ここまでの記事では、不育症は検査を行っても約半数の方のケースにおいて原因が不明であるということをお話ししました。しかし、近年は新しい治療法も検討されており、進歩を見せています。今回は不育症の治療について、国立成育医療研究センター 妊娠免疫科 医長の小澤伸晃先生にお話を伺いました。
基本的には検査で見つかった異常に対して適切な治療を行います。
妊娠中はデリケートな対応が必要ですので、医師と二人三脚で治療を行い、決して諦めない気持ちが重要です。不育症患者の80%以上の方が、最終的に子供を授かることができると言われています。
検査を行っても原因が分からない方は半分程度いらっしゃいます。
流産の原因の7割前後は胎児側の染色体異常が原因となっているので、そのために流産を繰り返している場合もあれば、まだわかっていない原因がある可能性も考えられます。
血小板減少紫斑病や川崎病など、特殊な免疫の病気のみに対して保険が適用されています。この治療法が近年、原因不明の不育症にも有効ではないかといわれており、治験が実施されています。具体的なメカニズムは不明ですが、妊娠を妨げるような抗体を抑制するなどの効果が期待されています。
ただし、これは原因不明の不育症に対しての治療ですので、抗リン脂質抗体陽性など原因がわかっている場合はそちらの治療が優先されます。
日本産婦人科学会が実施を予定している臨床研究で、体外受精で反復して成功しなかった方や原因不明の習慣流産の方に対して検討されています。
体外受精後、分裂した受精卵の細胞を採取し、染色体異常がないかをチェックします。異常がなければ受精卵を子宮に戻し着床させます。これにより、染色体異常が原因とする不妊や流産を防ごうとするものです。
染色体異常が起こる確率は年齢とともに上がるため、不妊治療とも連携して研究がなされる予定です。臨床研究の成果によっては、不育症に対する治療法が著しく変貌する可能性があります。
不育症は、ホルモン・免疫・遺伝・血液凝固異常・先天奇形・精神心理の問題など多種の分野が入り交じった特殊な領域です。そのため、適切な診療のためには、これからの分野を包括した知識と経験が必要になります。それと同時に、原因不明のことが多く、不可抗力のことも多いので、医師の立場としても難しい面が多々あります。
しかし、多くの患者さんがこの問題に悩んでいるという事実があります。新しい治療法の開発とともに、相談の窓口である専門の医師が増え、少しでも多くの方の悩みが解消されることを願っております。
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター妊娠免疫科医長
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