院長インタビュー

”がん治療の聖地”を目指す中部国際医療センター

”がん治療の聖地”を目指す中部国際医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

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岐阜県美濃加茂市にある中部国際医療センターは、美濃加茂市が進めるメディカルシティ構想の中核をなす病院です。がん治療や脳卒中心疾患といった、高い専門性が求められる分野を中心に、先進医療も行う同院の地域での役割や今後について、理事長である山田 實紘(やまだ じつひろ)先生に伺いました。

先方提供
中部国際医療センターご提供

 

中部国際医療センターのルーツは、1913年(大正2年)に開設された診療所・回生院です。その後、木澤病院、木沢記念病院と名前を変え、地域医療に貢献してきました。施設の老朽化に伴い、2022年にJR美濃太田駅から車で約5分の現在地へと新築移転。それを機に名称も中部国際医療センターとして、新たなスタートを切りました。

当院は、前身である木沢記念病院の時代から、がん治療に力を入れてきました。がん診断に有効なPET(陽電子放出断層撮影)装置をサイクロンと共に、岐阜県内で最初に導入したのも当院です。新築移転にあたっては、地域がん診療連携拠点病院として“がん診療の聖地を目指す”という目標を掲げました。

また、“病める人の立場に立った医療、地域から求められる新しい医療サービスの提供”を理念として、手術支援ロボット・ダヴィンチシステムをはじめとする医療機器も、積極的に導入しています。ほかにも当院は、2次救急医療機関、地域災害医療拠点病院(地域災害医療センター)などにも指定されております。そのため”断らない救急”を実現するための体制を整え、9割を超える救急応需率となっています。

当院が新築移転に当たって掲げた目標の1つが、“世界に通用する医療の提供”でした。中部国際医療センターという新名称にも、その思いが込められています。ただ、目標実現のためには、福祉や介護、地方自治体など、医療を取り囲むさまざまな地域団体との連携も欠かせません。当院の新築移転も、美濃加茂市が進めるメディカルシティ構想に沿った形で進められてきました。敷地内には、美濃加茂市保健センターや救急ワークステーション、当院が運営する健康増進施設なども開設されています。

このエリアは、これまで住所でいうと蜂屋町の一部でしたが、当院の新築移転に伴って町名が”健康のまち”に変更されました。当院の住所も、岐阜県美濃加茂市健康のまち一丁目1番地となっています。これからも、高度な医療サービスを提供するのはもちろんのこと、当院スタッフや地域が一丸となって地域の方々の健やかな生活をサポートしていきます。

当院では一般的な診療科目以外に、専門医が診療科の垣根を越え連携して診療にあたる高度専門医療部門を設けています。専門医療部門には救急医療センター、循環器病センター、脳卒中センター、腎センターなどがあり、疾患の早期発見や迅速な治療を心がけています。

がん診療の聖地を目指す”という目標を実現するため、当院ではがん専門医療部門を設けています。その中でさらに、消化器がんセンター、肺がん治療センター、前立腺がんセンター、乳癌治療・乳房再建センターといった形で、がんの種類や部位ごとに診療を行っています。

それぞれの専門分野でがん治療に携わってきたスタッフが、診療科を越えてチームを結成。患者さん一人ひとりに合わせて、迅速な診断と最適な治療を提供できるよう尽力しています。

近年では、遺伝子情報を読み取ってがん治療に役立てる、がんゲノム医療が注目されています。当院でも、慶應義塾大学病院と連携して、がんゲノム医療を行っています。すべてのがんに適用できるわけではありませんが、近隣だけでなく遠方から訪れる患者さんもいらっしゃいます。

国際的に見ても質の高い医療サービスを提供できるよう、当院では新しい医療機器などを積極的に導入しています。2001年に導入したPET診断装置を皮切りに、PET-CT、SPECT-CT、320列CT、IMRT(強度変調放射線治療)装置などを取り入れてきました。

