「性感染症」というテーマは、日常生活の中ではなかなか話題にしにくいものかもしれません。しかし、性感染症の知識は、私たちがきちんと身につけておかなければならないものです。
さまざまな性感染症について、性感染症学会の代議員としてわが国における性感染症予防・治療を牽引し、ご自身の診療所でも長きに渡り性感染症の患者さんと向き合われてきた尾上泰彦先生に伺います。今回は「梅毒」についてのお話です。
梅毒とは「トレポネーマ・パリダム」という細長いらせん形の細菌によって全身に症状が出る性感染症です。
梅毒の名は、第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ていることから楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれたことが由来です。その後、楊の字が取れ、次第に梅瘡→黴毒→梅毒へと呼ばれるように変わっていったそうです。
また、梅毒はコロンブス一行が1492年に新大陸の発見と共に原住民の風土病だったものがヨーロッパに伝わったと考えられており、「悪魔のお土産」とも呼ばれています。その後瞬く間に全世界に拡がり、日本では1512年に発見され、わずか20年足らずで日本に伝わってきたと言われています。
感染してから3ヶ月までを第1期といいます。感染して約3週間後、病原体が侵入した部位に初期硬結(硬いしこり)ができます。
初期硬結はやがてその中心にびらんや潰瘍をつくります。それらは周囲が硬く盛り上がりますが、痛みやかゆみなどの症状があまりないことが多いです。単発で発生することが普通ですが、オーラルセックスにより複数できることもあります。
これらは、男性の場合は一般的に冠状溝(カリ)、包皮、亀頭部あるいは口唇などに見られます。その後、足のつけ根などのリンパ節に痛みのない腫れが生じます。女性の場合は、大小陰唇、子宮頸部、口唇、咽頭などに症状が見られます。
感染してから3カ月以降を第2期といいます。
第2期に入ってくるとだんだん病原体は局所から血中に浸入して増殖し、全身に広がっていきます。これによって第2期梅毒疹が生じます。第2期の初期には梅毒性のバラ疹が現れます。バラ疹は体幹を中心に顔や手足に見られ、1~2cm大の目立たない淡紅色斑です。バラ疹は自覚症状がみられず、数週間後に自然消失します。感染してから約12週間目には丘疹性梅毒疹(きゅうしんせいばいどくしん)が顔、体幹、手足に現れます。丘疹性梅毒疹は、小豆大からえんどう豆大の大きさで、赤褐色から赤銅色の皮膚の平らな隆起です。
このように、皮膚や粘膜に皮膚症状が出る梅毒のケースを顕症梅毒と言いますが、実際は潜伏梅毒といった症状が表に現れない場合が大変多いので、感染機会のあった方は検査を受けると良いでしょう。
感染後3年以上経過すると、結節性梅毒疹や皮下組織にゴム腫を生じることがあります。これを第3期梅毒と言います。第3期梅毒は現在ではほとんど見られません。また、さらに時間が経つと梅毒により大動脈炎、大動脈瘤あるいは脊髄癆、進行麻痺などの症状が現れることがあります。これを第4期梅毒と言います。この第4期梅毒も現在ではほとんど見られません。
梅毒の検査には血液検査を行います。また、梅毒の血液検査は病原体に感染してから3週間から6週間後に陽性化するので、6週間後に受けてください。
梅毒は1929年に特効薬である抗生物質であるペニシリンが発見にされてから、梅毒の大流行はなくなりました。ペニシリンが発見されるまでは治療は大変困難であり、末期には神経炎や血管炎を起こしたり、様々な臓器に腫瘍ができ壊死し腐ってしまうこともあります。また、脳や脊髄が侵され痴呆や感情障害などの神経症状を現し、脳梅といわれる人格の崩壊がおきることもありました。現在では梅毒の治療は専門医にかかれば難しいものではないので、早期発見・早期治療を心がけましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
関連の医療相談が20件あります
性行時・感染について
高齢の方と性行為を行った際に、射精時、ゴムの中に血がでていました。 いくまえに、口でしたのですが、その時は出血はありません。 でも、女性が感染する場合はありますか?確率は高いですか?
性器周辺のしこりについて
いつからかなのかは、はっきり覚えていないのですが恐らく昨年の12月あたりから性器付近に小指の第一関節くらいの、しこりのようなものがあります。 出来た当初は痛みがありましたが、腫れが引くと共に痛みが無くなり完治したと思っていましたが、その後は不定期に腫れたり引いたりを繰り返しています。 最近では腫れていても痛みはありません。 比較的に生理前後に腫れていますが、このしこりは梅毒の症状なのでしょうか? それとも、粉瘤や何か別のものの可能性がありますでしょうか? しこりの大きさは、梅毒の症状例の大きさに似ていると感じたのですが…。 昨年の夏頃交際相手が出来るまでの間の数年は全く性行為がありませんでした。 ですが、交際相手の方は特に感染しているような症状はなさそうであり、感染症である場合の感染経路が不明で不安です…。 婦人科なのか、皮膚科なのか受診先がわからずご相談させていただきました。 ご回答いただけますと幸いです。
首筋にしこり
去年付き合ってた彼と最後に感染する行為をしたのが9月末で、その後2、3日から一週間にかけて自転車のサドルで擦れる部分に1cm弱の小豆位のしこりというかおできのような物ができて、擦れる度に痛く、トイレの際にふく部分なので、ヒリヒリしてました。 以前もできたことがあり、その時は自転車に長時間乗るのでそれが原因だったので、放置してたら治ってました。 先月から首筋が痒く、乾燥してると思い、二年前に購入した高保湿クリームがあったのでそれを塗ったら、湿疹のようなものが2つ程でき、触ると痛いです。 ネットで調べていて、梅毒の症状に似ているのではと不安になってきました。 梅毒の検査を受けた方がいいでしょうか?
梅毒の場合血液感染するか
いまクラミジアを治療中で、最近口の中に口内炎みたいなしこりが出来たのでもしかしたら梅毒にもかかっているかもしれないと心配しています。まだ検査していないので梅毒かはわからないのですが、今日擦り傷の怪我をしてしまって、友人に手当をしてもらったのですが、浸出液とか血液とかの問題ありますよね、もし梅毒だった場合友人に移らないか心配で、、
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「梅毒」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。