インタビュー

子どもが鼠径ヘルニアになったときの治療法・対処法

子どもが鼠径ヘルニアになったときの治療法・対処法
中村 晶俊 先生

飯塚病院  小児外科部長

中村 晶俊 先生

この記事の最終更新は2016年02月08日です。

小児の外科手術としてもっとも多いのが鼠径ヘルニアです。子どもの急な異変に戸惑うことも少なくないでしょうが、そのようなときはあわてずにリラックスさせることで症状が治まることもあるといいます。子どもが鼠径ヘルニアかもしれないと思ったときの治療法・対処法について、飯塚病院小児外科部長の中村晶俊先生にお話を伺いました。

ヘルニアは、ひどくなることもありますが、リラックスするだけで元に戻ることも少なくありません。ヘルニアが起こると、お子さんは痛みのため泣いたり不機嫌になったりします。そのようなときには抱っこなどをして泣き止ませることで、一時的に膨らみが治まることがあります。

たとえば、しばしばみられるのがドライブによる事例です。これは実際に飯塚病院でもあることですが、「緊急で受診します」と連絡が入って外来で待機していると、病院に着いたときには膨らみが戻っていたというようなことはよくあります。その方は車で数十分ほどの遠方からお子さんを乗せて来られたのですが、その間のドライブがちょうどいいゆりかご状態となって、ウトウトとしてリラックスして治まったというようなケースです。これは飯塚病院だけでなく、小児外科の先生ならおそらく経験されていることですので、他病院でもこのような説明を受けることがあるでしょう。

ただし、激しく痛がる・発赤がある・嵌頓(かんとん:腸など腹膜から出た臓器が元に戻らなくなった状態)や血行障害を起こしているようなときには元に戻らない場合があります。そういった病状のときには速やかに病院を受診してください。

些細なことであれ、何か異常を感じたときには、早めに医療機関を受診してください。その際、小児外科が近くにあれば小児外科を受診することをお勧めします。

嵌頓を起こして飛び出した腸などが血行障害を起こして壊死(えし)しているようなときには不可能ですが、それ以外の場合は徒手整復(としゅせいふく)といって、手を使って突出した臓器をおなかの中に戻す施術を行うことがあります。小児外科の先生ならうまく戻すことができます。ただ注意しなければならないのは、前述のとおり嵌頓を起こしているなど、戻してはいけない病態のこともあるということです。その点を見極めることが重要になります。

緊急手術を行うかどうかについては、ヘルニアが膨らんだままになっていた時間の長さと、膨らんだ部分の状態を診て判断します。症状が出てから6時間を過ぎても膨らみが治らないような場合には、緊急手術を検討します。

そのときはお子さんの一般所見(医学的な知見に基づいた判断)に加えてレントゲン撮影を行って腸閉塞の状態を確認し、局所部分の炎症や発赤の有無で血行障害が起きていないかを確認します。膨らんでいる時間が長くても、ヘルニア部分の締めつけがゆるい場合などは、必ずしも緊急手術の必要はありません。その辺りについては過去の症例やお子さんの状況を見極めながら、我々小児外科医が判断していくことになります。

ともあれ、異常を感じたときには、まずかかりつけの小児科の先生に相談するようにしてください。日頃から小児外科を受診されているようであれば、直接小児外科に行かれるといいでしょう。なお、飯塚病院の小児外科は予約不用ですので、お電話をしていただいたうえで直接来院されても問題ありません。

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