院長インタビュー

川越周辺エリアの救急・周産期を中心とした医療を牽引する、埼玉医科大学総合医療センター

川越周辺エリアの救急・周産期を中心とした医療を牽引する、埼玉医科大学総合医療センター
別宮 好文 先生

埼玉医科大学総合医療センター 病院長

別宮 好文 先生

目次
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埼玉県川越市にある埼玉医科大学総合医療センターは、首都圏近郊の川越比企地区医療圏の中核を担う1,000床規模の“スーパージェネラルホスピタル”です。総合医療の提供に加え、救急医療、周産期医療、脳神経外科や循環器内科などに特化した診療に力を注いでいる同院は、医師の研究活動や最新治療法の導入を積極的に進めており、地域医療の発展に貢献しています。同院の特徴や目指す医療の方向などについて、病院長である別宮(べっく) 好文(よしふみ)先生にお話を伺いました。

埼玉医科大学総合医療センターは首都圏近郊の埼玉県川越市にあります。この地域は川越市を含む川越比企地区医療圏に属し、総人口は約80万人で、川越市は35万人の人口を有しています。

当院は埼玉医科大学の第二の病院として1985年に開院し、アメリカ・ミネソタ州ロチェスター市にあるメイヨー・クリニックをモデルに成長を遂げてきました。メイヨー・クリニックは患者中心主義を掲げるアメリカ屈指の総合メディカルセンターであります。また、研究機関でありながら、地域に欠かせないインフラとなっている病院であり、全世界の医療に大きな影響を与える、まさに“スーパージェネラルホスピタル”です。当院が埼玉県西部地域でこのような存在になるため、1985年6月の開設時には病院名として“総合医療センター”という名称を採用しました。当時は各診療科が明確に分かれて患者さんの診療に当たるのが当たり前であり、各科が協力する“センター”で診る発想は珍しい時代でした。しかし、徐々に医療技術が複雑化し多くの患者さんが複数の病気を持つ状況が進むにつれ、当院が提供する医療が地域の医療ニーズに応えることができる優れた病院であることが認められてきました。いまでは救急医療や周産期医療、高齢者医療などに対応する36の診療科、入院病床1,053床を有し、毎日約2,000人以上の患者さんが訪れる、埼玉県西部地域の医療に欠かせない“スーパージェネラルホスピタル”になりつつあると自負しています。

外観
埼玉医科大学総合医療センター 外観(埼玉医科大学総合医療センターよりご提供)

当院は1987年に埼玉県で2番目となる救命救急センターを開設し、1999年には全国で9番目となる高度救命救急センターに指定され、ドクターヘリ基幹病院にもなりました。その後2016年には救命搬送された患者さんを受け入れる地上4階地下1階の新棟を開設し、3次救急を担う中核的な病院として24時間365日、患者さんを受け入れています。ドクターヘリにはフライトドクターやフライトナースが搭乗し、患者さんは埼玉県全域にとどまらず神奈川県北部など県外からの要請にも応えています。

当院では一刻を争う重症の患者さん、他の病院で対応できない重篤な患者さんなどを断らず受け入れます。20床の外傷ICU(集中治療室)、32床のHCU(準集中治療室)のほか、救命救急センターでは全国初導入となった多軸方式の血管透視撮影装置Zeegoと高速CTスキャンが融合した準ハイブリッド初療室などを設置しており、救命救急センターとして可能な限り素早く対応できる体制を作っています。

埼玉県西部は東京へのアクセスが良いことから若いファミリーが多く住んでおり、周産期、小児の医療へのニーズが高い状況がありました。当院は1996年には埼玉県から小児救命救急センターに指定され、1999年には妊婦の安全を確保し、母体と新生児の危険を防止する周産期母子医療センターも開設しました。小児救急では24時間365日搬送されるお子さんに対応し、さらには他の病院で対応が難しいお子さんについても各病院との連携のもと、救急車内で救命措置を行いながら当院へ移送できる体制を整えています。

現在はPICU(小児集中治療室・小児救命救急センター)16床、NICU(新生児集中治療室)60床を備え、ハイリスクな分娩や低出生体重児に対する医療を行っており、出血が止まらない母体の救命においては年間約50例の緊急止血処置を行っているほか、480gの低出生体重児の医療にも対応しています。小児救急、周産期医療では埼玉県全域のみならず、東京都北部地域の患者さんでも都県境で救急車を乗り換えることなく当院に来ていただける連携を実現できています。

当院は1997年に埼玉県から基幹災害拠点病院に指定されており、災害発生時には24時間緊急対応を行い被災した患者さんを受け入れるほか、地域の他の医療機関へ支援を行えるよう準備をするなど、いざというときでも地域の皆様に途切れることなく医療を提供する体制を整えています。また、DMAT(災害派遣医療チーム)を擁して被災地に派遣できるようにしており、2024年1月に発生した能登半島地震でも被災地での活動を行いました。

