院長インタビュー

新生児から高齢者まで、“断らない医療”をモットーに地域を支える那覇市立病院

新生児から高齢者まで、“断らない医療”をモットーに地域を支える那覇市立病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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沖縄県那覇市にある那覇市立病院は、1980年に開設された伝統ある病院です。地域医療を支える総合病院として、新生児から高齢者まで幅広い患者さんを受け入れている同院の役割や今後について、理事長兼病院長の外間 浩(ほかま ひろし)先生にお話を伺いました。

外観
病院外観(那覇市立病院ご提供)

当院は1980年に那覇市立病院として誕生しました。その後、ICU(集中治療室)やNICU(新生児集中治療管理室)を設置するなど医療機能の充実を図り、現在は救急指定病院や地域がん診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センター等の指定を受けています。現在は建物の老朽化に伴う新病院の建設を進めており、2025年10月の開院を目指しているところです。

当院がある沖縄県は出生率が全国で一番高く(2023年時点)、人口も増加傾向にあります。こうした傾向はしばらく続きそうですが、高齢者人口の増加は他の都道府県と同様に進んでおり、2045年まで高齢者の医療需要は伸びると予想されています。こうした状況に対応するため、当院では呼吸器・循環器・消化器のグループや整形外科、脳神経外科など、医療需要の増加が見込まれる分野の医療体制を充実させてきました。

中でも脳神経外科には現在10名の医師が在籍しており、脳卒中を中心に脳腫瘍、その他の診療に取り組んでいます。2024年10月には新たに心臓血管外科の診療がスタートし、医療体制がますます整います。

また、医療設備も充実させており、2024年6月には手術支援ロボット“ダヴィンチ”を導入しました。ダヴィンチは先端にカメラや手術器具が取り付けられた内視鏡を体内に挿入し、術者は3Dハイビジョンシステムの手術画像を見ながら内視鏡下手術を行います。患者さんの体への負担が少ないことから多くの病院で導入が進んでおり、当院でも前立腺がん大腸がんの手術で使用しています。今後は膵臓(すいぞう)がんなど、他の症例についてもダヴィンチによる手術を拡大させていく予定です。

当院の救急科では、24時間365日体制で救急医療を提供しており、1次救急(入院や手術を伴わない医療)から3次救急(生命に関わる重症患者に対応する救急医療)まで幅広く初期救急診療を行っています。専門的な診療が可能な場合には各科への連携を行い、当院で対応が難しい場合には他の医療機関へ速やかに紹介しています。

救急科を受診される患者さんは救急車による搬送が年4,000件前後、ウォークインを含めた患者さんは年間10,000人を超し*、小児科を受診される患者さんも多いです。2018年から2021年にかけて救急科の医師が不在となり、その間は各診療科による救急診療体制となっていましたが、現在は救急科専門医(日本救急医学会認定)2名が在籍しており、重症、軽症を問わず診療を行う北米型ER救急を行っています。

*救急科受診・救急車搬送件数(2021年度実績)……受診総数:12,769人(小児科受診数:4,649人)/救急車搬送件数:4,500件

当院では救急体制を補うため“総合初診外来”を設けており、救急以外の患者さんも総合診療医のほか全科が協力して対応することにより“断らない医療”を目指しています。

また、総合診療医の育成にも力をいれています。当院の総合内科では、総合診療研修プログラム「ゆい」を持っており、総合診療専門医の取得を目指すことが可能です。今後はご高齢の患者さんの増加が予想されることから、包括的な診療を行い、地域包括ケアでもリーダーシップをとることができる総合診療医の活躍が欠かせないでしょう。

当院は沖縄県の地域周産期母子医療センターに認定されるなど周産期医療(主に妊娠22週から出生後7日未満までの期間)に力を入れており、地域の病院や他の周産期母子医療センターと連携を図りながら、沖縄県の新生児・周産期医療に貢献しています。

また、小児科専門医研修施設と専門医支援施設に認定されており、小児科専門医の育成に広範に携わっているのも当院の特徴です。診療体制も充実しており、小児科に在籍する14人の医師が、24時間体制で主に1次から2次(入院や手術を要する重症患者への救急医療)の小児救急医療を提供しています。患者さんは近隣市町村に限らず、県外や海外からも受診されるなど、沖縄県の小児医療で重要な役割を担っていると自負しています。

観光立県の沖縄県には多くの外国人旅行者が訪れており、母国語以外での会話が難しい外国人旅行者の受診が増えています。そのため、当院では早くから言語通訳クラウドサービス(24時間365日タブレット使用でコールセンター接続)を採用したほか英語・中国語の通訳スタッフを採用して、国際医療支援室を患者サポートセンター内に新設し、外国籍の方の診療体制を充実させてきました。

2024年3月には、在留・訪日外国人に充実した医療サービスを提供している証となる“外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)”の認証を取得し、外国籍の方も安心して受診いただける体制を整えています。

2025年10月の新病院開院を機に一層の飛躍を遂げるため、これまで掲げていた理念“和と奉仕”に、“地域住民を守る”というミッションと、市立病院のあるべき姿である“働きやすさ・学びやすさ”という2つのビジョン、そして、それらを実現するためのバリュー(行動指針)を新たに加えました。

バリューには“職員が幸せ・笑顔にならないと、患者さんに良質な医療を提供できない”という視点に立ち、お互いに敬意を払い、ずっと働き続けたくなるような職場づくりを目指しています。こうした取り組みが実を結び、地域の皆さんに提供する医療サービスがさらに充実すれば幸いです。

那覇市立病院は、今後も地域の皆さんが健康で安心して暮らしていけるよう尽力してまいります。また、那覇市医師会の常任理事をお任せいただいているご縁や、地域のクリニック・診療所の先生方のご協力もいただきながら、“断らない医療”をモットーに、選ばれる病院を目指して鋭意努力してまいりますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。

*診療科や医師数、医師、提供する医療についての内容等の情報は全て2024年10月時点のものです。

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