院長インタビュー

道内唯一の小児総合医療施設として重責を果たす北海道立子ども総合医療・療育センター

道内唯一の小児総合医療施設として重責を果たす北海道立子ども総合医療・療育センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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北海道札幌市にある北海道立子ども総合医療・療育センター(愛称“コドモックル”)は、北海道唯一の小児総合医療施設です。“病気や障害で困っている道内の子どもたちを助ける”という使命を果たすべく、心臓や脳、脊髄(せきずい)、消化器などの先天的な病気や障害を抱える子どもたちの治療と療育に尽力しています。同センターの地域での役割や思いについて、センター長の髙室 基樹(たかむろ もとき)先生に伺いました。

最寄り駅のJR星置駅はJR札幌駅から小樽方面に電車で約20分のところにあり、そこから約10分歩いて閑静な住宅街を抜けた先に当センターが建っています。

当センターは、全道域を対象として専門的な小児医療を担う小児総合保健センター(当センター医療部門の前身)と、道央および道南地域における療育機能を担う札幌肢体不自由児総合療育センター(当センター療育部門の前身)の機能を一体的に整備し、2007年に開設されました。胎児期から一貫した医療・療育を総合的に提供する北海道内唯一の小児総合医療施設で、25の診療科、計212床(医療部門102床、療育部門110床)の運用病床があります(2024年3月時点)。

我々は開設以来、治療の難しい小児のさまざまな病気に対して、幅広い診療科と専門性を備え対応してきました。特に外科治療が必要な子どもを広く受け入れており、先天性の病気に対する手術を積極的に行うなど、当センターは集約化が進む道内の小児医療における“最後の砦”となっています。

現在、小児の患者さんの手術は対応できる医療機関や医療従事者が限られています。そのようななかで、当センターは小児に特化して専門的な医療を提供できることが強みです。

小児心臓血管外科では、生まれつきの心臓病に対する手術や、幼い頃に心臓手術を受けた方が成長後に必要とする診療に対応しています。3名の常勤医師のうち2名が心臓血管外科専門医*で(2024年3月時点)、北海道大学病院と神奈川県立子ども病院より手術応援も受けつつ、週3回の手術を行っています。そして、心房中隔欠損症ASD)や心室中隔欠損症VSD)に対する手術では胸骨を切ることなく傷口の目立たない部分を切開するなど、体の負担が少ない手術を積極的に導入してきました。また大血管転位症(心臓の出口の血管が互いに入れ替わってしまう病気)や大動脈弓離断症(大動脈弓の一部分が途切れ、下半身への血液の流れが著しく途絶えてしまう病気)といった新生児期に手術を要する重症の心臓病にも対応するなど、専門性の高い治療を提供しています。

小児脳神経外科では、胎児期から小児期に生じる脳と脊髄の外科的な病気に対応します。成人と比べて病態や治療が細分化しており複雑なため、小児専門の脳神経外科医が慎重に診療を進めてきました。たとえば、水頭症(脳が産生する髄液が過剰になり、その髄液の停滞により拡大した脳室が脳を圧迫して起こる病気)はその1つです。

*日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会の3学会構成心臓血管外科専門医認定機構が認定する専門医資格

当センターには専門性の高い治療を要する子どもたちが道内各地から集まります。中でもPICU(小児集中治療室)は生命を脅かしかねない重篤な病気や、手術に関わる濃密な管理を要するケースに対して迅速に対応する、子どものための集中治療室です。小児医療の最後の砦として、病気やけがの区別なく、どんなに重篤な症例であっても道内のあらゆる地域から患者さんを受け入れ、専門的な医療の提供に努めています。PICUでは小児集中治療科の医師を中心に、複数の専門診療科の医師や看護師、多くの医療スタッフと連携してチーム医療を実現し、人工呼吸器管理や血液浄化療法などの治療を行ってきました。

また、当院は道内唯一の“特定機能周産期母子医療センター”に指定されており、NICU(新生児集中治療室)とGCU(新生児回復室)で、重症な病気のある新生児に対応しています。特に、手術が必要な心血管、消化器、脳神経などの病気を抱えている場合や、早期に理学療法が必要となる可能性があるお子さんを積極的に受け入れてきました。また胎児診断で病気が見つかった場合には、母体搬送にも対応しています。2020年にはNICU認可病床を12床に増やし、現在はGCU認定病床12床と併せ、必要に応じてPICUと連携して診療に尽力しています。

当センターのリハビリテーション小児科では、運動や言葉などの発達に関して心配のある子どもの診察を重点的に行い、ご家族も含めて安心して生活できるようにお手伝いをしています。脳性麻痺、知的障害、自閉症など生まれつきの発達の障害に加え、脳外傷脳血管障害、脳炎脳症といった後天性の脳損傷に対するリハビリテーションを実施してきました。

また、リハビリテーション整形外科では、小児のリハビリテーションと小児整形外科に関する専門的な診療を行っています。たとえば、脳性麻痺などの麻痺性の病気、ダウン症などの染色体異常症、筋性斜頸(きんせいしゃけい)などの先天性の病気、小児骨端症、軟骨無形成症などの骨系統疾患(骨や軟骨などの骨格を形作る組織の障害により骨格の異常をきたす病気)です。外来診療では小児整形外科全般の治療を行うとともに、入院や手術による治療にも対応してきました。当科で扱う症例は長期間の手術およびリハビリ加療を必要とするケースもあるため、隣接の北海道手稲養護学校と連携して治療を進めています。

当センターは北海道手稲養護学校を併設しています。この学校には幼稚部から高等部まであり、当センターに入院中の幼児、児童、生徒に対する指導や、訪問教育として在宅での指導が行われています。当センターは2階部分でこの学校と連結しており、入院中の子どもたちが通学する姿は日常の光景です。

毎年夏には、札幌手稲養護学校の協力を得て花火大会を開催しています。当センターの利用者はもちろん、地域の皆さんが楽しみにしてくださっているようです。2022年7月にはコロナ禍を経て3年ぶりの花火大会を開催できました。患者さんやそのご家族、職員に加えて、近隣にお住まいの方々からも、花火があがる度に拍手が起こりました。

2008年、当センターの隣に“ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろ”が開設されました。10部屋あり、当センターなどに入院または通院している20歳未満の患者さんと付き添いのご家族が利用できます(利用料:1,000円+リネン利用料200円(税込)/1人1日)。当センターの患者さんの中には札幌市外から訪れる方もかなりいらっしゃるため、この施設を活用いただくことで遠方から訪れる患者さんやご家族の負担が少しでも軽減されれば何よりです。

我々は今後も、北海道の未来を担う子どもたちがひとしく健やかに成長できる社会の実現を目指し、道内の医療機関や療育施設との連携を図りながら、安全かつ専門性の高い小児医療と療育の提供に努めてまいります。

子どもの数が減り続けるなか、小児医療のあらゆる施設は集約化を余儀なくされています。私たちは今後も道民の方々のさらなる信頼と安心が得られる施設、そして子どもたちに親しみのある存在として受け止められる施設となれるよう、今後いっそう努力する決意です。どうかご支援のほどよろしくお願いいたします。

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