院長インタビュー

下部消化管および泌尿器の病気の治療で熊本から全国に医療を提供する、大腸肛門病センター高野病院

下部消化管および泌尿器の病気の治療で熊本から全国に医療を提供する、大腸肛門病センター高野病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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熊本市の大腸肛門病センター高野病院は、地元熊本はもとより、全国でもその名を知られた大腸肛門病治療の専門病院です。大腸がんのほか、慢性的な下痢や腹痛を引き起こす炎症性腸疾患(IBD)など、肛門の合併症につながりやすい病気の治療にも力を入れ、最近では便失禁の治療に再生医療を取り入れた画期的な取り組みでも注目を集めました。

院長の髙野(たかの) 正太(しょうた)先生は肛門の疾患について国内医療者の理解が進んでいない現状への懸念から、オンライン診療などを駆使した広域の医療提供にも積極的です。髙野先生にお話を伺いました。

当院は1981年に肛門科の病院として誕生し、2年後には大腸肛門病センターを設置しました。以来、熊本県の皆さまの大腸肛門分野を中心に専門医療を提供し、現在は下部消化器および泌尿器へと診療の幅を広げています。

わが国では少子高齢化や人口減少への懸念が年々高まっていますが、当院がある熊本市は、他県の中小自治体に比べると人口の減り方がやや緩やかです。

それどころか、市の北東部と接する菊陽町に最近、半導体の受注生産で世界最大手の台湾企業TSMCが進出したことで、関連企業の集中も相まって近隣に移り住む人々が増えています。

そうした状況下で、今後も当院に寄せられる期待は大きいものと予想され、県内の大腸肛門病専門病院の1つとして、また気を引き締めて病院機能の一層の充実に努めていきたいと思っています。

当院の全体的な特徴をひと言で表すなら、予防から発見、診断、治療、緩和、看取りまで、大腸肛門病にかかわるすべてのステージをくまなく診ることができる点にあると思います。予防と発見でいえば、定期健診における便潜血の検査や、過疎地までバスで移動しての大腸がん検査にも力を入れるなど、なるべく早期から治療が始められる体制を整え、県民をはじめとする皆さまの医療ニーズにお応えしています。

個別の医療に目を向けると、まず、便失禁からの解放につながる再生医療を日本で最初に行ったことが注目点として挙げられます。これは胸筋から採取した幹細胞を増殖させ、肛門周辺の筋肉に注入し、括約筋を発達させるという画期的な技術です。この分野では当院が地域医療のみならず、日本の医療全体をけん引していると自負しています。

また、消化管粘膜に炎症が起こる炎症性腸疾患(IBD)の治療にも前向きです。指定難病の潰瘍性大腸炎クローン病を指すIBDは、ろうなどの合併症を引き起こす可能性が高く、当院では内科的、外科的どちらの治療も行える体制を整えています。

一方、医療界の発展に寄与することも当院の重要なテーマです。新たな治療の治験に積極的に取り組んでいるほか、学会への参加や研究活動も盛んで、2023年には、大腸肛門病センター高野病院の山田(やまだ) 一隆(かずたか)名誉院長らが執筆した論文が、大腸癌研究会(大腸がんの治療ガイドラインを編集する、日本の大腸がん研究をけん引する研究会)において優秀論文賞を受賞しました。

ちなみに大腸がんに関しては、ほかの医療機関で手術を受けた患者さんが必要とする便失禁などの術後ケアに当たるなど、地域の医療連携にも積極的に参加しています。様々な病気に併存した肛門病変に関して、肛門部の治療の依頼に対応することがしばしばあり、こうした柔軟さも当院の隠れた強みといえるかもしれません。

当院では現在、全国規模のオンライン診療や動画発信、さらには外国人患者さんの受け入れといった、ローカルの枠を超えた取り組みを行っています。

オンライン診療を始めたのは、消化器外科や内科など、私たちとも関係の深い診療科の先生たちが、肛門の疾患についてなかなか十分にご理解いただけていないという認識からでした。お尻の病気を抱える方は全国にたくさんいらっしゃいますので、そうした需要に応えるため、デジタルツールを活用して遠方の皆さまにも私たちの医療を提供しています。当院のWebサイトへの流入数でみても、熊本県の方よりも東京など関東圏の方のほうが目立ち、遠方からの注目度の高さがうかがえます。

また、当院では全国の方に向け、大腸や肛門の病気について解説する動画チャンネルを開設しています。ぜひご覧ください。

YouTube 高野病院チャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCLVPONi8lxMB6giggQ0dA6w

外国人患者さんは中国からの方がメインです。当院は厚生労働省の事業に基づく外国人患者受入れ拠点病院に認定されており、今後もインバウンドの渡航者や外国人労働者の増大が見込まれる中、外国人の方々の医療へのアクセスに支障がないよう、しっかりと役割を果たしていきます。

当院は大腸や肛門に関して、ほかではできない唯一無二の診療を行っている病院だと自負しています。とはいえ、病気を治すのは医師の力ではなく、患者さんご自身です。つらい病気と共に向き合い、一緒に闘っていきましょう。

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