インタビュー

梅毒とはどんな病気?―早期発見・早期治療が大事!

梅毒とはどんな病気?―早期発見・早期治療が大事!
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

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この記事の最終更新は2015年07月23日です。

「性感染症」というテーマは、日常生活の中ではなかなか話題にしにくいものかもしれません。しかし、性感染症の知識は、私たちがきちんと身につけておかなければならないものです。

さまざまな性感染症について、性感染症学会の代議員としてわが国における性感染症予防・治療を牽引し、ご自身の診療所でも長きに渡り性感染症の患者さんと向き合われてきた尾上泰彦先生に伺います。今回は「梅毒」についてのお話です。

梅毒とは「トレポネーマ・パリダム」という細長いらせん形の細菌によって全身に症状が出る性感染症です。
梅毒の名は、第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ていることから楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれたことが由来です。その後、楊の字が取れ、次第に梅瘡→黴毒→梅毒へと呼ばれるように変わっていったそうです。

また、梅毒はコロンブス一行が1492年に新大陸の発見と共に原住民の風土病だったものがヨーロッパに伝わったと考えられており、「悪魔のお土産」とも呼ばれています。その後瞬く間に全世界に拡がり、日本では1512年に発見され、わずか20年足らずで日本に伝わってきたと言われています。

感染してから3ヶ月までを第1期といいます。感染して約3週間後、病原体が侵入した部位に初期硬結(硬いしこり)ができます。
初期硬結はやがてその中心にびらんや潰瘍をつくります。それらは周囲が硬く盛り上がりますが、痛みやかゆみなどの症状があまりないことが多いです。単発で発生することが普通ですが、オーラルセックスにより複数できることもあります。

これらは、男性の場合は一般的に冠状溝(カリ)、包皮、亀頭部あるいは口唇などに見られます。その後、足のつけ根などのリンパ節に痛みのない腫れが生じます。女性の場合は、大小陰唇、子宮頸部、口唇、咽頭などに症状が見られます。

第1期の症状(男性)その1
第1期の症状(男性)その1
第1期の症状(男性)その2
第1期の症状(男性)その2
第1期の症状(女性)
第1期の症状(女性)
第1期の症状(丘疹性梅毒疹)
第1期の症状(丘疹性梅毒疹)

感染してから3カ月以降を第2期といいます。
第2期に入ってくるとだんだん病原体は局所から血中に浸入して増殖し、全身に広がっていきます。これによって第2期梅毒疹が生じます。第2期の初期には梅毒性のバラ疹が現れます。バラ疹は体幹を中心に顔や手足に見られ、1~2cm大の目立たない淡紅色斑です。バラ疹は自覚症状がみられず、数週間後に自然消失します。感染してから約12週間目には丘疹性梅毒疹(きゅうしんせいばいどくしん)が顔、体幹、手足に現れます。丘疹性梅毒疹は、小豆大からえんどう豆大の大きさで、赤褐色から赤銅色の皮膚の平らな隆起です。

このように、皮膚や粘膜に皮膚症状が出る梅毒のケースを顕症梅毒と言いますが、実際は潜伏梅毒といった症状が表に現れない場合が大変多いので、感染機会のあった方は検査を受けると良いでしょう。

第2期の症状
第2期の症状
第2期の症状(丘疹性梅毒疹1)
第2期の症状(丘疹性梅毒疹1)
第2期の症状(丘疹性梅毒疹2)
第2期の症状(丘疹性梅毒疹2)

感染後3年以上経過すると、結節性梅毒疹や皮下組織にゴム腫を生じることがあります。これを第3期梅毒と言います。第3期梅毒は現在ではほとんど見られません。また、さらに時間が経つと梅毒により大動脈炎、大動脈瘤あるいは脊髄癆、進行麻痺などの症状が現れることがあります。これを第4期梅毒と言います。この第4期梅毒も現在ではほとんど見られません。

梅毒の検査には血液検査を行います。また、梅毒の血液検査は病原体に感染してから3週間から6週間後に陽性化するので、6週間後に受けてください。

梅毒は1929年に特効薬である抗生物質であるペニシリンが発見にされてから、梅毒の大流行はなくなりました。ペニシリンが発見されるまでは治療は大変困難であり、末期には神経炎や血管炎を起こしたり、様々な臓器に腫瘍ができ壊死し腐ってしまうこともあります。また、脳や脊髄が侵され痴呆や感情障害などの神経症状を現し、脳梅といわれる人格の崩壊がおきることもありました。現在では梅毒の治療は専門医にかかれば難しいものではないので、早期発見・早期治療を心がけましょう。

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