月経量が多い、レバーのような塊がたくさん出る、夜用のナプキンをすぐに交換しなければならないといった場合には、過多月経の可能性があります。過多月経は病気が原因で起きていることもあるため、早めに検査を受けることが重要です。
今回は、国立国際医療研究センター病院 産婦人科診療科長・第一婦人科医長の大石 元先生に、過多月経の概要や治療方法などについてお話を伺いました。
過多月経が起きている原因はさまざまです。子宮筋腫(子宮にできる良性腫瘍)や子宮腺筋症(子宮平滑筋組織の中に子宮内膜に似た組織ができる病気)などの婦人科疾患のほか、子宮体がんをはじめとする悪性腫瘍が隠れている場合もあります。また、内科疾患や抗凝固薬などの血液をさらさらにする薬が原因となっていることもあります。
なお、婦人科疾患によって過多月経になっている場合には、その原因によって器質性過多月経と機能性過多月経に分類されます。
子宮に何らかの異常があって過多月経になっている場合、器質性過多月経に区分されます。器質性過多月経の主なものとして、子宮筋腫や子宮腺筋症といった良性疾患、子宮体がんなどの悪性腫瘍が挙げられます。
子宮には異常がないにもかかわらず過多月経が起きているときは、機能性過多月経の可能性が考えられます。排卵障害や原因が判然としない場合には機能性過多月経に分類されます。
過多月経は、体や日常生活に影響が出るほど月経量が多くなる病態です。1度の月経で150ml以上の月経量であることが過多月経を診断する指標の1つになっていますが、実際に容器に入れて量ることは現実的ではありません。
レバーのような塊がたくさん出る、夜用のナプキンをすぐに交換しなければならないという症状がある方は過多月経を疑ってよいと思います。また、過多月経が原因となって貧血を引き起こしていることも多いため、貧血も注意すべき症状の1つです。
これらの症状がある方は一度婦人科を受診ください。過多月経は具体的な数字をもとにご自身で判断することが難しいため、気になる症状がある方は婦人科検診の際に医師に相談いただくのもよいでしょう。
超音波検査あるいは子宮鏡検査で子宮に異常がないかを確認します。特に子宮鏡検査は子宮内にファイバースコープという細い内視鏡を挿入する検査であるため、子宮内膜に病変や変形がないかを詳細に観察することが可能です。
がんが隠れている可能性がある場合には、採取した子宮内膜の細胞を顕微鏡でさらに詳しく調べる子宮内膜細胞診検査を行います。また、超音波検査や子宮鏡検査で病気が見つかり、手術を検討する際にはMRI検査を実施します。
器質性過多月経の治療選択肢は、薬物療法と手術に大きく分けられます。薬物療法には対症療法(痛みや貧血といった症状に応じた薬で対処する治療)とホルモン療法があり、なかでもホルモン療法が行われることが多いです。器質性過多月経で行われるホルモン療法には、低用量ピル、偽閉経療法、子宮内黄体ホルモン放出システムなどがあります。
なお、器質性過多月経は原因がある程度はっきりしているため、原因となる病気を手術で根本的に治療することも選択肢の1つです。
機能性過多月経の場合は薬物療法を行うのが基本です。過多月経の原因が明らかでない場合は鉄剤や止血剤、漢方などの対症療法でまずは様子を見ます。
対症療法で症状が改善されなければ、患者さんの症状とご希望に応じて低用量ピル、黄体ホルモン療法、子宮内黄体ホルモン放出システムなどの治療を検討していくことになります。
過多月経におけるホルモン療法とは、薬を用いてホルモンのはたらきを抑える治療です。低用量ピル、黄体ホルモン療法、子宮内黄体ホルモン放出システム、偽閉経療法が主な選択肢となり、患者さんによって“合う”“合わない”があるので、症状や状況を踏まえて治療を選ぶことになります。ただし、ホルモン療法中の妊娠は困難となりますので、直近の妊娠を考えている方には不向きです。
低用量ピルは、子宮内膜症や月経困難症などに伴う過多月経の場合に使用することが多いです。通常、低用量ピルを服用している3週間は月経が起こらず、休薬している1週間の間に月経が起こるように調整しています。連続投与法という最長120日間連続して低用量ピルを内服する方法では、月経の回数自体を減らすことができるため、過多月経を減らすだけでなく月経痛をさらに軽くすることも可能と考えられます。
ただし、副作用として頭痛や吐き気、血栓症、不正出血などが起こる方もいるため注意が必要です。
ジエノゲストという薬を用いた黄体ホルモン療法は、主に子宮内膜症や月経困難症に伴う過多月経の治療に使用されます。ジエノゲストには排卵を抑制し、月経痛を軽減する効果があるため、過多月経の改善が期待できます。
しかし、不正出血や頭痛、更年期のような症状などの副作用が起こることがあります。また、重度の貧血のほか、骨密度の低下などが起こることもあるため、血液検査や骨密度検査を定期的に行うことが重要です。
子宮内黄体ホルモン放出システムとは、黄体ホルモンを放出する器具を子宮の中に入れることで月経量を減らす治療法です。低用量ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤)の場合、1度に3か月分までしか処方できません。一方、子宮内黄体ホルモン放出システムであれば最長5年間つけたままにでき、低用量ピルに比べて来院の頻度も少ないため、患者さんの負担を軽減できる治療といえるでしょう。
しかしながら、器具を体内に留置しているため、異物感が気になるという方もいます。また、少量の性器出血が続いたり、体内から器具が出てきてしまったりする可能性もあります。
偽閉経療法とは一時的に閉経状態をつくる治療法で、GnRHアナログ療法とも呼ばれます。偽閉経療法では月経を止めるので過多月経の症状はなくなりますが、更年期症状や骨密度の低下という強い副作用が現れるため、投薬期間は半年と定められています。したがって、閉経間際の場合などに検討される治療法の1つです。
偽閉経療法で用いられるホルモンの分泌を抑える薬には複数の種類があり、投与法も注射や点鼻薬、内服薬などさまざまです。そのため、どの薬を用いるかは症状を考慮したうえで患者さんと相談しながら決めていきます。
月経量は人と比べることができません。また、過多月経の方にとっては月経量が多いことが日常的な現象であるために、自覚がないまま見逃されていることが1番の問題といえるでしょう。
女性にとって月経は体調を把握するバロメーターの1つです。貧血の症状がある、またはだんだんと月経が重くなっている場合には何かしらの病気が隠れている可能性もあるため、一度婦人科を受診ください。それ以外にも、いつもの月経と違う症状がみられたら、ご自身の体の健康管理という意味でも検査を受けていただきたいと思います。
国立国際医療研究センター病院 産婦人科 診療科長
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