神奈川県横浜市保土ケ谷区にある横浜保土ケ谷中央病院は、良質な医療の提供をモットーに、診療体制の強化に取り組んでいます。地域のニーズに対応するため、各種専門外来の開設や医療機器導入など、医療水準の向上に努める同院の役割や今後について、病院長の國崎 主税先生に伺いました。
当院は1955年3月に船員保険横浜病院として設立され、2014年4月に独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が運営する横浜保土ケ谷中央病院になりました。JCHOはかつて社会保険庁所管の団体が所有していた病院施設などを引き継ぐ形で設立された機構です。救急医療・災害医療・へき地医療・周産期医療・小児医療といった5つの事業を中心に、がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病・精神疾患といった5つの疾病とリハビリテーションなどを提供しており、当院もJCHOの一員として良質な医療の提供をモットーに地域医療を支えています。
救急医療においては横浜市の二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っており、救急搬送されてくる患者さんの数は年間で約3,000件に達します。
当院の強みの1つは、広範な病気を総合的に診断・治療する総合診療科が充実していることです。総合診療科でどのように患者さんを診ていくのかは、医師によって考え方が違ったり、病院によって立ち位置が違ったりします。その点において当院では、各診療科が専門性の高い医療を提供し、すき間を埋めるように総合診療医が患者さんを診て、各診療科の橋渡しをしています。
また、訪問診療にも積極的に取り組んでおり、総合診療医が自転車に乗って、地域の患者さんのお宅に伺っています。当院は総合診療専門研修の基幹施設であることから、訪問診療の際には研修で訪れた学生さんが同行することもあります。未来を担う医師の育成も重要な役割の1つとなっています。
消化管(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸)と肝臓、すい臓、胆のうなどを診る消化器内科と消化器外科は、当院が特に力を入れている領域です。
上部・下部消化管内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)の実施件数は増加傾向にあり、近年は年間3,000件を超えました。早期の食道がん・胃がん・大腸がんについては、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡治療を実施しています。
当院には、日本消化器内視鏡学会の専門医や日本内視鏡外科学会の技術認定医が複数名在籍しており安全で質の高い治療を心がけていますので、安心して来院いただければと思います。
また、2024年4月には新たに“肝疾患センター”を開設しました。これにより、慢性肝炎や肝がんなど、肝疾患の診療体制が強化されました。
口腔外科では、腫瘍や嚢胞、炎症、顎顔面外傷、埋伏歯の抜歯、顎関節疾患、唾液腺疾患など一般的な診療に加え、顎変形症の手術も行っています。
顎変形症は上顎前突や下顎前突などが原因で咬合不全になり、うまく噛めなかったり、顔や顎が歪んでしまったりする症例です。骨を削るなどして咬合不全を治すのですが、当院では手術の傷跡が目立たないように、口腔内から骨を削る手術を行っています。手術の評判から全国各地より患者さんが受診していますが、手術は週に1回のペースで行っているため現在は2年先まで予約が埋まっている状態です(2025年2月時点)。
市民の皆さんの健康を守るため、当院では地域の健康促進活動にも取り組んでいます。その一環として、2024年11月に市民公開講座を開催しました。当日は私も講師として参加し、“お腹が痛いときに、どんな病気を考えるのか?”をテーマにお話をさせていただきました。そのほかにも、泌尿器科の医師による講座や、ロコモ予防や骨密度測定、骨盤底筋体操などの体験コーナーを開催し、多くの方にご参加いただきました。
また、世界糖尿病デーにあわせて『血糖測定イベント』も実施しています。参加者の方に血糖測定を受けていただき、その場で測定結果の説明と、必要に応じて健康相談を行いました。こうした取り組みを通して糖尿病に対する意識が高まり、予防の重要性を再認識していただけると嬉しいですね。
地域医療を支える中核的な病院として、必要な診療体制を強化していくことが当院の使命です。そのために総合診療科における訪問診療の強化や、消化器内科・外科による肝疾患センターの開設などに取り組んできました。今後も診療体制の強化を続け、標準的な治療は可能な限り当院で完結できるようにしたいと考えています。
それと同時に推進したいのが地域連携の強化です。当院を中心にして、地域全体でシームレスな医療が提供できる体制を構築できればと考えています。こうした取り組みを通して、地域の皆さんから“あの病院に行けば大丈夫”と言っていただけるよう努力を続けてまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
*写真提供……横浜保土ケ谷中央病院
独立行政法人 地域医療機能推進機構 横浜保土ヶ谷中央病院 病院長
独立行政法人 地域医療機能推進機構 横浜保土ヶ谷中央病院 病院長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科専門医・消化器外科指導医日本食道学会 食道外科専門医・食道科認定医日本消化器病学会 消化器病専門医・消化器病指導医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(消化器・一般外科領域)日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本臨床腫瘍学会 暫定指導医日本消化管学会 胃腸科専門医・胃腸科指導医
1986年より消化器外科医師としてキャリアをはじめる。上部消化管外科学を専門とし、臨床・研究共に日本をリードすべく、精力的に取り組んでいる。2013年から2019年6月まで日本外科系連合学会理事を務め、2016年からは日本胃癌学会理事に就任。
2024年に横浜保土ヶ谷中央病院で病院長に就任。
國崎 主税 先生の所属医療機関
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