埼玉県西部地域では高齢化が進んでおり、心血管疾患や脳血管疾患、がんなどの病気を複数お持ちのご高齢の患者さんが年々増えています。そのような状況を受け、当院でもこれらの病気に対する質の高い治療を行っています。

当院は36の診療科を設けていますが、その中でも特に力を入れているのは、循環器内科と外科の体制強化です。新しく就任したカテーテル手術専門医により、冠動脈のカテーテル手術の対応を拡充しているのに加えて、心臓外科専門医の着任により、両診療科の連携を強化し、センター化を目指しています。また、2024年度に新設される予定のハイブリッド手術室では大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)を始める予定です。TAVIは低侵襲な(体への負担が少ない)手術であり、これまでは難しかった高齢の大動脈弁狭窄症の患者さんでも受けていただけます。

また、当院の脳神経外科と脳神経内科による“脳血管センター”は脳血管疾患に対するカテーテル治療を行っています。発症後できるだけ早期に対応が求められる脳卒中についても近隣の医療機関とホットラインで緊密に連携をとって24時間365日速やかに患者さんを受け入ており、日本脳卒中学会からは一次脳卒中センター(PSC)コアの認定を受けています。

当院は地域がん診療連携拠点病院(高度型)に指定されており、検査から緩和ケアまで包括的ながん治療を提供することが可能です。

いわゆるがん治療の3本柱のうち、手術療法ではロボット手術支援システム“ダ・ヴィンチ”を導入しており、前立腺がん大腸がんを始め保険適用になっているほぼすべてに対してロボットならではの精緻で低侵襲な手術を行っています。放射線治療ではIMRT(強度変調放射線治療)などの高精度な放射線治療ができる機器を導入しており、従来よりも放射線を当てるべき場所に当て、当てるべきではない場所に当てない治療が可能となっています。化学療法では居心地のよい40床の化学療法室を持つ外来化学療法センターで、外来による治療を受けることができます。さらに当院はがんゲノム医療連携病院にも指定されており、ゲノム診療科でがん遺伝子パネル検査を受けていただいて適した抗がん剤が見つかれば、より有効な化学療法を受けていただくことが可能です。

これらのがんの治療を組み合わせた集学的治療も当院の強みとなっており、例えば呼吸器内科・外科ではステージ4の肺がんの患者さんを受け入れ、当院ならではのがん治療を行っています。

当院には“臓器移植センター”があり、生体・献腎移植、生体肝移植、膵臓移植、膵腎同時移植を行っています。

臓器移植には臓器を提供する方とされる方が必要で、臓器提供施設の病院で臓器提供を行なった後、移植施設で移植手術を行うことになります。当院は提供と移植のどちらも行える病院であり、血縁者からの移植は綿密な準備を経て、また脳死の方からの移植の場合は緊急に提供と移植の手術を行います。このような手術には多くの診療科の協力が不可欠ですが、挑戦への意欲が高い当院の多くのスタッフの支えのもと、臓器移植を行なっています。

例えば肝臓では、肝硬変や肝臓がんなどで移植が必要な状況になった場合、移植手術を行いわないと1年以内に約80%の方が亡くなってしまいます。当院で移植が行えることを多くの患者さんやご家族、医療機関にもっと知っていただき、頼っていただけたらと思っています。

当院には通算約500件の臓器提供を経験した臓器移植コーディネーターがおり、スムーズな臓器移植実現に向けて日々患者さんやご家族に寄り添っています。このコーディネーターによる出張授業を埼玉、東京、千葉の中学校、高校で行っており、さまざまな事例を交えて臓器提供や移植についてお教えし、好評をいただいています。“いのちの贈り物”と呼ばれる臓器提供、臓器移植について、社会の理解がより深まればと考えています。

当院は大学附属病院として、主に臨床での疑問をリサーチで解決する流れで積極的に研究活動に取り組んでいます。リサーマインドに溢れた真面目なスタッフが当院には多く、2022年度は日本学術振興会の科研費に約40件が採択され、約160件が継続中となっています。これらの取り組みを通じて、さらなる医療の発展に貢献したいと思っています。

 

(埼玉医科大学総合医療センターよりご提供)

当院は“スーパージェネラルホスピタルを極める”というテーマを掲げており、個々の医療技術、知識、経験の向上に努めることで、患者さんのためにできる限りのことを行いたいと考えています。病院は体調不良や精神的な苦痛、重篤な病気を抱える人たちが訪れる場所です。我々スタッフ一人ひとりが患者さんのために何ができるかを常に考えることで、来院されたすべての人に“来て良かった”と感じ、安心できる病院になれるよう、これからも地域に密着した医療を提供し続けていきます。

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