院長インタビュー

小児から成人まで幅広い医療を提供、地域とともに歩む四国こどもとおとなの医療センター

小児から成人まで幅広い医療を提供、地域とともに歩む四国こどもとおとなの医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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香川県善通寺市仙遊町にある四国こどもとおとなの医療センターは、地域に密着した医療を提供する地域医療支援病院であり、香川県の総合周産期母子医療センターにも指定されている病院です。同院の地域における役割や今後について、院長の前田 和寿(まえだ かずひさ)先生に伺いました。

当センターの歴史は明治時代にさかのぼります。明治30年に創設された香川小児病院と善通寺病院が統合されて、2013年に独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センターが発足。この統合により、成人医療と成育医療、重症心身障害児(者)に医療を提供できる特徴ある病院になりました。
当センターが位置するエリアは自然に恵まれ、療養に適した環境です。四国4県の各県庁所在地から2時間以内という交通上の中心地点にあり、JR善通寺駅からタクシーで約5分、高速道・善通寺ICから約7分で交通至便です。
成育医療部門では、香川県の小児救命救急センター、総合周産期母子医療センターとして、県民のみならず愛媛県東部、徳島県西部、高知県より幅広く3次救急を含む医療を提供しています。成人医療部門では、医療圏の中核的な病院として救急医療、循環器病・脳卒中センター、骨・運動器センターなどを開設しています。

当センターの診療科は“こどもとママ”“おとな”に分かれています。前者は小児科・新生児内科・小児神経内科・小児循環器内科・小児呼吸器内科・小児アレルギー科などがあり、後者は内科・消化器内科・内分泌・代謝内科・循環器内科・呼吸器内科・リウマチ科などがあり51の診療科が揃っています。また、当センターは国立病院機構であるため、重症心身障害など他の医療機関ではアプローチが困難な分野の医療も提供しているのが特徴です。

先方提供
病院外観(四国こどものおとなの医療センターご提供)

四国こどもとおとなの医療センターでは、救急に力を入れています。近年は搬送依頼が増えており、2024年現在で依頼が5年前と比べて約1.5倍になりました。全国に小児救命救急センターは少なく、当センターはそのうちの1つとして“断らない”をモットーに受け入れています。香川のみならず四国において、ここは当センターがリードすると自負しているところです。また3次救急も受けており、急病に対応する診療等を24時間365日体制で提供しています。

当センターは2003年、国立病院機構ではじめて“総合周産期母子医療センター”(周産期の母子を対象とした医療を行う施設)となりました。前身が小児病院だったこともあり、小さい赤ちゃんだけでなく、心臓に異常がある外科系のこどもの疾患も扱っているのが特徴です。四国でこどもの心臓を診られるのは当センターだけですので、小児外科系、血管外科系は他県からも多数受け入れています。
また小児NICUは多くの症例数をもっており、周産期死亡率、新生児死亡率も低い値を保っています。さらに総合周産期母子医療センターでは遺伝、出生前診断ともタイアップして難しい診断をすることもあり、遺伝子カウンセリングや遺伝子診断などを行っているのも強みです。

循環器病・脳卒中センターも、四国こどもとおとなの医療センターが力を入れている部門の1つで、おもに脳梗塞(のうこうそく)、脳内出血、脳腫瘍(のうしゅよう)などの脳外科疾患と、狭心症心筋梗塞大動脈解離などの循環器疾患に対する医療を提供しています。これらは一刻を争う病気であることが多く、急性期の治療に全力で当たっている他、各診療科や職種を超えた連携による回復期の治療やリハビリテーション、さらには当センターでの治療が終わった後の退院調整も地域医療連携室とともに行います。スムーズな社会復帰をめざして、継続治療、継続看護が行われるように支援も行っています。

当センターでは、医療の地域連携をとても大切にしています。それはたとえば、日常的な予防や治療、健康管理はかかりつけ医にお任せし、専門的な治療、入院などが必要になった場合にはかかりつけ医から当センターへ紹介していただく。当センターでの治療によって患者さんの症状が安定し回復されたにはかかりつけ医への逆紹介し、住み慣れたご自宅で療養いただく、という仕組みです。これは患者さんを地域全体で診させていただく仕組みであり、各医療機関はそれぞれの強みを活かして診療を行い、患者さんは住み慣れた場所で医療を受け続けられるという、未来志向の医療の形といえるでしょう。地域の皆さんにはこの仕組みにご理解をいただき、ともに手を携えて質の高い医療を作っていければ幸いです。

またアートに力を入れているのも、当センターの大きな特徴です。院内に存在する全てのアートは、“患者さんの快復と幸せを祈る医療スタッフの想いの結晶”です。治療中でも自然の持つエネルギーに触れてほしいとの想いから、院内にさまざまな形で“自然のかけら”を取り込んだアートが配置されています。アートは地・水・火・風・空という5つのテーマで作成され、当センターを穏やかに彩っています。その数々はホームページでも紹介しているのでぜひご覧ください。
これからも当センターは、総本山善通寺、善通寺市、善通寺商工会議所、陸上自衛隊善通寺駐屯地など地域とのコラボにより、さまざまなアートの企画を考えていきます。

院内に飾られているアート(四国こどものおとな医療ご提供)

“私たちは あたたかいこころと思いやりを持って いつもみなさまと共にあゆみます“をモットーに、四国こどもとおとなの医療センターの職員は、地域や医療機関のみなさまから信頼される病院でありたいと願っています。
私はそのために、コミュニケーションが大切だと考えます。「人をみてください」「患者さんはモノではありません」「和を大切にしてください」と私はいつもスタッフに話しています。患者さんも先生も人であり、SNSでは人の表情が見えません。本当はどう考えているのか、マニュアル通りやっても分からないことがあります。その人に合わせた加減が必要ですが、隣にいる人ともチャットする今の時代には、昔は当たり前だったことが難しいこともあります。しかし医療だけは、やはり相手はパソコンや機械ではなく人ですから、会話ができないと衝突も増えるでしょう。患者さんと話をしてよりよい関係を築く。アートを通じて患者さんや地域の人と心を通わせる。四国こどもとおとなの医療センターは、人と人とのコミュニケーションをこれからもずっと大切にしていきたいと考えています。

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