院長インタビュー

地域社会に密着した医療貢献を目指し、時代に合わせたニーズに応え続ける――JR仙台病院

地域社会に密着した医療貢献を目指し、時代に合わせたニーズに応え続ける――JR仙台病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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大正8年(1919年)に開設された仙台鉄道診療所をルーツに持ち、100年以上の長きにわたって仙台の地で医療を提供し続けているJR仙台病院。同院は東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の企業立病院というユニークな背景を持ちながら、現在は地域にお住まいの方の健康を支える基幹的な病院としての役割を果たしています。

2024年に同院の院長に就任した石岡 千加史(いしおか ちかし)先生は、東北大学病院での豊富なマネジメント経験を活かし、自ら夜間救急の現場に立ちながら、時代のニーズに即した病院改革を進めています。同院がこれからの地域医療で担うべき新たな役割や、患者さんファーストの医療に懸ける熱い思いについて詳しくお話を伺いました。

外観
JR仙台病院 外観(JR仙台病院ご提供)

私たちの病院は、1919年に仙台駅構内に開設された仙台鉄道診療所が始まりです。その後、1921年に仙台鉄道病院となり、国鉄の分割民営化を経て1988年に現在のJR仙台病院へと改称されました。大正、昭和、平成、令和と、100年を超える非常に長い歴史をこの仙台の街と共に歩んできたわけです。

JR東日本の企業立病院という枠組みではありますが、1982年に保険医療機関の指定を受けてからは、社員やその家族に限らず、地域の全ての方々に向けて広く門戸を開いてきました。現在、外来や入院で来られる患者さんの大半は近隣にお住まいの一般の住民の方々であり、仙台医療圏における急性期から回復期、慢性期に至るまでをシームレスにつなぐ役割を担っています。

医療を取り巻く環境や社会保障の制度はこの20年ほどで劇的に変化しました。高齢化が進み、人々の医療ニーズが多様化するなかで、100年の歴史を守るだけでなく、時代に合わせて自分たちの果たすべき役割を柔軟に変えていくことが何よりも大切だと考えています。これからも地域社会の頼れるインフラとして、皆さんの健康で安心な暮らしにしっかりと貢献していく方針です。

現在、人口約150万人を抱える仙台医療圏では、救急車の要請件数が非常に多く、受け皿となる医療機関の不足が深刻な地域課題となっています。当院は高度救命救急センターのような重症患者さんを専門に受け入れる施設ではありませんが、重症の患者さんをしっかりと受け入れる二次救急としての重要な役割が期待されていました。しかしながら、これまでは駅近くの市街地中心部という絶好の立地にありながら、その機能を十分に発揮できているとはいえない状態でした。

そこで、救急受け入れ体制の大幅な強化に乗り出し、まずは地域の皆さんのために「来た患者さんはお断りせず、真摯に対応する」という意識改革から始めました。さらに、言葉で指示を出すだけでなく、私自身も月に3~4回は17時から22時までの夜間救急当番として実際に現場に立ち、若手医師たちと一緒にひっきりなしに運ばれてくる患者さんの診療にあたっています。

院長である私が現場に入り、負担や実態を肌で理解しながら改革を進めることで、病院全体の空気も少しずつ変わり始めました。その結果、それまで年間約600台だった救急車の受け入れ件数は、2025年には約1,200台へと一気に倍増しています(2025年1月から12月の実績)。今後はさらに1,500台の受け入れを目指して、院内の体制づくりを進めています。

当院が救急車搬送で受け入れている患者さんの約半数は当日に元気に帰れるような軽症の方々ですが、残りの半分は入院が必要で、その平均在院日数は約10日間です。中には一刻を争う重症の患者さんもいらっしゃいます。
以前、その日に主要な大規模病院がどこも受け入れられなかった胸部大動脈解離の患者さんが当院に搬送されてきたことがありました。夜中でしたが、私が救急車に同乗して適切な処置を行いながら、緊急手術が可能な大崎市の連携病院まで1時間以上かけて付き添って搬送いたしました。無事に命を取り留めた患者さんから後日、心のこもった感謝のお手紙をいただいたときは、医療者として本当に胸が熱くなりました。また、重症の横紋筋融解症DIC播種性血管内凝固症候群)と急性腎不全を併発した患者さんを当院で徹底的に治療し、10日ほどで元気に歩いて退院していかれたこともあります。

