しましょう。病院では、アレルギーの原因となる花粉の種類を検査し、症状や重症度に合わせて薬の処方やその他の治療方法の提案を行います。
また、第2世代抗ヒスタミン剤などの治療薬は花粉の飛散が始まるより少し前から服用したほうが効果を得られるといわれています。そのため、花粉症が疑われる場合は、花粉の飛散より早く薬を服用できるよう、病院の受診時期を検討するとよいでしょう。
東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 科長、東北大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室 教授
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