東京都北西部の緑豊かな武蔵村山市に位置する武蔵村山病院は、急性期から慢性期までの医療を担うケアミックス型の病院です。“断らない救急”の実践や先進的な医療機器の導入を通じて地域の医療を支えながら、病院の枠を超えた地域活動も展開しています。
地域医療における取り組みや今後の展望について、2024年7月に院長に就任された稲冨 滋先生にお話を伺いました。
当院は、70年以上の歴史を有する社会医療法人財団大和会の運営する病院の1つとして、2005年に開院しました。
内科・外科・小児科・産婦人科など18の診療科を擁し、病床は全300床(一般病棟144床<産婦人科・小児科病床含む>、回復期リハビリテーション病棟52床、地域包括ケア病棟52床、医療療養病棟52床)のケアミックス型で、7対1看護(看護師1人につき患者さん7人を受け持つ体制)の手厚い環境を備え、急性期から慢性期まで切れ目のない医療を提供しています。
新型コロナウイルス感染症の流行時には、発熱外来を設置し1日250人を超える患者さんの診療にあたりました。また、感染が確認された患者さんの入院治療にあたるため25床の専用病床を確保し、医療の提供に努めました。新型コロナワクチンの接種にも積極的に取り組み、地域の感染症医療にも尽力しました。
1日に約700人以上の患者さんが外来を受診される一方で、救急医療にも力を入れています。同法人の東大和病院との連携のもと“断らない救急”を実践し、二次救急(手術・検査や緊急入院を要する)医療機関として、年間2,500台を超える救急車を受け入れています。
また、小児救急の体制も整えており、休日・全夜間の一次~二次救急に対応しています。救急受入のうち約3割は小児の患者さんで、小児救急においても断らない救急を目指しています。
新たな取り組みとして、認知症治療の新薬承認に向けた国際治験への参加や、脳アミロイドPET検査の実施など先進的な医療提供に注力しています。また、2021年からは手術支援ロボットを導入し、前立腺がんや腎臓がんの手術を中心に使用しており、今後は消化器外科や産婦人科など他分野への適応拡大も視野に入れています。現在、消化器外科のロボット支援手術を行っている東大和病院と連携して、若手医師の育成及び確保を含めた体制強化にも力を入れています。
産婦人科には5名の常勤医師(うち2名が女性医師)が在籍しており、2024年から無痛分娩やNIPT*を開始しました。また、武蔵村山市の委託事業として宿泊型・デイケア型の産後ケアサービスも提供し、育児をサポートしています。
泌尿器科では低侵襲治療を積極的に取り入れており、ロボット支援手術だけでなくレーザー治療や体外衝撃波結石破砕術にも対応しているほか、過活動膀胱に対する治療として2020年に保険適用となったボツリヌス毒素製剤注入療法も行っています。また、前立腺肥大症に対しては複数の治療の中から患者さんに合った方法を提案するなど、最小限の負担で最大の効果が得られるような治療を目指しています。
小児科では患者さんが必要に応じていつでも受診できるよう、休日を除く月曜日から土曜日まで、午前・午後ともに一般外来を行い、受診しやすい体制を整えています。また、乳児健診や予防接種から、アレルギー外来、腎・夜尿外来、神経・内分泌外来などの専門疾患まで幅広く診療を行っています。
*無痛分娩とNIPTは自費診療となります(以下金額はいずれも2025年1月時点の情報です)。
・無痛分娩……通常の分娩費用+100,000円
・NIPT……132,000円(税込)
*NIPTは遺伝相談外来の診察料が別途必要となります。
当院では、認知症ケアや摂食嚥下・口腔ケア、褥瘡ケア、排泄ケア、緩和ケア、リハビリテーションなどの、多職種連携による専門性を活かしたチーム医療を提供しています。特に口腔ケアについては、常勤の歯科医師が在籍*し手術前の口腔ケアを実施しています。また、歯科医師を中心としたチームで、回復期リハビリテーション病棟の患者さんの摂食嚥下機能の評価や訓練、口腔機能の維持・改善などにも積極的に取り組んでいます。
*外来診療は行っていません。
当院が一般病棟のほかに、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、医療療養病棟と複数の病棟機能を維持している理由は、この地域で一貫して治療やケアを受け続けられるよう、患者さんを支えていきたいという思いがあるからです。
これらの病棟では、急性期の治療を終えた後も医療・看護処置、リハビリテーション、在宅復帰に向けたサポートなどを必要とする患者さんを受け入れています。地域の医療機関や介護施設などからのご紹介も受けており、患者さんが行き場をなくすことがないよう努めています。
また、地域包括ケア病棟では、介護者の負担を軽減し、また一時的に在宅介護が困難な状況にある方を支援するために、介護の必要な患者さんを短期間受け入れる“レスパイト入院”も積極的に受け入れています。
さらに、当院では認知症カフェや糖尿病教室、出前講座など、病院の枠を超えた地域活動も展開しています。産婦人科では性教育にも力を入れており、助産師や看護師が地域へ赴き、子どもから大人までを対象に『いのちの授業』と題して年齢に合わせた出張授業を実施しています。
“色々な働き方を認めよう”という考えのもと、時短勤務や子育て中のスタッフの当直免除など、柔軟な働き方を推奨し、子育てのライフステージにある職員のキャリア継続できる支援を行っています。現在、常勤医師の約4割が時短勤務制度を利用するなど、働きやすい職場としての環境が整ってきています。ほかにも院内保育所の設置や、出産後の女性の復職支援にも力を入れています。この活動が評価され、2015年には「東京都女性活躍推進大賞」を受賞しました。
私たちは急性期から慢性期まで幅広い医療を提供するなかで、地域医療を支える“市民のための病院”となることを使命としています。各病棟の特性を活かし、入院から在宅まで一貫して地域の皆さんの健康を見守ります。高度な医療機器や先進的な治療も重要ですが、それ以上に大切にしているのは、“患者さんに寄り添う医療”です。他院への紹介が必要な場合でも、「必要な時にはまた武蔵村山病院を受診したい」と思っていただけるような信頼関係を築いていきたいと考えています。
コロナ禍で地域の医療機関や介護施設との連携強化に取り組んだ経験を活かし、いっそう複雑化する現代の地域医療と向き合っていきます。地域の皆さんから信頼される病院であり続けられるよう、職員一同、良質で安心・安全な医療の提供に全力を尽くしてまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
*掲載している内容は2024年12月時点のものです。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。