院長インタビュー

佐賀県の医療を支える大きな柱の1つ――佐賀県医療センター好生館

佐賀県の医療を支える大きな柱の1つ――佐賀県医療センター好生館
メディカルノート編集部  [取材]

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地方独立行政法人 佐賀県医療センター好生館は、江戸時代幕末期の1858年(安政5年)に創始された、歴史と伝統のある医療機関です。長い歴史のなかで成長を続け、今や佐賀県の医療の中核を担う医療機関となった同館の特徴や強みについて、館長の田中 聡也(たなか としや)先生に伺いました。

先方提供

地方独立行政法人 佐賀県医療センター好生館は、江戸時代後期からの非常に長い歴史を持つ医療機関です。1781(天明1)年に藩校“弘道館”が設立され、その後1834年に好生館の前身である医学館・医学寮が創設されました。その際、医学寮に“好生館”の扁額(へんがく)(横長の看板)が置かれ、これが“好生館”としての歴史の始まりとなりました。

その後1858年には、片田江(現在の佐賀市水ヶ江)に移転し、それまで“医学館”“医学寮”“好生館”とさまざまに呼ばれていた名称が“好生館”へと統一されました(好生館の創始)。さらに1896年には“佐賀県立病院好生館”へ改称し、2010年に地方独立行政法人へ移行、その後2013年に長らく所在していた水ヶ江の地を離れ、嘉瀬地区に“佐賀県医療センター 好生館”として新築移転を果たしました。

このように長い歴史を持つ当館は、現在450床の病床と34の診療科を備える佐賀県の中核的な医療機関として、高度専門的医療やがん医療、生命に関わる重症・重篤な状態の救急医療(三次救急医療)など幅広い医療提供で、佐賀県の医療体制を支えられるよう努めています。

当館は救急医療の中でももっとも重症・重篤な“生命に関わる状況”の患者さんに対して、高度かつ専門的な救急医療を行う三次救急医療施設(救命救急センター)です。当救命救急センターは、佐賀県初の救命救急センターとして1987年に開設しました。

現在、佐賀市・多久市・小城市・神埼市・吉野ヶ里町の4市1町で構成される佐賀県中部医療圏(以下、中部医療圏)において三次救急対応ができるのは、佐賀大学医学部附属病院と当館の2施設のみです(2024年9月時点)。

当館では、24時間365日体制で救急搬送を受け入れており、2023年度は3,612台の救急車を受け入れました。この受け入れ台数は県内でも上位を誇り、救急応需率(救急車受入れ要請のうち何割を受け入れたかという率)は91.9%と高い水準を維持しています。

救命救急センターでは救急科専門医(日本救急医学会認定)と各診療科の医師が協力・連携して治療にあたっており幅広い症例に対して高度かつ専門的な医療提供が可能です。また、救命救急センター専属看護師による質の高い外来トリアージ(患者さんの緊急度や重症度を判定して診療の優先順位付けを行うこと)も行っています。

2013年には九州初となる“外傷センター”を開設し、重症外傷を負った患者さんに対して緊急処置や手術だけでなく、リハビリテーションまで一貫した治療を行える体制を整えました。また、小児救急においては、小児科だけでなく小児外科も有していることから、中部医療圏の小児救急の大部分を当館が担っています。

救急体制の拡充という面では、ドクターヘリの運用も挙げられます。2013年の新築移転を機にヘリポートを設置し、2014年1月から基地病院である佐賀大学医学部附属病院と連携して佐賀県ドクターヘリの運用を開始しました。佐賀県ドクターヘリが運用されるまでは、福岡県ドクターヘリや長崎県ドクターヘリと協定を結んでヘリを利用していましたが、佐賀県ドクターヘリの運用開始によって、一刻を争う患者さんをより迅速に搬送することが可能となりました。

当館は地域がん診療連携拠点病院として、中部医療圏における専門的ながん診療を担っています。がんセンターは放射線療法部門、化学療法部門、相談支援・地域連携部門、臨床試験・研究部門、がん登録部門の5部門を有しており、さらに“緩和ケアセンター”も併設しています。

  • 緩和ケアセンター

緩和ケアセンターは、緩和ケア科・緩和ケア外来・緩和ケア病棟と緩和ケアチーム(PCT:Palliative Care Team)を統括したセンターです。さまざまな分野の職員がチームとなり、がんによる体の痛みや精神的な不安に寄り添い、治療や療養をサポートしています。

新機器の導入や更新で、より高度な医療を提供

より安全で体への負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)な手術を目指して、2016年度より手術支援ロボット“ダヴィンチ”を導入しています。当初は前立腺がん手術を主目的として導入しましたが、現在は前立腺がんだけでなく、消化器、呼吸器、肝胆膵(肝臓・胆のう・膵臓(すいぞう))領域、婦人科領域のがんや良性腫瘍(しゅよう)などに対してもロボット支援下手術を行っています。着実に症例数を重ねており、2023年度は225例のロボット支援下手術を行いました。

また、放射線治療においても、2024年3月に“TrueBeam(トゥルービーム)”という最新型の放射線治療装置を導入しました。患者さんの位置や動きを追跡しながら誤差補正できる機能を備えており、がん細胞に対する放射線照射をより正確かつ高精度に行えるようになりました。

