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小児がんは子どものときだけの病気ではない? 大人になった患者さんの自立をサポートするために

小児がんは子どものときだけの病気ではない? 大人になった患者さんの自立をサポートするために
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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この記事の最終更新は2019年06月24日です。

子どものがんである「小児がん」の患者さんやご家族がかかえる問題は、必ずしも治療が終われば解決するわけではありません。小児がんの患者さんや経験者は、成長に伴って、新たな治療を行わなくてはいけないケースや、生活上の問題をかかえるケースもあります。

認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワークは、小児がんの患者さんや経験者、ご家族のサポートを行っています。今回は、同法人の理事長である松井 秀文さんに、大人になった患者さんへのサポートについてお伺いしました。

小児がんは、必ずしも治療して終わりというケースばかりではありません。小児がんの患者さんや経験者が、成長に伴って、治療や生活上の新たな問題をかかえるケースもあります。なかでも、成長に伴い、問題になるものが「晩期合併症」です。

治療終了後に現れる可能性がある小児がんに特有の合併症が、晩期合併症です。近年、治癒率の向上に伴い、晩期合併症が増えているといわれています。

晩期合併症とは、成長や時間の経過に伴い、がんからの影響、薬物療法や放射線治療などからの影響によって発生する合併症です。発生しうる晩期合併症には、主に以下のようなものがあります。

  • 成長・発達への影響:低身長、肥満、やせ、知能・認知力、心理的・社会的成熟
  • 生殖機能への影響:妊娠や子孫への影響
  • 免疫機能の低下
  • 臓器機能への影響:心機能、呼吸機能、内分泌機能、消化管機能
  • 二次がん:治療後時間が経過してから新たに発症するがん

など

これらの合併症によって、小児がんの患者さんのなかには、成長に伴い進学や就職、結婚などの問題と向き合わなくてはいけない方もいらっしゃいます。

私たちは、大人になった小児がんの経験者が自立できるよう支援する活動にも注力していきたいと思っています。現状では、奨学金制度や就労移行支援を行っています。

私たちは、経済的理由により進学や就学が難しい小児がん経験者の大学生に対して、「GRN小児がん経験者奨学金制度」という、返還不要の給付型奨学金制度を設けています。

小児がん経験者奨学金制度

子どもたちのなかには、病気の経験から「将来は医師や看護師になりたい」と夢を持つ子もいます。奨学金によって自分の夢を諦めることなく学ぶことができる環境を作ることが将来の自立につながると信じ、このような制度を設けています。

小児がんの経験者は、晩期合併症によって障害者手帳を持つ方も多くいらっしゃいますが、合併症を持ちながらも障害者の基準に達しないために障害者手帳をもらうことができない方もいらっしゃいます。

障害者手帳を持つ方は、障害者雇用で企業に就職することができるケースもあります。一方、合併症を持ちながらも障害者手帳をもらうことができない方は、仕事に就くことが難しかったり、職場での理解が得られなかったり、仕事を続けることが難しかったりするケースもあります。

当法人では、2016年より小児がん経験者に対する「職場見学会」や「職場体験学習」を行っている企業への橋渡しを行っています。2017年、2018年には、小児がん経験者それぞれ2名の方が、私たちのサポートによって就職を果たしました。

就労移行支援

職場見学会を経て就職が決まった小児がん経験者の声

私は4歳という年齢で悪性リンパ腫という血液のがんを発症いたしました。19歳で社会に出て、働き始め、サービス業や販売業、製造業などの職種で就労したのですが、治療の影響で、白血球の減少による体力の低下や、体の左右で放射線をあてた量に違いがあるために足の長さなど骨の形成に左右でずれがあり、長時間立っていると、腰や背中などに痛みを感じてしまうなどの理由から継続することが困難でした。

そのため、それらの症状を治すことはできないかと、数年ぶりに病院を受診したのですが、治すことは難しいことと、障害者手帳を取得することも難しいと告げられました。

そして、小児がん経験者は治療終了後、何年も経ってからがんが再発したり、当時の治療が原因で、別のがんや難病を発症する可能性があるなどの理由から、今後は定期的に通院してほしいとも告げられました。

自分は同世代の男性のように、あまり職種にはこだわらず、残業や休日出勤などの時間外勤務もこなすような働き方は難しいと思い、そして、障害者手帳を取得できないことを踏まえ、障害者手帳を所持していなくても応募が可能な障害者雇用にカを入れている事業所を、時間がある際に少しずつ探し始めました。

地元である鹿児島ではなかなか見つからず、同じ九州の地方都市である福岡でも私が探した限りでは、見つかりませんでした。 関東のほうまで幅を広げ、数社だけ応募が可能な事業所を見つけることができ、それに並行して小児がん経験者のことも定期的に調べているなかで、A社に職場見学を希望させてもらうことができると知りました。ゴールドリボン・ネットワークに連絡し、A社に職場見学をさせてもらうために動いていただきました。

そして、面談や職場体験実習を経て、無事入社させていただくことができました。現在は職種が事務職であることや勤務時間が一般的な8時間労働と比べ、7時間と短時間であること、働く際のサポートが手厚いことなどから安心して就労できていると思います。 

(認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワークご提供)

認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワークの理事長である松井 秀文さん
認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワークの理事長である松井 秀文さん

私たちゴールドリボン・ネットワークは、小児がんの患者さんや経験者が自立できるよう、今後もサポートを続けていきたいと思っています。近年では、病院を中心に小児がんの長期フォローアップを行う体制が築かれつつありますが、当法人でも進学や就労の支援に力を入れていくつもりです。

小児がんの患者さんや経験者が大人になったときに自立した生活を送ることができるように、今後もサポートしていきたいと思っています。

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