インタビュー

杏林大学医学部付属病院の魅力と特色

杏林大学医学部付属病院の魅力と特色
岩下 光利 先生

久我山病院 病院長、杏林大学医学部付属病院 元病院長、杏林大学医学部産科婦人科学教室 元主任教授

岩下 光利 先生

この記事の最終更新は2016年08月01日です。

杏林大学医学部付属病院は、多摩地域唯一の大学医学部付属病院本院であり、多摩地区最大の1,153床を有する特定機能病院です。また、高度急性期病院として24時間体制で一次救急・二次救急に対応し、高度救命救急センター・総合周産期母子医療センター・脳卒中センターなど、緊急を要する各種疾患にもいつでも対応できる体制を整備しています。病院長の岩下光利先生に杏林大学医学部付属病院の特色についてお話をうかがいました。

杏林大学医学部付属病院は東京都のほぼ中央に位置する北多摩南部地域にあります。この地域には多くの人出で賑わう都内有数の人気スポット・吉祥寺があり、周囲に目を向ければ、井の頭公園など緑豊かな武蔵野の面影に触れることのできる施設も点在しています。

その中で杏林大学医学部付属病院は、多摩地区だけでなく隣接する世田谷・杉並などを含む広いエリアを代表する医療機関として、多くの患者さんを受け入れています。

杏林大学医学部付属病院を利用する患者さんが満足のいく治療を受けられるために、最新の医療機器を導入し良質な先端医療を提供するだけでなく、アメニティーの充実にも努めています。

具体的には2つのコンビニエンスストア・カットショップ・レストラン・コーヒーショップ・ギフトショップ・介護ショップを備え、初めて訪れる方のための「院内ご案内センター」や、ゆったりとくつろいでいただける「休憩所」「ギャラリー・アートスペース」「瞑想室」を設けており、外来受診や入院中の方がご利用いただける図書室も設置しています。

介護ショップ

図書室

カフェスペース

敷地内には多くの樹木が植えられ、入院中の方には武蔵野の自然に囲まれた心の安らぎを得られる医療環境の中で快適に過ごしていただくことができます。

杏林大学医学部付属病院は下記のような変遷を経て現在の形になっています。

1954年(昭和29年)

1月

母体となる三鷹新川病院を開院

1970年(昭和45年)

4月

杏林大学医学部を開設

 

8月

医学部付属病院を開院

1979年(昭和54年)

10月

救命救急センターを設置

1993年(平成5年)

5月

旧救命救急センターを処分し、新たに救命救急センター棟を開設

1994年(平成6年)

4月

特定機能病院の承認

 

12月

救命救急センターが厚生省から高度救命救急センターに認定

1995年(平成7年)

11月

エイズ診療協力病院に認定

1997年(平成9年)

10月

総合周産期母子医療センターを開設

1999年(平成11年)

1月

 

新たに外来棟を開設

 

2000年(平成12年)

12月

新第1病棟を開設

2001年(平成13年)

1月

新たに放射線治療・核医学棟を開設

2004年(平成16年)

3月

日本医療機能評価機構を受審し認定

2005年(平成17年)

5月

中央病棟を開設

 

6月

外来化学療法室を開設

2006年(平成18年)

5月

1次・2次救急初期診療チーム、脳卒中治療専任チーム発足

 

11月

もの忘れセンター開設

2007年(平成19年)

8月

新外科病棟を開設

2008年(平成20年)

2月

がん診療連携拠点病院に認定

 

4月

がんセンター開設

2012年(平成24年)

10月

新第3病棟を開設

2013年(平成25年)

8月

第2病棟中央通りが開通

2014年(平成26年)

3月

日本医療機能評価機構を受審し認定

私たちは「あたたかい心のかよう、良質な医療を患者さんに提供します」を病院の理念として、地域にお住まいの皆さまが安心して頼れる病院となることを目指しています。

その基礎となっているのは職員同士のコミュニケーションです。ひとことで言えば仲が良く、チームとしての強い結束があります。このチームワークによる質の高い医療の実践、医療安全に対する最善の努力、地域医療の推進、良き医療従事者の育成、先進的な医療の実践と開発という5つの基本方針を掲げ、安全で良質な地域への医療の提供を目指して、職員一同一丸となって取り組んでいます。

