院長インタビュー

地域に根付き、自治体立優良病院表彰を受けた新小山市民病院

地域に根付き、自治体立優良病院表彰を受けた新小山市民病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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栃木県小山市にある新小山市民病院は、地域の二次救急を担うと同時に、急性期から回復期まで幅広く医療を展開している病院です。地域の中核的な病院として地域医療を支える同院の地域での役割や今後について、院長の島田 和幸(しまだ かずゆき)先生に伺いました。

当院は2013年に地方独立行政法人化した公立病院であり、現在の診療科目は27科、病床数は300となっています。二次救急(入院や手術を要する重症患者を365日24時間体制で受け入れる救急医療)の指定病院であるほか、がん診療連携拠点病院などや地域の医療機関と連携し、患者の身近でがんの専門的な診療を行う“栃木県がん治療中核病院”の指定を受けています。

また、当院は地域に密着した医療の充実を図るため、“医療は地域で完結させる”という国の医療政策に基づき、地域医療を担う病院として2015年より“地域医療支援病院”に指定されました。さらに、2023年にはかかりつけ医などからの紹介状を持って受診いただくことに重点をおいた“紹介受診重点医療機関”に指定されるなど、当院は地域医療の中心的役割を担っています。

高齢化が進みつつある小山市では、急性期のほかに回復期の対応も課題とされています。そういったニーズに対応するため、地域包括ケア病棟(急性期の治療が終了した退院準備期間の患者さんが入院している病棟)、患者支援センターなどを備えており、さまざまな病気を抱える患者さんに対して医療の充実を図っています。

当院は地方独立行政法人化して以降、医師の数を大幅に増員しました。これにより、診療の幅が広がり、深みが増したのは間違いないところです。2016年には病院が新築移転したことで病棟も新しくなり、患者さんへより充実した医療を提供できるようになりました。

どの診療科も高水準な診療内容を提供しながら365日24時間救急疾患に対応できる体制が整っており、なかでも脳卒中や循環器疾患に関しては数々の診療実績があり、当院の強みといえます。

当院は、2016年に県内で初めて脳卒中専用治療室(SCU)を設置して“脳卒中センター”を開設し、専門チームが24時間体制で脳卒中の集学的治療を行っています。“小山近辺の脳を守る”をモットーに、一刻を争う脳卒中患者さんに対して24時間365日体制で治療を受け入れています。専門チームは日本脳卒中学会脳卒中専門医をはじめとする医師やリハビリテーション技士、放射線技師、看護師、医療ソーシャルワーカーなど多職種で構成され、専門性の高い知識や技術を活かして患者さんに合わせた急性期治療を提供しています。

また、当院では超急性期脳梗塞の治療の二本柱として、血栓を強力に溶かす薬を静脈から点滴投与するTPA静注療法(血栓溶解療法)と、カテーテルを体内に挿入して血栓を回収・溶解するカテーテル治療(血栓回収療法)を行っています。

TPA静注療法は発症から早ければ早いほど治療効果が期待できますが、 TPAの投薬は発症後4.5時間以内の超急性期に限られるほか、脳出血のリスクや脳の太い動脈が閉塞した場合(脳主幹動脈閉塞)は治療効果が乏しい面もあります。TPA治療法が適さない場合は急ぎカテーテル治療(血栓回収療法)に切り替えることで、迅速な脳卒中治療を提供しています。

なお、脳卒中センターの診療実績(2022年度)は、急性期脳卒中の入院患者数が470例、TPA静注療法は21例、血栓回収療法は過去最高の21例でした。今後も当院はこの地域の脳卒中の患者さんの砦として、できるだけ早く、的確な治療を行っていきます。

当院の循環器内科では狭心症心筋梗塞不整脈心不全高血圧などの治療に対応しています。特に、循環器内科の治療では患者さんへの身体的負担が少ないカテーテル治療などの手術に積極的に取り組んでいます。たとえば、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の患者さんを対象とする経皮的冠動脈形成術の診療実績(2023年度)は314例でした。さらに、急性心筋梗塞の治療は24時間365日体制で緊急カテーテル検査を行っており、迅速な治療を心がけて早期に適切な診断・治療へつなげられるよう努めています。

当院では脳卒中や循環器疾患の外科領域においても小山市やその近隣市町村の患者さんの治療を行います。当院の心臓血管外科では、心臓血管外科指導医と日本外科学会認定外科専門医により、弁膜症や冠動脈疾患、大動脈疾患の手術を実施しています。外来診療は毎週水曜日と木曜日で受け付けており、他院から緊急で紹介を受けた患者さんは臨時の診察や末梢血管に関して緊急の手術も行います。

また、当院の脳神経外科は24時間365日体制で対応しており、小山市やその近隣市町村から救急車で搬送された患者さんはもちろん、開業医からのご紹介、外来患者さんなどの治療にあたります。

当院は2016年に新築移転したことにより、“新”小山市民病院として病院の変革に向けて、大きく分けて3つのことに取り組みました。

1つ目は、当院で扱う医療機器や診療科を増やしたことです。これによって提供できる医療の幅が広がり、質も向上させることができたと自負しています。

2つ目は、病床の稼働率向上に取り組んだ点です。これについては当院の医療の質が上がったことで多くの患者さんにお越しいただけるようになったことに加え、救急患者さんの受け入れ増加や連携病院とのスムーズな転院などを通し、現在は90%以上の病床稼働率となっています。

3つ目は、院内のコミュニケーション強化です。当院では職員が連携して患者さんの治療にあたるチーム医療を推進しており、職員間でのコミュニケーションが重要です。そこで当院ではシステミック・コーチングを導入しました。これは、コーチ役とそれを受ける側が定期的に対話を重ねることで受け手の自己変革と組織の成長促進を促し、受け手が自ら設定した目標達成に導くものです。

以上の取り組みを行った結果、当院は2022年に全国の自治体病院が経営改善や地域医療の強化に貢献した成果を表彰する“自治体立優良病院表彰制度”を栃木県で初めて受賞しました。今後も当院では地域と病院の連携を深め、全ての患者さんが満足していただける医療を提供できる“オンリーワンホスピタル”を目指していきます。

我が国では、患者さんが自らの考えを医療従事者に伝えるというより、医療従事者の意向に従うだけになってしまっているケースも多いのではないでしょうか。

もしものときのために、ご自身が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームなどと繰り返し話し合って共有する取り組みのことを“人生会議”と言いますが、これからは“どのように生き、どのように最期を迎えたいのか”を患者さんが自ら率直にお話しいただければと思います。我々も、これまで以上に患者さんの意向に耳を傾けなければなりません。

当院は急性期医療が必要な際に頼れる存在として、地域に根付いた病院であり続けたいと考えています。そして、地域の医療機関との連携や機能分化をより一層強化し、スタッフが一丸となって患者さんに真に愛され、信頼される病院を目指してまいります。

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