神奈川県横浜市にある社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷横浜病院(以下、聖隷横浜病院)は、急性期医療から回復期リハビリテーション、緩和ケアまで担うケアミックス型の総合病院として地域医療を支えています。
そんな同院の特長について、院長の大内 基史先生にお話を伺いました。
当院のルーツは1920年に開設された横浜市立療養院で、結核治療を中心に病院を運営していました。その後、1968年に国立横浜東病院と名称を改めたことに伴い、総合医療を提供し、2003年には現在の経営母体である社会福祉法人 聖隷福祉事業団に移管され、名称が聖隷横浜病院となりました。
聖隷福祉事業団は、全国で200以上の事業を展開している日本最大級の社会福祉法人で、キリスト教精神に基づく“隣人愛”を基本理念としています。“あなた自身を愛するように、隣人のことも愛しなさい”という精神のもと、地域に貢献することを基本理念としています。
100年以上続く歴史の中で、当院では時代に合わせた医療の提供に努めてきました。現在注力しているのは、心臓血管領域や整形外科領域などを中心とした高齢の方に多い疾患に対する医療の提供です。
横浜市では2021年を境として全体の人口は減少している一方で、高齢の方々の割合が増えています。高齢の方々への医療提供に今後も注力していくためには、医療従事者の確保が重要な課題となります。そこで当院はDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進し、少人数でも安定した医療活動ができるような体制作りに努めています。
当院の心臓血管センターは、常勤医師による24時間365日の診療体制を整え、心臓カテーテル治療においては横浜市内でも多くの患者さんを受け入れています。
心臓の病気の原因としては、生活習慣病などが多くを占めます。そのため脳血管センターをはじめ腎臓・高血圧内科や内分泌・糖尿病内科とも連携し、そもそもの病気の原因にアプローチできるよう、包括的なチーム体制を整えています。
また近年は、高齢化に伴って慢性心不全の患者さんが増えているため、当院では、4泊5日の心不全教育入院を実施しています。リハビリテーションや栄養相談、運動など患者さん一人ひとりに合わせたプログラムを作成し、心不全を悪化させずに上手にコントロールする方法を学んでいただきます。
整形外科では、骨粗しょう症や変形性関節症などの治療を中心に行っています。特に変形性膝関節症や変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死症などの疾患においては、人工関節センターにてMIS(最小侵襲手術)を積極的に取り入れています。MISでは手技の工夫によって出血量を減らすことができ、その結果として術前の自己血貯血なく手術が可能となっています。また、出血が少ないため、血液を体外に排出するために入れる管(ドレーン)の設置も不要となりました。このような低侵襲な手術によって、術後翌日からリハビリも可能となっています。
また、自費診療として、再生医療であるAPS療法*も行っています。APS(Autologous Protein Solution:自己たんぱく質溶液)は患者さんご自身から採取した血液を成分分離し、APSのみを患部に注射することで炎症や痛みの軽減を目指すものです。
このほか、骨粗しょう症に対しては、ケアミックス型病院であることを活かし、院内多職種による骨粗しょう症リエゾンサービスを立ち上げました。骨粗しょう症によって骨折し、入院した患者さんに対して、骨折の治療だけでなく、骨粗しょう症の治療、栄養指導、ご自宅の環境調整、退院後も無理なく外来受診できるクリニックとの連携などを行います。
*APS療法…治療の際には採血を行い、採取した血液を遠心分離機にかけてAPSを抽出。抽出したAPSを患部に注射します。院内で精製できるため40分ほど待つと注射が可能となり、日帰りでの実施が可能です。膝関節、股関節で行うことができます。治療効果には個人差があります。採血部位の痛み、皮下出血や注射部位に痛み、こわばり、違和感、腫れ、かゆみが出る可能性があります。痛みなど違和感がありましたら、聖隷横浜病院へお問い合わせください。1か所につき、33万円(税込)。
当院では、地域の皆さんに正しく医療の知識を理解していただくため、市民公開講座を開催しています。最近では人生の最終段階をどう過ごしたいかを考え、希望する医療などについて家族などと話し合うアドバンス・ケア・プランニング(人生会議)講座や、医師による漢方医学の講座などを行いました。
これからも地域の皆さんが当院を身近に感じてもらえるように、SNSなどを通じて積極的に医療情報を発信していきたいと考えています。
こうした情報発信を通じ、地域の皆さまの声に耳を傾け、地域のニーズに沿った医療活動を展開できるよう努めます。
当院は、地域のクリニックとの協力体制を重視し、開業医の先生方と年に1回のペースでカンファレンスを開催しています。最近ではオンラインによるコミュニケーションが主流となってきていますが、実際に顔を合わせることで本音を言い合える関係が築けているように思います。
これからも人と人のつながりを大切にしながら、地域の医療を支え続けてまいります。