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肥満症の診断基準とは? ~BMIや内臓脂肪面積、病気などが判断基準になる~

肥満症の診断基準とは? ~BMIや内臓脂肪面積、病気などが判断基準になる~
小川 佳宏 先生

九州大学 大学院医学研究院病態制御内科(第三内科) 教授

小川 佳宏 先生

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肥満症は“肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測されている場合で医学的に減量を必要とする病態をいい、疾患単位として取り扱う”と定義されています。肥満とは脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態のことで、日本ではBMI25以上が肥満と定められています。肥満そのものは病気と扱われるわけではありませんが、日本では男性の32.2%、女性の21.9%*が肥満状態であるため、肥満症に該当する人も決して少なくはありません。

肥満症は放置すると最終的には命に関わる病気を引き起こす可能性があるため、適切な治療を受けることが重要です。それでは、肥満症と診断される場合はどのような基準が用いられるのでしょうか。

*生活習慣病の調査・統計 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会(最終閲覧日:2020年11月26日)

肥満症の診断基準には主に日本肥満学会が作成したガイドラインが用いられ、“肥満(BMI25以上)”に該当するもののうち、以下のいずれかに該当する場合に肥満症と診断されます。

  • 肥満に起因ないし関連し、減量治療が必要な健康障害(後述)を1つ以上有する場合
  • 腹部CT検査での内臓脂肪面積100cm2以上の健康障害を伴いやすい高リスク肥満の場合

なお、肥満の中でも何らかの病気が原因となって引き起こされる場合は“二次性肥満”と呼ばれます。また、肥満症の中でもBMI35以上の場合は“高度肥満症”と定義されます。

肥満症の診断基準に定められる健康障害には、以下のようなものがあります。

肥満症の診断のためには内臓脂肪の蓄積を評価する必要がありますが、内臓脂肪蓄積のスクリーニングとしてウエスト周囲長が用いられています。ウエスト周囲長が男性で85cm以上、女性で90cm以上であれば内臓脂肪の蓄積を疑い、CTにて詳しい蓄積状況を調べます。

肥満症の治療は食事療法、運動療法などによる減量を中心に、すでに健康障害が現れている場合はそれに対する治療が必要となります。

減量治療では単純にBMI25以下を目指すのではなく、その人が合併する疾患の状況に応じて個別に減量目標を設定します。減量目標は肥満症で現体重の3%以上、高度肥満症で5~10%を設定することが一般的です。この減量目標に応じて食事療法、運動療法といった生活習慣を改善する治療を行います。

食事療法や運動療法だけで効果が不十分である場合は、肥満症治療薬を使った薬物治療を行ったり、高度肥満症の場合は胃を切除する外科療法が行われたりすることもあります。

合併しうる健康障害は多岐にわたるため、どのような治療を行うかは疾患の種類や症状によって異なります。

たとえば2型糖尿病脂質異常症高血圧など、薬物治療が中心になるものもあれば、冠動脈疾患、脳梗塞、運動器疾患など場合によっては手術が必要になるものもあります。いずれの治療を行うにせよ、まずは肥満を改善することが重要になるため減量治療と組み合わせながら行います。

肥満症は治療が必要な病気として取り扱われており、そのままにすると肥満によって複数の健康障害が発症する可能性があります。さらに放置すると、これらの病気が進行し、脳卒中心不全など命に関わる病気を発症する恐れもあります。さらに、肥満の寿命への影響について調べた研究では、重度の肥満の人では寿命が約10年短くなる可能性があることが明らかになっています。そのため、肥満症の疑いがある場合は必ず医療機関を受診し、肥満症と診断された場合は医師と相談して治療計画を立てるようにしましょう。

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