院長インタビュー

全人的医療でQOL向上に取り組む愛知医科大学病院

全人的医療でQOL向上に取り組む愛知医科大学病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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愛知県長久手市にある愛知医科大学病院は、愛知県の救急・災害医療の中枢拠点や特定機能病院として幅広く地域医療に貢献している総合病院です。

2024年には開院50周年を迎え、がんゲノムなどの先進医療のほか多職種連携によるチーム医療にも取り組む同院の地域での役割や今後について、病院長である道勇(どうゆう) (まなぶ)先生に伺いました。

2024年に開院50周年を迎えた当院は、これまで一貫して地域の皆さんに安全で質の高い医療を提供してきました。2014年には新病院を開設して最新鋭の医療機器を導入し、手術部門や救急・集中治療部門の医療体制をさらに強化しています。また、通常の診療科部門に加え、各種スペシャリストを擁して集学的医療や高度先進医療に特化したセンターを数多く設置しています。

当院は特定機能病院、地域がん診療連携拠点病院やがんゲノム医療連携病院に指定されています。また救命救急センターは愛知県の高度救命救急センターに定められており、重度の熱傷や急性中毒などの特殊な救急疾患に対しても24時間365日の対応に努めています。さらに、当院はドクターヘリ基地病院と基幹災害拠点病院でもあるため、愛知県における救急・災害医療の最後の砦として日々救急医療に奔走しています。

当院のある愛知県長久手市は県内有数の文教地区であり、なだらかな山地や河川が続く自然豊かな土地柄です。隣接する名古屋市へのアクセスも良く、若い世帯の転入が続いて年々人口が増加しています。2022年には愛・地球博記念公園内にジブリパークがオープンし、全国から注目を集めています。

当院の救命救急センターは愛知県の高度救命救急センターに指定されており、地域医療ネットワークの中枢施設として幅広く患者さんを受け入れています。長らく第三次救急医療機関として救急医療に携わってきましたが、2011年からは第一次、第二次対応の救急車も受け入れ、切迫する医療ニーズに対応しています。

愛知県では当院を基地病院として、2002年から全国で4番目にドクターヘリ事業を始めました。これまでに当院はドクターヘリを20年以上稼働させ、年間で約350回にのぼる出動により救命率の大幅な向上に貢献しています。

さらに災害医療について、当院は愛知DMAT(災害派遣医療チーム)指定医療機関や基幹災害拠点病院に指定されており、災害現場での救命処置や重症患者の広域医療搬送などに取り組んでいます。

当院は、救急要請を受けたすべての患者さんに対応できるよう、搬送前の応急処置から受け入れ後の治療にいたるまで、強固な医療体制を構築しています。主に初期診療を行う救急初療室 (ER)をはじめ、集約的に治療する重症救急患者管理部門(EICU)や中等症救急患者管理部門 (HCU)などの専門チームが連携して治療にあたります。

これらの医療チームに加え、さらなる救急医療体制の拡充に向けて救急管理棟と経過観察病棟(TACU)を開設しました。14床からなるTACUは、救急搬送された患者さんに対して日をまたいだ経過観察を行っており、全国的に見ても珍しい取り組みかと思います。また愛知県から重症外傷センターの指定を受け、ハイブリッドERも設置しました。これによってCT検査やカテーテル検査などの診断と治療を同時進行で行えるようになり、患者さんの負担を大幅に軽減しています。

近年の傾向として、複数の疾病を合わせもつ患者さんが増加しており、“全身を診る”重要性がこれまで以上に増しています。当院では、循環器内科とリハビリテーション科の連携による心臓リハビリテーション医療のように、診療科を横断した専門性の高いリハビリテーション治療を提供しています。

また当院は、治療の早期からのリハビリテーションが重要であると考え、集中治療室の段階から積極的にリハビリテーション治療を行っています。急性期のリハビリテーションについては、療法士を増員し、さらなる医療体制の拡充に取り組んでいるところです。

さらに運動やスポーツを含めた広義のリハビリテーション医療を推進することで、心身の不自由や障害を持った患者さんのQOL(生活の質)も向上できるように取り組んでいます。

当院は、血液や組織などを保存して医学研究に役立てる“バイオバンク”に取り組んでいます。当大学主導で地域の皆さんから採血を行うなど積極的に検体を入手し、特に前立腺がんの検体を多く所有しています。バイオバンクで集めた検体やデータは、当院のゲノム医療センターや臨床腫瘍センターとも共有し、がん治療の研究に活用しています。

バイオバンクに関する国内の研究機関は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に登録されている当院を含めて約50施設です。これらの研究施設は、集めた体内組織やデータを共有しながら、がんなどの原因究明や新たな治療法の確立に努めています。

当院では、難病に指定されている筋萎縮性側索硬化症ALS)についても検体を液化窒素で保存しており、バイオバンクを通じて病気の原因究明に努めています。

当院は、特定機能病院として医療の質を向上するために人材育成を重視しています。近ごろは、特に看護人材の育成に力を入れ、連携している地域の17病院との間で看護師の相互交流研修を行っています。これにより、それぞれの病院の看護の現場から学べるだけでなく、教え合うことで看護のスキル向上やキャリアアップも実現します。さらに、施設間の看護師が連携することで、地域看護の質の向上にもつながります。

このような取り組みは“看看連携”と呼ばれていて、地域医療の発展において欠かせないものです。当院は地域連携を理念に掲げていますので、これからも近隣の医療機関と共に患者さんへのシームレスな医療を提供していきます。

また当院では、看護師による夜間の看護を補助するため、医学生と看護学生からなる“愛Crew”が活躍しています。特に夕方から夜にかけて看護の業務が集中するため、愛Crewのおかげで看護師の負担軽減のほか、患者さんへの手厚いサポートを行えるようになりました。現在、専門的な研修を受けた約200名の愛Crewが365日体制で夜間の看護に励んでいます。

当院は、分院である愛知医科大学メディカルセンターをはじめ、地域の医療機関や介護施設とも連携し、これからも包括的で質の高い医療を提供していきます。また、地域の基幹病院として皆さんからより一層の信頼を得られるよう、職員一丸となって安心、安全な医療に全力で取り組んで参ります。

当院はこれからも医療体制を拡充していきますが、一人ひとりの患者さんと向き合いながら堅実な地域医療に努めて参ります。

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