
便秘とは“本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快 適に排出できない状態 ”のことを指します。一方、便秘症とは“上記の便秘状態により,医療が必要となるほどの症状が出現した状態が「便秘症」である”と定義され、便秘によってさまざまな症状が現れて検査や治療が必要になることを指します。そのため、便秘症は従来考えられてきた便秘とは異なります。
便秘症を解消するとなると、その方法は原因によって異なるため、まずは自身がどのような原因で便秘症を生じているのか理解しましょう。
まず、便秘症の症状について理解しておきましょう。
便秘症の場合は、腸のはたらきに異常が生じていたり、腸に病気が生じることによって起こります。そのため、以下のような症状がみられます。
など
便秘症の主な原因は生活習慣によって生じるため、便秘症を解消するには、まず生活習慣を見直すことが重要です。また、排便を促す食材を積極的に取ること、マッサージや運動によって大腸の動きをよくすることも効果的です。
便秘症を引き起こす生活習慣には、少食や偏食、水分の摂取不足などの不適当な食事のほか、不規則な生活や排便習慣、運動不足など多岐にわたります。このような生活習慣を送っていると、便秘症だけでなくさまざまな体の不調が現れるようになります。
少食や偏食に心当たりがあれば毎日決まった時間にバランスのよい食事を十分に取る、排便習慣が乱れていれば毎日朝食の後に排便する習慣をつける、運動不足であれば適度な運動を取り入れるなど、生活習慣の改善を図ってみましょう。
水分摂取においては、飲み水として1日1.2Lが必要とされています。水分が不足すると便が硬くなってしまうため、水分の摂取量にも気を配るようにしましょう。
排便を促す食物成分の1つに食物繊維があります。食物繊維は大腸の動きを促進する効果と便の量を増やす効果があるため、食物繊維を積極的に取ることでスムーズな排便につながります。食物繊維を多く含む食材には、緑黄色野菜、ごぼう、たけのこ、さつまいも、大豆、ひじき、かんぴょう、切干大根などがあります。
乳酸菌や発酵食品も大腸の動きを促進し、また体に害となる悪玉菌を減らして腸内環境を整えます。代表的な乳酸菌・発酵食品として、ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、チーズ、漬物などが挙げられます。
ただし、便秘症に効果のある食材だけを食べればよいというわけではありません。バランスのよい食事を心がけながら、食物繊維の多い食材や乳酸菌・発酵食品もよく取ることが大切です。
お腹のマッサージや体をねじるストレッチ、お腹や腰を温めるなど、体の外から大腸を刺激したり血行をよくしたりしてあげることも便秘症の解消に有効です。お腹のマッサージは、大腸の走行に添って“の”の字を描くようにゆっくりと何度も行ってみるとよいでしょう。
ストレスや緊張、不安、疲労なども便秘症の原因に挙げられ、自律神経が乱れることで大腸の動きが弱まります。
心当たりのある方は、趣味の時間を作ってリフレッシュする、リラックスできる環境を作る、アロマを取り入れてみるなど、ストレスや疲労を減らす取り組みを行ってみましょう。日頃からストレスや疲労をためないよう心がけることも大切です。
大腸に便がたまっている場合、病院では便秘薬(下剤など)や漢方薬を用いて便の排出を促す治療を行うことがあります。
便秘薬や漢方薬は薬局やドラッグストアでも販売されていますが、便秘症の原因に応じた適切な薬を使用しないとかえって症状が悪化したり、長期的な使用によって薬が効かなくなったりする場合もあります。どのような薬でも副作用があり、これは漢方薬も例外ではありません。また、授乳中の場合には赤ちゃんが下痢になるなど影響を及ぼすこともあります。
そのため、自己判断で市販薬を使用するのは避け、まずは薬剤師や医師に相談することがすすめられます。そのうえで用法・用量を守って使用し、市販薬でも改善が見られなければ病院への受診を検討しましょう。
便秘症は生活習慣が原因で生じることが多く、その場合には原因となる生活習慣を改善したり、排便を促す取り組みを積極的に行ったりすることで便秘症の解消につなげることができます。しかし、何らかの病気が原因になっている可能性があるほか、放置しているとさらに便が硬くなり、症状が悪化することもあります。
そのため、便秘が長く続いている場合、細い便が続く場合、下痢と便秘を繰り返す場合、排便時に出血するなどの症状が生じている場合も早めの受診が必要です。
医療社団法人小磯診療所 理事長
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