手術室は11室で、一般的な外科手術のほかカテーテル手術にも対応できるハイブリッド手術室もあり、内視鏡下手術支援ロボット・ダヴィンチも2台設置しています。

救急部門では初期治療を迅速に行うため、救急エリア専用のCTやMRIなど検査機器を設置しています。事故や災害の現場で初期治療が行えるよう、ドクターカーも運用しています。

中部国際医療センターご提供

がんに対する標準治療の1つに、放射線治療があります。放射線治療では、がん細胞以外にも放射線が照射されてしまうことで、副作用が伴うことがあります。

こうした状況を変えたのが、陽子線がん治療です。陽子線は、目標となるがん細胞に到達した時に最大エネルギーを放出します。その後すぐに停止するため、周囲の正常な細胞への影響を最小限に抑えられます。いわば、がん細胞のみ狙い撃ちする治療法といえるでしょう。治療にかかる時間も1回10〜15分程度で、外来で治療ができるため、仕事を休まず治療を受けることもできます。

当院では、アメリカ・バリアン社製の陽子線がん治療装置”ProBeam360°”を国内で初めて導入しました。ProBeam360°はその名の通り360度さまざまな方向から陽子線を照射できるだけでなく、腫瘍の形や大きさに合わせて照射するスポットスキャニング方式を採用しているため、周囲の正常な細胞へのダメージを軽減しつつ、効果的な照射が期待できます。

陽子線がん治療センターの施設長を務める不破信和先生は、南東北がん陽子線治療センター長、兵庫県立粒子線医療センター院長などを歴任し、陽子線治療について10年以上の経験を持っています。先進的医療設備を整えるだけでなく、それを効果的に運用できる人材がそろっているので、患者さんには安心して治療を受けていただくことができると思います。

陽子線がん治療については、公的医療保険の範囲内でできるケース、入院費や検査料のみ保険診療となる先進医療のケース、治療費すべてが自費となる自由診療があり、がんの部位や症状によって変わってきます。

*陽子線治療について

陽子線治療はすべての病気に対して行える治療法ではありません。陽子線治療に適しているかどうかは医師が総合的に判断します。また、対象となるがんにより、保険診療または先進医療扱いとなり、それぞれの自己負担額が異なります。

先進医療の場合:自己負担額350万円(非課税)、自費診療の場合385万円(税込)

私は脳外科医として長く勤めた経験から、患者さんにできるだけ多くの治療方法を提示し、その中から患者本人にとってベストなものを選択してほしいと考えています。同じ疾患を抱えていても、患者さんのライフプランや家庭環境などによって、ベストな治療方法は異なるでしょう。しかし、そもそも選択肢がないのでは、選びようがありません。

当院では標準治療だけでなく、自由診療も積極的に取り入れています。すべての患者さんに一律のレベルの治療を提供するのではなく、患者さんが自分にとってベストだと考える医療サービスを選択できてこそ、本当の意味で患者さん本位の診療と考えるからです。

豊富な選択肢を実現するためには、充実した設備の整備はもちろんのこと、設備を効果的に運用できる医療スタッフも確保しなければなりません。ただ、当院には、新しい医療機器に触れたい、技術を学びたいと考えるスタッフが集まってきます。すると、扱う症例数も自然と増え、やがては経験豊富なベテランに育っていきます。現在の当院は、そのサイクルがうまく回っている状態といえるでしょう。

また、以前からあったあじさい看護福祉専門学校を、2024年から中部国際医療学院に名称変更しています。卒業後は当院に就職できる体制を作り、経験を積んで成長できるようにしました。看護師の中には、EPA(経済連携協定)制度によって、海外からやってきた看護師もいます。当院で経験を積むことで、将来的には自国の医療環境の充実にも貢献することでしょう。

これからも、患者さんが安心して高度な医療サービスを受けられるよう、さらに努力していきたいと思っています。それがなによりの地域貢献であり、国際的に通用する医療であると信じています。

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