がんセンターではこのように各診療科との緊密な連携のもとで、予防・診断・登録・治療・緩和ケアに至るまで、質の高い集学的がん医療を提供しています。

肝胆膵領域にも強い消化器病センター

2021年7月に消化器病センターを新たに設立しました。消化器内科・外科、臨床腫瘍科(腫瘍内科)、肝胆膵内科・外科などの医師・スタッフが緊密に連携して、がんをはじめとした消化器系疾患の診療にあたっています。特徴としては、消化器内科・外科はもちろん肝胆膵内科・外科をあえて独立した科として標榜し、それぞれの分野を専門とする医師を配置していることが挙げられます。肝胆膵領域のがんは特に手術の難易度が高いですが、当館では肝がん・膵がんに対する腹腔(ふくくう)鏡下手術も多く行っており、肝がんに対しては前述のロボット支援下手術も開始しています。

白血病治療に力をいれる血液内科

血液内科分野においては白血病悪性リンパ腫骨髄腫などの造血器腫瘍の治療に力を入れています。同科は2017年に非血縁者間造血幹細胞移植診療科*として認定されており、化学療法だけでなく、骨髄移植を含む造血幹細胞移植や骨髄採取術も行っています。

非血縁者間造血幹細胞移植診療科……日本造血・免疫細胞療法学会より「非血縁者間造血幹細胞移植を施行する診療科の認定基準(移植施設認定基準)」により認定を受け、日本骨髄バンクやさい帯血バンクを介した非血縁者間造血細胞移植ができる診療科を指す。

当館は、佐賀県の基幹災害拠点病院としても指定を受けています。県内で大規模災害が発生した際には、被災地への医療的支援などを行いますが、基幹病院としてはそれだけではなく“当館自体が災害に強いこと”も重要となります。そのため、当館は水害ハザードマップにおいて浸水リスクが少ないとされるエリアに位置しており、建物は地震に強い免震構造を採用しています。また、主要電源は1階ではなく3階に設置するなどの工夫もしており、災害時にも十分に機能を発揮できるよう考えぬかれた設計がなされています。

さらに当館は、“DMAT指定医療機関”でもあります。佐賀県に限らず日本のどこかで大規模災害が発生した際には、専門トレーニングを受けた医師や看護師などで構成されるDMAT(災害派遣医療チーム)を派遣しており、直近では2024年1月に起きた能登半島地震の際に、2チーム計14名のDMAT隊員と2名のDMATロジスティックチーム隊員*を派遣しました。

DMATロジスティックチーム……DMATの活動に関わる医薬品、通信手段等の確保や情報収集、連絡、調整等の役割を担うチームを指す。

当館では診療だけでなく、健康や医療に関する情報発信にも力を入れています。県民公開講座をはじめとした各種講演会や研修会、イベントなどを行っているほか、学校などを訪問して講演会も実施しております。

直近のイベントとしては、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社と共催する『ブラック・ジャックセミナー(2024年10月19日予定)』が予定されています。このセミナーでは、中高生を対象に、本物の医療器具・機器を使っての外科手技体験を行う予定です。また定期的に開催されている、がん患者会『なごみの会』では、毎回さまざまなテーマを用意し楽しんでいただけるよう努めています。なごみの会は、がん患者さんおよびそのご家族であれば、当館の患者さんでなくともご参加いただけます。

イベントや講演以外にも、YouTubeやInstagram、LINEなどSNSを活用した情報発信も行っています。特にYouTubeの配信においては、各診療科の紹介や過去の公開講座、健康づくりに役立つ情報など幅広い内容を発信しておりますので、ぜひ一度ご覧ください。

また、広報誌『好生館だより』では当館に関するさまざまな情報を掲載するだけでなく、当館と地域連携をしている医療機関の紹介コーナーも設けるなど、読みごたえのある仕上がりとなっています。最新号を含め、バックナンバーは全て当館ホームページで公開していますので、こちらもぜひご一読ください。

佐賀県医療センター好生館 YouTubeリンク
https://www.youtube.com/@koseikan247

好生館だよりバックナンバー リンク
https://www.koseikan.jp/about/other/public_information/

高齢化により、誤嚥(ごえん)肺炎認知症の患者さんが増加したり、複数の病気を抱えた患者さんが増えたりと医療のニーズも大きく変化しています。また、医師の働き方改革によって医療体制にも大きな変化が出ています。そうした変革期にあるなかでも、当館は地域の皆さんの健康と生命を守るための“最後の砦”として、柔軟に対応できる体制を整えていく所存です。そのため、よりスムーズかつ強固な連携のためのチーム医療やセンター化の推進、医療情報連携・業務効率化のための医療DX推進などに積極的に取り組んでいます。

当館は今後も“病む人、家族、そして県民のこころに添った最良の医療をめざします”という基本理念実現のために、職員一丸となって努力を続けてまいりますので、今後とも、地域の皆さんの温かいご指導、ご支援をよろしくお願いいたします。

病床数、診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年9月時点のものです。

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