院長インタビュー

チーム医療で地域への貢献をめざす北部地区医師会病院

チーム医療で地域への貢献をめざす北部地区医師会病院
諸喜田 林 先生

北部地区医師会病院 院長

諸喜田 林 先生

この記事の最終更新は2018年01月03日です。

公益社団法人 北部地区医師会 北部地区医師会病院は沖縄県名護市にある急性期病院です。近隣の沖縄県立北部病院と連携をはかりながら、健康診断や急性期・慢性期疾患の治療を提供することで、同県の北部地区全域の医療をカバーしてきました。また、医師会によって設立された医療機関として地域診療所の後方支援という役割も担っています。今回は、同院の取り組みや今後の展望について、院長である諸喜田 林先生にお話を伺いました。

当院が設立されたのは、1991年のことです。それまで沖縄県の北部地域には沖縄県立北部病院(旧沖縄県立名護病院)しかありませんでした。北部地域の方々は、高度な医療機関を求め中南部の病院へ受診することが多く、患者さんやご家族にとって精神的・経済的に大きな負担がかかっていました。そのような状況を打破するため、北部地区医師会によって開設されたのが「北部地区医師会病院」です。

設立以降の約10年間は苦しい経営状況にありましたが、2006年には近隣に外来での血液透析療法を提供する「ちゅら海クリニック(腎臓病医療センター)」を、2010年には隣に心臓血管治療に特化した「北部医師会附属病院(心臓血管センター)」を開設し、医療機関としての機能の拡充を図ってきました。

診療科は、消化器内科・外科、呼吸器内科、内分泌代謝科、整形外科といった9診療科で診療を行っています。また、2017年に新設された皮膚科は北部地域で唯一の入院治療を提供する皮膚科として、周辺住民の診療にあたっています。

また、健康管理センターを有する当院は、がん検診や生活習慣病健診、人間ドックといった健康診断にも力を入れてきました。当センター内での健診にとどまらず、県北部エリアの各地域に健診(検診)車を派遣し、10市町村にわたり住民健診を行っています。

消化器内科では、在籍する7名の医師(2017年12月時点)が、胃・大腸・胆のう・すい臓など幅広い消化器系疾患に対応しています。検査にも力を入れており、2017年時点で年間平均8,000件の内視鏡検査を行ってきました。一人当たり年間1,500~2,000件の内視鏡検査を行うことも可能なため、この分野での経験を積みたい若手医師にとっても、当院の消化器内科はよい環境であると思います。

消化器内科と同じく消化器外科にも7名の医師(2017年12月時点)が在籍しています。この診療科では、低侵襲で術後の回復も早い腹腔鏡手術を積極的におこなっています。また、肝臓がんやすい臓がんの手術にも力を入れています。

がん治療の分野では、2016年に化学療法室を増築し消化器がん乳がんを中心としたがん治療のほか、リウマチなどの自己免疫治療も行っており、当院の特色のひとつとなっています。2017年時点で年間平均約1,000件の外来化学療法をおこなっています。

呼吸器内科では、3名の医師(2017年12月時点)が肺炎気管支炎喘息といった幅広い呼吸器系疾患の診療にあたってきました。グラム染色に造詣の深い医師が在籍しており、当院の特色のひとつとなっています。グラム染色とは、細菌を染色しその種類を特定するための技術です。また、この診療科は一般的な呼吸器系疾患や肺がんの治療に加え、間質性肺炎や結核といった特殊な疾患にも対応しています。

私が院長になって最初に着手したのは、事務スタッフがしっかりと病院をマネジメントできる環境を整えることです。具体的には、医師やコメディカルスタッフなどとも職種間を越えて協同し、働いていけるような環境づくりに取り組みました。事務スタッフがしっかり病院をマネジメントすることができれば、院内が一丸となった医療提供が行えるのではないかと考えたからです。

このような環境を実現させるために、経営推進室という部門をつくりました。

この部門に所属するスタッフは、院内でうまく機能していない部門の支援を主な仕事とします。たとえば、情報発信ツールとして長年の懸念事項であったホームページ制作も推進室により、2016年11月にリニューアルすることができました。

また、医療保険診療を行っているなかで、コンプライアンス強化を目的に医療機関の機能や設備、診療体制など改定毎に変更が生じるさまざまな基準を管理する、施設基準管理室という部門を立ち上げました。

昨今の病床機能転換の動きに合わせ地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟の開設と運営を院内各部署と共同してプロジェクトを実行しました。

現在、事務スタッフは病院のマネージャーとしてしっかりと力をつけており、当院の財産になっています。また、当院は事務スタッフの新卒入職者の教育にも力を入れています。

北部地区によりよい地域包括ケアシステムを構築していくために、当院も在宅ケアに関わる必要があると考えています。

現在北部地区には、在宅ケアを提供する施設・事業所が不足しているため、自宅での療養を希望される患者さんはなかなか退院が難しいという状況にあります。

がん治療を提供する当院は、終末期にある多くの患者さんに関わっています。自宅で最期のときを迎えたいと願う患者さんも多く、そのような方に退院いただけない現状を非常に心苦しく感じています。このような背景があり、当院も在宅ケアを提供していくべきだと考えるようになったのです。

今後は、当院の在宅ケアスタッフがご自宅に伺う体制を基本としながら、週に1、2日程度のペースで主治医や担当看護師が訪問診療を行う在宅ケアシステムを検討しています。このシステムを実施できれば、当院は検診から在宅診療までトータルな医療ケアを提供する医療機関となります。今後も、こういった医療体制を整備することで地域の包括ケアシステムの構築に貢献したいと考えています。

当院では診療科ごとに医局を設けず、院内に一部屋のみ控室を設けています。医局とは、医師が待機したり、研究を行ったりする場所のことです。一つの部屋に全診療科の医師が集まる環境にあることで、診療科の垣根を超えて医師同士がなんでも話し合える環境ができています。

また、当院には院長室がありません。院長である私もほかの医師たちと同じように、控室の自身の机に向かっています。専門分野や役職の違いによる壁をつくらないことが、院内の一体感を生んでいると感じています。

当院はこれからも医師・コメディカルスタッフ・事務スタッフが一丸となって取り組むチーム医療を実践し、質の高い医療提供をめざしていきます。

私は医療の主役は患者さんであると考えてきました。医療の中心には常に患者さんのかかえている疾患があり、それを治療するためにさまざまな医療スタッフが力を合わせていくことが、本来医療のあるべき姿なのです。

当院はこれからも、地域に暮らすみなさまを主役にした医療の提供に努め、患者さんの気持ちに寄り添う医療を実践してまいります。

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