院長インタビュー

地域の自治体病院として医療で人々に寄り添う大網白里市立国保大網病院

地域の自治体病院として医療で人々に寄り添う大網白里市立国保大網病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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千葉県大網白里市にある大網白里市立国保大網病院は、救急医療やがん治療といった急性期医療に加え、生活習慣病診療などの慢性期医療を展開する山武地域の中核を担う病院です。血液がんや消化器病に対する治療のほか、人間ドックや健診業務にも注力する同院の地域での役割や今後について、院長の安蒜 聡(あんびる さとし)先生に伺いました。

当院のある大網白里市は、西は千葉市、東は九十九里海岸に隣接し、東西に長い地勢です。当院は1952年に組合立国保直診施設山武郡南病院として開設し、1996年に新築移転したうえで大網白里町立国保大網病院へ名称変更と増床を行いました。そして2013の年市制施行に伴い、現在の“大網白里市立国保大網病院”に名称変更したという歴史があります。

当院は“千葉県救急告示病院”( 事故や急病などによる傷病者を救急隊が緊急に搬送する医療機関で、各医療機関からの協力の申出を受けて知事が認定し、告示した病院)の認定を受けているほか、日本血液学会の研修教育施設、日本消化器病学会専門医制度認定施設、日本消化器内視鏡学会指導施設、日本胆道学会指導施設、日本外科学会外科専門医制度修練施設、日本腹部救急医学会認定施設となっています。一般病床99床を備え、8つの診療科に常勤医が勤務しており、15の診療科を標榜しています。(2024年7月時点)。

当院は医療圏において、地域医療支援病院である東千葉メディカルセンターの後方支援病院として高度急性期、急性期を終えた患者さんを受け入れてきました。また健診業務にも尽力しており、特に人間ドックが好評で、健診と人間ドック受診者数は年々増加しています。

当院の血液内科には日本血液学会認定の血液指導医が在籍しており、山武長生夷隅医療圏で唯一の日本血液学会の研修教育施設でもあります。このような環境の中で我々は、血液の病気でお困りの患者さんに日々対応してきました。原則として科学的根拠に基づく標準治療を行うとともに、高齢の方が多いことも考慮して一人ひとりの体力や併存症、希望に沿った診療を行うよう心がけています。血液がんの患者さんは感染症を併発し早急な対応を要することがあるため、3室のクリーンルーム(無菌室)を整備し、このような免疫力の低くなった患者さんの診療に対応しています。

消化管や肝胆膵の病気に対しては、内視鏡や超音波、CT、MRIを用いて診断と治療を行います。上部消化管内視鏡検査は2432件、下部消化管内視鏡検査は937件、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)は29件、腹部超音波検査は1003件といった数の消化器病の検査数を誇ります(全て2022年4月〜2023年3月の実績)。また大腸のポリープに対しては、心体の負担が少ないEMR(内視鏡的粘膜切除術)を161件実施しています(2022年4月〜2023年3月の実績)。

当院の消化器外科には日本肝胆膵外科学会認定の高度技能指導医が在籍しており、肝胆膵の悪性腫瘍(しゅよう)についての診断および高難度な手術への対応が可能です。さらに外科では良性の病気についても適切なタイミングで手術を行い、患者さんの早期退院と社会復帰をサポートしてきました。手術のみならず抗がん薬治療も積極的に行っており、幅広い選択肢を備えてニーズに応じた医療を提供することで地域の方々の役に立ちたいと考えています。

当院では総合的な精密検査を行う人間ドックや、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目して生活習慣病のリスクの有無を検査する特定健診を実施しています。また、がん検診について、大網白里市では例年、住民の方々を対象に集団検診と個別検診を実施しており、当院でも個別受診を実施してきました。当院における人間ドックや健診の受診者数は年々増加している状況です。定期的に人間ドックを受けることは、健康状態の確認、あるいは病気の早期発見と病気の予防が期待できるため非常に大切です。人間ドックをより多くの方に受けていただけるよう、当院は近年、人間ドック受診者控室を増設しました。

我々は、臨床研究に関して血液病の分野で多施設との共同研究に取り組んでいます。また、専攻医には探究型思考力を維持できるよう論文執筆や学会での発表にも積極的に取り組んでもらっています。私自身も当院で経験した症例の報告を英文誌に掲載したことがあり、アカデミックな活動の意義や面白さを学びました。院長として、今後も医療職者が臨床研究に携わり、それをさらに現場の医療に生かせるような環境を推進していきます。

医師たちにワークライフバランスを考慮して勤務してもらうことが肝要であると考え、2023年度に変形労働時間勤務制(業務の繁閑や特殊性に応じて所定労働時間を柔軟に調整できる制度)を導入しました。各医師と個別に話し合い、各々の希望を尊重した勤務体系、変形労働時間勤務を決めました。このことが、医師の時間外勤務の減少につながっています。また、シフト制で医師の勤務時間を調整することにより、自由度の高い働き方ができるようになりました。

今、超高齢社会のなかで、複数の慢性的な病気を抱える患者さんが増えています。そのような方々が、高度急性期病院で治療を終えられてからも可能な限り住み慣れた地域や自宅で生活できるように支える地域包括ケアを、当院は推進してまいります。医療圏内の病院や診療所、近隣の介護施設などとの連携を強化し、患者さんに関する情報の共有、および受け入れ要請に柔軟に対応できるさらなる体制整備を進める決意です。そして人間ドック、特定健診、がん検診などを継続し、大網白里市の関係課と連携しながら市民の健康維持と疾病予防に取り組みます。

コロナ禍を振り返ると、当院が果たした役割は大きかったと自負しております。早期に帰国者・接触者外来を開設して診療にあたり、コロナワクチンの接種開始直後に集団接種を担当しました。これも地域の方々を守るという当院の使命を体現した1つの活動でした。

2024年度中には総合診療専攻医が着任する予定もあり、今後よりいっそう地域の皆さんのお役に立てるのではないかと思います。地域の自治体病院として、これからも患者さんとご家族に寄り添った医療を展開してまいります。

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