杏林大学医学部付属病院は厚生労働省から「特定機能病院」として承認を受けています。特定機能病院には高度医療の提供能力をはじめとするさまざまな要件が求められますが、私たちは先端医療を担うと同時に医療安全も決して疎かにしてはならないと考え、そのための病院組織の構築や職員研修を行っています。

具体的には「リスクマネージメント委員会」「医療安全推進室」を設置し、インシデント(医療事故につながるおそれのある事案の原因分析や再発防止策の立案など)に取り組んでいます。このことが実際に病院内での「風通しの良さ」にもつながっており、情報がリアルタイムに共有されています。たとえば手術中に出血が多い患者さんがいるなど、少しでもリスクのある事案が発生している場合には、病院長である私のところへ直ちに報告が上がってくるようになっています。

地域医療施設との連携においては、他の大学病院にみられるような大学医師会を持つのではなく、三鷹市医師会の一員となって高度急性期から在宅医療までの切れ目のない連携を目指しています。院内では「患者支援センター」の機能を大幅に拡充し、近隣の医療施設からの紹介で当院を受診される方がスムースに診察を受けられるよう、また、入院治療が必要な方や入院中の方が退院する際に親身になって支援できるよう、病院事務・看護部・医師・医療ソーシャルワーカーなど多職種にわたる職員が連携して患者さんを支援しています。

杏林大学救命救急センターは、厚生労働省が行う評価において規模・内容ともに全国トップクラスとなっています。

救命救急センターでは、1次・2次救急の対応を専門とする救急初期診療チーム(ATT)と3次重症救急対応を専門とする外傷・集中治療専門チーム(TCC)の連携により、「杏林方式」とも呼べる独自のER型救急医療を構築しています。26床のICU(集中治療室)に加え、都内では唯一となる4床の熱傷センターを併設しているのも特徴です。

またドクターカーとヘリポートを設置しており、島しょ地域、多摩山間地域で発生した急病患者や周産期患者の受け入れも可能です。

杏林大学医学部付属病院は東京都災害拠点病院として大規模災害発生時には災害拠点として緊急対応を行う役割を担っていますが、このヘリポートの設置によって日本各地の救命センターからの超重症患者の受け入れもできるようになっています。

ドクターヘリによる救急患者搬送の様子

杏林大学医学部付属病院の「母体救急対応総合周産期センター」は、多摩地区におけるふたつの総合周産期センターのひとつです。「最先端の医療を地域に提供することで、日本の周産期医療の発展に貢献する」という理念を掲げ、母体および胎児、新生児の一貫した管理を24時間体制で行っています。

母体搬送では専属の助産師コディネーターが24時間体制で搬送コーディネートに当たっているほか、救命救急センターとの連携のもと、産科疾患以外の母体救急疾患にも対応できる体制を整えており、特殊外来として毎週実施する「ハイリスク妊娠外来」「超音波・遺伝外来」や、月1回の「遺伝相談外来」も行っています。

杏林大学医学部付属病院では1999年に日本で最初の眼科総合診療センター「杏林アイセンター」を設置しました。アイセンターでは「眼科のあらゆる疾患に対して高い水準で対応する」という理念のもと、白内障緑内障・角膜移植・網膜剥離糖尿病網膜症・黄斑疾患・ブドウ膜炎・視神経疾患・斜視弱視・ロービジョンなどあらゆる疾患に対応しています。

多摩地域は東京都区部と比較して医療資源が十分とはいえませんが、見方を変えると研修医が経験できる症例数が多く、臨床技能の向上に適した環境が整っています。

また、2016年新設の井の頭キャンパスに移転してきた保健学部・総合政策学部・外国語学部の各学部と医学部の共通授業を通して、幅広い知識と教養を身につけ、国際感覚を持った世界的に通用する医師の養成、海外医療施設との連携を通した国際交流の活性化を目指しています。

私自身、慶應義塾大学や東京女子医科大学にも籍を置いていたことがあり、それぞれに大学のカラーというものを肌で感じてきました。この杏林大学医学部付属病院は他の大学から来た人に対しても分け隔てなく、非常にフレンドリーに同じ仲間として受け入れるという風土があり、各教室の教授と学生の間にも和やかな雰囲気があります。

少子高齢化と医学部定員増設に伴い、もうすぐ医師過剰時代が来ます。そのなかでは人間性に富み、臨床技術の優れた医師が求められます。私たちはそのような医師を育てる医学教育を行っていきたいと考えています。

 

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