岡山旭東病院は、1983年11月に旭東整形外科医院として開院し、1988年に「岡山旭東病院」に名称変更をして診療科や病床数を増やしながら成長してきました。現在では、脳・神経・運動器疾患に強みを持つ専門的な病院として、地域の人々を真摯に支えています。同院の特徴や取り組みなどについて、院長の吉岡 純二先生にお話を伺いました。
当院は、1983年11月に旭東整形外科医院として開院しました。当初は病床数19床の小さな整形外科医院でしたが、1988年に現在の“岡山旭東病院”と改称した際に102床へ増床し、その後も成長を続けました。現在では脳神経外科、整形外科、脳神経内科をはじめとした13診療科と214床の病床を備える、脳・神経・運動器疾患の専門的な病院として地域の人々を支えています。
領域を絞った病院として医療サービスの質を高められるよう、その時々で新しい医療機器の導入や医療技術の刷新を積極的に行うだけでなく、職員の研修やeラーニングなども推進してきました。さらに患者さんに安心して治療や療養に臨んでいただけるよう、チーム医療による連携体制の強化や療養環境の整備などにも努めています。
当院は2011年に岡山県より“地域医療支援病院”の承認を受け、患者さんが身近な地域で必要な医療が受けられるよう、救急患者の受け入れや地域の医療機関とのスムーズな紹介・逆紹介の推進など、医療連携の強化に努めてきました。
コロナ禍では、当院が受け持つ患者さんの新型コロナウイルス感染症にも対応できるよう、発熱外来や新型コロナウイルス感染症に対応する病床をつくりました。このような取り組みの根底には、当院が地域医療支援病院に指定された意味を見つめ直し「地域の方々が住み慣れた地域で医療を受けられる環境づくりに寄与するべき」という強い思いがあります。2019年に一般財団法人から公益財団法人となったことで、ますます公共性の高い運営の必要性を感じています。
脳神経外科では、幅広い脳神経疾患の診療を行っています。対象疾患は、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血、未破裂脳動脈瘤、もやもや病、頚動脈狭窄症、脳や脊髄の腫瘍、顔面けいれん、三叉神経痛、頭部外傷などです。必要に応じて、岡山大学病院をはじめとする近隣の医療機関とも連携しながら診療にあたります。MRI機器4台、CT、PET-CT、SPECT、DSAなどの多くの画像診断機器に加え、サイバーナイフ(ロボットアーム先端の放射線治療装置が体を囲み、ピンポイントで放射線を腫瘍に照射する治療装置)も備えています。
また、2021年4月には“FUS(MRIガイド下集束超音波療法)”を開始しました。FUSは、薬物治療では十分な効果が得られない本態性振戦(明らかな原因がない、体のふるえ)やパーキンソン病に伴うふるえの治療で、ふるえ症状の原因となる脳内部位をMRI画像から確認し、頭の外側から超音波エネルギーを集中的に照射し、熱凝固して症状を改善させる治療法です。従来の治療法と異なり、脳に医療器具を刺したり電極を埋め込んだりする必要がないため、術中の脳内出血や感染症のリスクが低いというメリットがあります。薬物治療で症状が改善しなかった患者さんにとって大きな希望となる治療です。実際、県内のみならず県外からも当院へ患者さんが訪れています。
当院では、運動器(骨、筋肉、関節、神経などの総称)の慢性的な疼痛に対する運動器カテーテル治療(自由診療*)を行っています。運動器疼痛では、痛みの原因部位に異常な血管が存在することが確かめられています。血管造影画像などでモヤモヤしたように見えることから“モヤモヤ血管”と呼ばれています。
運動器カテーテル治療は、血管内にカテーテル(医療用の管)を挿入して、痛みの原因となっているモヤモヤ血管に薬剤を注入することで、痛みを緩和する治療法です。診察と検査により、治療の適応を検討します(適応とならない場合もあります)。治療当日は心電図や血圧計を装着後、局所麻酔で治療を開始します。所要時間は2時間ほどで入院は不要です。治療後はベッドで安静にして、医師の説明を受けた後に帰宅可能です。この治療による副作用とリスクは、皮膚の色調変化(動脈内に薬剤注入によるもの)、阻血状態に起因する痛みや違和感、刺入部位の皮下血腫(青あざや硬結)、針刺しによる知覚異常、操作に伴う感染症、血栓や動脈解離、使用する抗生物質や局所麻酔剤のアレルギー反応などですが、いずれも頻度は低く、そのほとんどは一過性です。
*岡山旭東病院における運動器カテーテル治療の費用(全て税込)
五十肩、肩こり、首こり片側:324,500円
五十肩、肩こり、首こり両肩:401,500円
診察費用:初診察費用7,700円、再診察費用:5,500円(目安:治療後1~4回)
当院は、患者さんの治療に全力を尽くすことに加え、患者さんに癒しを感じていただけるような環境づくりにも力を入れてきました。たとえば、美しい生け花、壁面アートや写真、絵画、開放感あふれる屋上庭園、めだかが泳ぐ姿を楽しみながらリラックスできる“めだかの学校”という温室、新聞や小説、実用書、児童書、マンガなど約5,000冊を取りそろえる“患者様ライブラリー”など、院内の各所に癒しの空間を設けています。
当院へお越しになる患者さんの快適さを追求するべく、2021年に“旭東San”という病院の公式アプリ(サービス)をスタートしました。旭東Sanを使うと、お手持ちのスマートフォンやパソコンで、外来診察の待ち状況の確認やスマートフォン問診、人間ドックの予約などが可能になります。そのほか、入院に関する案内、健康情報の動画やイベント情報、広報誌、院内アートの情報などもアプリで閲覧でき、便利になりましたので、当院へお越しの際はぜひお気軽にご利用ください。
岡山市は2023年の高齢化率が27%と県内でもっとも低く、少子高齢化の影響はほかの地域に比べて少ないかもしれません。しかし、確実に高齢化の波は押し寄せています。実際、骨折の患者さんや腰椎手術が必要な症例が増えた影響もあり、当院の整形外科における手術件数は2,258件(2023年1月〜2023年12月)と過去最大の件数を記録しました。このような経緯を見ても、脳・神経・運動器疾患の診療に特化した当院の地域における重要性は今後さらに高まることが推測されます。
当院は幸いにも、高い協調性や自主性を持つ職員に恵まれています。日常の医療現場にも、その活気や熱意が浸透していることでしょう。そのような組織としての強みを生かしつつ、職員一同歩みを止めずに地域の皆さんによりよい医療を提供できるよう努める所存です。