インタビュー

関連痛とは? 痛みの場所と原因となるトリガーポイントは異なる場合が多い

関連痛とは? 痛みの場所と原因となるトリガーポイントは異なる場合が多い
木村 裕明 先生

木村ペインクリニック 院長

木村 裕明 先生

この記事の最終更新は2015年09月06日です。

トリガーポイントは、「関連痛」を引き起こすことがあります。つまり、「痛みの原因となる部分」と「患者さんが実際に痛みを感じている部分」が異なるのです。これはどのような仕組みで起こり、また診断はどのように行われるのでしょうか。引き続き、木村ペインクリニックの木村裕明先生にうかがいました。

関連痛のメカニズムとしては、「収束―投射説」や「サイレント・シナプス説」などが提唱されていますが、まだ正確にはわかっていません。筋膜の連鎖も関連していると考えています。

トリガーポイントによる関連痛は、非常に重要な問題です。なかなか改善しない痛みの場合、この関連痛とトリガーポイントが離れているケースが多く見られます。関連痛とトリガーポイントが一致している場合は、患者さん自身でマッサージをしたりして治ってしまうこともありますし、治療するとしても簡単です。

問題は、トリガーポイントと関連痛が離れている場合です。患者さんが訴える痛みの場所と原因となるトリガーポイントが離れています。患者さんの訴えを聞いても、そのポイントは分かりません。では、この親玉のトリガーポイントをどうやって見つければよいのでしょうか。

まず、「関連痛パターン」というものがあります。ここには、関連痛とトリガーポイントのよくある関係が図示されています。そのほかに、私の所属しているMPS研究会では、動作分析によって罹患筋(痛みの原因のある筋肉)を診断する方法が研究されています。罹患筋がわかれば、その中にあるトリガーポイントの治療はそれほど難しくありません。

トリガーポイントは、症状の連鎖を引き起こす点にも特徴があります。トリガーポイントを治療せずに放置すると、筋膜が連続しているその他の部分にも緊張が生じて新たなトリガーポイントを生み、症状を複雑にし、長引かせることがあります。この連鎖を防ぐために、早期にトリガーポイントの治療を行うことが重要なのです。

  1. 発症時の様子や日常生活の様子などを聴取する。受傷機転や発症要因から罹患筋を推測する。
  2. 疼痛部位(自発痛・運動痛)を詳しく聴取して図示する。関連痛パターンから罹患筋を推測。
  3. 痛みが発生する状況を聴取する。痛みが発生する姿勢や動作なとから罹患筋を推測する。
  4. 罹患筋が特定できたら、触診で筋硬結と圧痛を指標にTPを同定する(トリガーポイントを見極める)。その部分にエコーを使い筋膜が重積(厚くなっていること)している部分に局所麻酔薬または生理食塩水を注入する。

このほかに重要なことは、トリガーポイントによるものでない「本物の神経痛」を除外することです。本物の神経障害は、日内変動(一日のうちに症状が変動すること)がなく、姿勢や動作によって痛みの程度が変わりません。また必ず神経の機能低下が持続的に見られます。神経の機能低下とは、運動神経の機能低下による麻痺、感覚神経の低下による知覚低下などです。

時間によって痛かったり改善したり、また、前述の機能障害をともなわない痛みは、本物の神経痛ではなく関連痛である可能性が高いと思われます。世間には、このようないわば「なんちゃって神経痛」が多くみられます。具体的には、以下のものです。

記事1:トリガーポイントとは?―原因不明の痛みの大半はトリガーポイントにある
記事2:関連痛とは? 痛みの場所と原因となるトリガーポイントは異なる場合が多い
記事3:トリガーポイントへの注射。生理食塩水の注入が効果的
記事4:トリガーポイントの治療。認知行動療法につなげ痛みをなくす
記事5:筋膜に着目したことが原点。筋膜間ブロック(スキマブロック)からスタートした筋膜性疼痛症候群の新しい治療
記事6:生理食塩水で筋膜をはがす、リスクの少ない新たな治療法
記事7:筋膜リリースの普及―生理食塩水によるエコーガイド下筋膜リリースが痛みをなくす
記事8:靭帯や腱などの結合組織(Fascia)への治療も効果的。筋膜リリースからFasciaリリースに注目が高まる

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