リスクを過度に恐れて患者さんを他の病院にお任せするのではなく、まずは目の前の困っている患者さんを受け入れて、安心していただく。当院はそんな温かい救急医療の受け皿でありたいと強く願っています。

私たちの病院は164床という中規模なサイズではありますが、企業立病院としてのバックボーンを活かし、高額な高性能医療機器への投資を非常にスピーディかつ積極的に行えるという際立った特徴を持っています。たとえば画像診断検査では、2018年に細部まで鮮明に、高速に撮影ができるCT(X線を用いて体の断面を撮影する機器)を、2024年にはAI機能を搭載した1.5テスラのMRIシステムを導入するなど、CT・MRI・核医学診断装置・血管造影装置による画像診断検査に対応できる環境を整えました。

このような新しい医療機器を日々の診療に存分に活用しつつ、当院では東北大学病院との医療連携を現在進行形でさらに強化しています。
一般的に大学病院のような大規模アカデミアは、非常に患者さんのニーズが高く、精密検査を受けたくても予約が数週間先まで取れないといった供給の課題を抱えています。そこで、東北大学病院と3km程度しか離れていない当院がハブとなり、スピーディに高解像度の画像検査を引き受け、その診断結果を迅速に東北大学病院での治療へつなげる、といった緊密な病病連携のネットワークを構築しました。これにより、可能な限り患者さんをお待たせすることなく、スピーディな診断と治療が実現しています。

こうした優れたハードウェアの充実に加え、当院が誇る各診療科もそれぞれにユニークな強みを持っています。
たとえば整形外科では、特にスポーツ障害の分野で実績があり、当院の医師がプロサッカーチーム「マイナビ仙台レディース」のチームドクターを務めています。消化器内科では、体への負担を最小限に抑えた低侵襲(ていしんしゅう)な内視鏡治療を行っており、専門の消化器内視鏡センターを中心に病気の早期発見に努めているところです。
さらに小児科は1型糖尿病甲状腺疾患といった小児の内分泌疾患に強みがあり、きめ細やかな診療を提供しています。

救急医療と並んで、私が院長としてどうしても立ち上げたかったのが、がんの終末期における心の痛みに寄り添う医療です。

私は医師人生の多くを東北大学で腫瘍内科医としてがん医療やがんゲノム医療の研究に捧げてきました。その目で現在のがん医療を見渡したとき、採算の厳しさや現場の負担の大きさから、緩和ケアの病床を縮小したり撤退したりする病院が相次いでいる現状に強い危機感を抱いていました。重要な領域だからこそ、当院はその大切な受け皿にならなければいけないと考えています。

こうした背景から、2026年1月に「緩和ケア内科」を新設いたしました。ここでは日本緩和医療学会所属の医師を2名を新たに雇用し、2人体制で人生の最終段階における医療に特化した手厚いサポートを行っています(2026年6月時点)。
緩和ケアの本質は、ただ薬を投与して終わりにするのではなく、患者さんご本人はもちろん、それを見守るご家族の不安や悲しみにも徹底的に寄り添うことです。当院には放射線治療に用いるような大規模な装置はありませんが、だからこそ純粋に患者さんの身体的な痛みや精神的な苦痛を和らげるケアに全力を注ぐことができます。滑り出しは非常に順調で、地域での連携の場でも積極的に私たちの取り組みをアピールしています。

緩和ケア内科のスタッフ(JR仙台病院ご提供)
緩和ケア内科のスタッフ(JR仙台病院ご提供)

当院の運営母体であるJR東日本は現在、鉄道事業以外の事業も積極的に行っており、東京の高輪ゲートシティのような都市の開発を進める、といったことをしています。さらには、皆さんの生活インフラ全般を支える事業にも進出しており、健康やウェルネスに関わる領域への投資も非常に活発に行われています。

