小児の外科手術としてもっとも多いのが小児鼠径ヘルニアです。最近、小児鼠径ヘルニアの手術はより低侵襲(からだに負担の少ないもの)となり、術後の傷跡も小さくてすむようになりました。小児鼠径ヘルニアの手術療法について、飯塚病院小児外科部長の中村晶俊先生にお話を伺いました。
小児の鼠径ヘルニア治療の基本は手術です。ただ、ヘルニアの膨らみは自然に元に戻ることもありますので、しばらく経過を観察することもあります。およそ生後4~6か月くらいまで様子をみるのですが、その間に自然に腹膜の穴が閉じて治るお子さんもいらっしゃいます。飯塚病院では生後6か月くらいまで経過をみて、それでも治らないような場合に手術の適応ということになります。(※詳細は記事2『子どもが鼠径ヘルニアになったときの対処法』)
鼠径ヘルニアの手術は、従来から行われている鼠径部小切開による手術と腹腔鏡手術の2種類があります。最近では多くの施設が腹腔鏡を使った手術を行っています。
腹腔鏡手術は、おへそから3ミリほどの内視鏡(カメラ)を挿入し、おなかの脇のほうから2ミリほどの操作鉗子を挿入して、おなかの中を観察しながら行います。
おなかの中の臓器が飛び出している穴の入り口(根元)を、糸のついた特殊な針でぐるりと一周させて縛る手術です。糸を通す場所が決まっており、ご家族の方々には、「巾着袋などを作るときに糸を通してたぐり寄せるような感じの手術です」と説明しています。
以前は、おなかの部分を2センチほど切開して行う手術が行われていましたが、1995年に徳島大学の先生が考案された腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(LPEC法:Laparoscopic percutaneous extraperitoneal closure)という手術法が普及し、現在は大半の施設で内視鏡を使った手術が行われるようになりました。
鼠径部小切開による手術では、おなかの中に手術器具などの器材を入れなくて済むというメリットもありますが、鼠径部小切開手術と腹腔鏡手術それぞれのメリットとデメリットを差し引いても、腹腔鏡手術のメリットのほうが優れているといえます。しかし、親御さんによっては、それでも鼠径部小切開手術を希望される方もおられます。そういう場合は、鼠径部を小切開して開腹による手術を行っています。
整容性(見た目)の面では腹腔鏡のほうが優れていますが、どうしてもおへその傷はついてしまい、手術直後に若干の痛みがあるようです。鼠径部を少し切開する手術のほうが、若干ですが手術直後の痛みが少ないのかもしれません。ただし、どちらの手術法も退院後はあまり痛みを訴えず、普段通りに生活できるお子さんが大半です。
腹腔鏡を使った手術では、鼠径部小切開の手術に比べて手術後の回復がやや遅い印象があります。そのため、大多数の施設では腹腔鏡手術を日帰りで行うことが難しく、およそ2泊3日の入院期間を設けて行われている施設が多いのが現状です。一般的な流れとしては、手術の前日から入院して翌日に手術を受け、その次の日の朝にガーゼの付け替えをして退院という経過をたどります。
一方飯塚病院では、様々な工夫をすることにより、2000年頃から鼠径部小切開での鼠径ヘルニア手術を日帰りで行うことができるようになっています。お母さん方は、入院する子のほかにもお子さんがいたり、家族の世話をしなければならなかったりと、一人の子が入院することでいろいろと心配事や負担が出てきます。自分の仕事のことや、休みのことなど調整しなければならないことも出てくるため、それが負担になるようです。筑豊地区でも核家族化が進んでいるため、小さな子どもを預けることができないという方もおられます。日帰り手術であれば、このようなの問題をクリアすることができるのです。
飯塚病院では2009年より腹腔鏡手術を導入しましたが、腹腔鏡手術ということと、おへその痛みを訴える患者さんがいたことなどにより、導入初期は手術後一泊の入院をしていただいていました。しかし、2014年からは様々な工夫を施すことにより、1歳以上であれば腹腔鏡手術でも日帰り手術が可能となりました。
とはいってももちろん、手術のあと、やはり心配だという場合にはいつでも泊まれるように準備だけはしておきます。これはお子さんの状態とお母さんの心配具合などをみながら判断しています。
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