独立行政法人 国立病院機構 神奈川病院(以下、神奈川病院)は、神奈川県秦野市に位置し、高齢化の進む地域の医療を支えています。地域医療支援病院として、よりよい医療サービスを地域の皆さんに提供するため、スタッフ一丸となり診療に取り組んでいます。同院は、傷痍軍人神奈川療養所として創立され、その後、結核の患者さんを受け入れるようになりました。そのような経緯から呼吸器疾患の診療を特に得意とする病院でもあります。
今回は、院長である橋詰 壽律先生に、同院の診療体制の特徴や、地域における取り組みについてお話をお伺いしました。
当院は、19の診療科を有する総合病院として、地域に根ざした医療サービスの提供を行っています。また、救急医療にも積極的に取り組み、病気や外傷による救急患者さんを多数受け入れてきました。
ここでは、特に当院が力を入れている診療内容についてご紹介します。
当院は、傷痍軍人神奈川療養所として創立され、その直後から主に結核の患者さんの受け入れを開始しました。このような背景があり、特に呼吸器疾患の診療に積極的に取り組んできました。
当院では、呼吸器内科と呼吸器外科が連携しながら、呼吸器疾患全般の治療に取り組んでいます。具体的には、肺がんに対する手術や外来化学療法、気胸や慢性閉塞性肺疾患に対する治療、呼吸器リハビリテーションなどを行っています。
呼吸器外科には日本呼吸器外科学会認定専門医が2名在籍しており、年間150件程の手術を行っています。なかでも肺がんの手術がもっとも多く、年間55件程実施しています(2022年時点)*。さらに、早期の肺がんの発見に有効とされる、肺がんに対するCT検診も行っています。
また、当院は結核を専門的に診ることができる病院のひとつとして、重症例にも対応しています(2022年時点)。
*2022年の手術数は130件、肺がんの手術数は55件
当院の整形外科では、各種外傷や骨折から変形性疾患(変形性股関節症、変形性膝関節症)まで、幅広い病気を取り扱っています。特に、年齢的な変化から生じる変形性疾患に対する治療を積極的に行っており、必要があると認められた場合には人工関節置換術にも取り組んでいます。当院が立地する秦野市は高齢の方も多く、運動器の障害による転倒などを防ぐための運動療法など、地域のニーズに応える診療を心がけています。
なお、整形外科で治療を行った後、必要があればリハビリテーション科でのリハビリを実施しています。リハビリテーション科には、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が在籍しており、運動療法のほか、物理療法、呼吸法の指導などに対応しています。
当院の小児科は、小児疾患全般の診療に取り組んでいます。特に、アレルギー科の医師と連携しながら、喘息、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などの小児アレルギーの診療に力を入れています。秦野養護学校と隣接しているといった立地を活かして、養護学校に通学していただきながら小児慢性疾患の治療を行うこともあります。
また、当院には“療育指導室”と呼ばれる部門があります。療育指導室では、重症心身障害児(者)病棟や小児科病棟入院者に入院されている患者さんの療育活動や福祉全般の相談などを行い、患者さんとそのご家族をサポートしています。
当院は、地域の皆さんの健康リテラシーの向上に寄与するため、定期的に市民公開講座を開催しています。取り上げるテーマはさまざまですが、たとえば、脳卒中など病気の原因や予防法などについてお話しすることがあります。市民公開講座は公民館を借りて開催しており、ご参加くださった皆さんに好評をいただいています。
また、“秦野市市民の日イベント”など、自治体主催のイベントに出展させていただくこともあります。このような機会には、地域の皆さんに医療をより身近に感じていただくため、簡単な健康チェックや体験コーナーを設けています。
地域医療支援病院として、地域医療に貢献することは、当院の大切な使命であると考えています。地域の皆さんへよりよい医療サービスを提供するためには、地域の医療機関との連携体制が大切です。当院では、地域医療連携室が中心となり、連携を進めています。
たとえば、連携を強化するため、地域のクリニックの先生、コメディカルや介護施設の職員の方との症例検討会を定期的に開いています。このように情報を交換する場を設けることで、円滑にコミュニケーションをとることができる関係づくりに努めています。
当院は、地域医療支援病院として、地域住民の皆さんや地域の医療機関の先生たちのご協力のもと、地域に根ざした医療サービスを提供しています。今後も、病院の理念である“地域の皆様から信頼される病院づくり”と“良質な医療の提供”を心がけながら、診療に尽力していくつもりです。また、今後は、新たな病棟を建設する予定もあります。地域の皆さんに安心してご来院いただける病院を目指して、今後もスタッフ一丸となり努力していきます。
当院は、診療科間や職種間の垣根が低く、スタッフ同士の仲がよい点が特徴です。このようなアットホームな雰囲気は、当院にいらっしゃる患者さんの安心感にもつながるのではないでしょうか。これから入職される皆さんにも“和”の精神を大切にしながら働いてほしいと思います。
独立行政法人国立病院機構神奈川病院 院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。