その一環として、2024年7月にはJR仙台駅の在来線改札内2階という東北初の駅ナカに、対面とオンライン診療を組み合わせた「仙台駅スマートクリニック」と調剤薬局がオープンいたしました。
駅ナカクリニックは通勤通学の途中や早朝・夜間、休日でも気軽に受診できる画期的な施設です。しかし、X線やCTといった大型の検査機器は置いていません。そこで、駅から徒歩7分という距離にある当院が緊密に連携し、クリニックの医師が必要と判断した場合はつなぎよく当院で精密検査を受けられる仕組みを作っています。これは、病院とクリニックが行える地域連携の1つの理想形ではないかと考えています。
さらに、エキナカの個室ブースでオンライン診療を受診できる「LX Doctor」を始めていて、2031年までに500カ所以上の設置を目指しています。また、スマート健康ステーションは2026年6月現在で8カ所展開しており、今後も増やしていく予定です。

また、病気になる前の「予防医療」や健康増進にも、JRグループの力を結集して取り組んでいるところです。当院の日帰り人間ドック*はこれまではJRの社員や家族向けが中心でしたが、これからは人生100年時代を見据え、近隣住民の方や沿線にお住まいの全ての皆さんにぜひ活用していただくべく、JRの乗車券や駅周辺にあるJRグループのホテルの宿泊をセットにしたウェルネスツーリズムのような新しい快適な取り組みを現在構想中です。

さらに、JR東日本による健康づくりの新たな仕組みとして、東北大学などのアカデミアや外部のIT・医療企業とも手を取り合い、ゲノム情報を活用した次世代の予防医療ネットワークの立ち上げを計画しています。
現在検討しているのは、私自身が長年携わってきたがんゲノム医療の知見を活かし、がんの予測はもとより、生活習慣病の予防や日々の健康管理に役立てられるような、誰もが気軽に参加できる新しい仕組みです。駅というリアルな拠点を持つJRの強みを活かし、病気になってから行く病院という枠を超えて、地域の皆さんが毎日を豊かに元気に暮らすためのウェルネスの伴走者となる。そんなまったく新しい予防医療の未来像を、この仙台の地から発信していきたいと考えています。
*JR仙台病院で受けられる日帰り人間ドック(予約制)の詳細
内容(標準検査):身長、体重、視力、聴力、血圧、心電図検査、腹部超音波検査胸部X線検査、食道、胃、十二指腸X線検査、眼底検査、血液検査、尿検査、便潜血検査、問診・診察
費用:39,600円(税込) 人間ドックは自由診療です。

私は東北大学医学部を卒業して以来、腫瘍内科(しゅようないか)の医師として、ほぼすべての時間を東北大学で過ごし、大学病院の副院長も9年間にわたって務めてきました。
JR仙台病院の院長に就任したときは、その歴史の重みに身が引き締まる思いでしたが、同時にこの素晴らしい環境を活かして新しい地域医療の形を作れることに大きなやりがいを感じています。

私が院長として掲げているスローガンは、「向上」です。これには、医療の質を絶えず高めていくこと、患者さんの満足度と安心感を追求すること、そしてそれらを支えるために持続可能な病院経営をしっかりと確立すること、という3つの強い思いを込めています。経営のためのコスト削減や古い体制の改革も1円単位で細かくチェックして進めていますが、全ては「患者さんへの医療の質を向上させるため」であり、現場で働くスタッフを守るためのものです。

その一例として、2025年の4月からはこれまでの院内処方していたお薬を、全面的に院外処方へ切り替えました。これにより、院内に置く薬の在庫制限に縛られることなく、患者さん一人ひとりに合う選択肢を吟味して提供できるようになっています。また、院内の多くの薬剤師を病棟の現場へ直接配置できるようになり、看護師と協力しながら患者さんの服薬指導や細やかな体調管理をサポートできる体制が整いました。このような向上を、これからも私自身が先頭に立って進めていきたいと考えています。

また、当院をより地域の皆さんに身近に、そして温かい場所に感じていただきたいという職員の思いから、グランドピアノを常設した1階のエントランスホールで定期的に「マンスリーコンサート」を開催中です。プロの演奏家の方々からもホールの素晴らしい音響効果を褒めていただいており、入院中の患者さんやご家族、近隣の方々の心を癒やす大切なひとときとなっているのではないでしょうか。
当院は地域に寄り添う、優しい病院であり続けたいと思っています。体調のことで少しでも不安なことがあれば、いつでも私たちの病院を頼って、お気軽に足を運んでください。

院内コンサートの様子(JR仙台病院ご提供)
院内コンサートの様子(JR仙台病院ご提供)

*本記事の内容は、2026年7月時点のものです。

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