院長インタビュー

がん・循環器・小児・周産期医療に専門性を発揮する岡山医療センター

がん・循環器・小児・周産期医療に専門性を発揮する岡山医療センター
佐藤 利雄 先生

岡山県健康づくり財団附属病院 非常勤医師

佐藤 利雄 先生

この記事の最終更新は2018年02月07日です。

独立行政法人 国立病院機構 岡山医療センターは、岡山市北区に位置する急性期病院です。幅広い疾患の専門医療と研究活動に取り組み、開院以来、岡山市及び周辺の医療を支えてきました。

現在は、地域医療構想の完成に向けて、基幹病院として地域連携の強化に努めています。同センターが注力する取り組みや、目指している地域医療連携の形について佐藤 利雄院長にお話を伺いました。

 

当センターの歴史は、1907年に「岡山衛戍病院」として設立されたのが始まりです。その後1936年には「岡山陸軍病院」と改称しました。戦後1945年には国に移管され「国立岡山病院」となりました。また、1978年には二次救急医療機関の指定を受けています。2001年には、現在の岡山市北区田益に移転し、2004年には「独立行政法人岡山医療センター」に改称、現在に至ります。

当センターは2012年より、大学病院本院に準ずる医療機関である「DPCⅡ群病院」に指定され、29の診療科すべてにおいて急性期治療を完結できる体制を整えています。国立病院時代からの伝統を受け継いだ循環器医療と岡山県総合周産期母子医療センターの指定を受ける小児周産期医療にも注力しています。また、それぞれの臓器別に内科系と外科系の診療科が同じ病棟でチームを組み、幅広い疾患に対応しています。

 

当センターは、急性期医療に特化しているため、病状が落ち着いた回復期の患者さんには、地域の適切な医療機関に転院いただいています。これは、厚生労働省が都道府県と共に進めている「地域医療構想」を意識し、医療機関同士の連携と機能分担を推し進めるための取り組みでもあります。

 

2018年現在、当センターの平均在院日数は10.7日であり、紹介率は65.3%、逆紹介率は91.7%となっています。また、手術件数は年間6,024件の実績があり、分娩件数は年間594件となっています。

 

当センターが注力する診療のひとつが、がん医療です。肺がん消化器がん、血液腫瘍、乳腺甲状腺がん、泌尿器がんなどのさまざまながん診療に取り組んでいます。特記すべき医療としては、患者さんの身体への負担が少ない治療として、胸腔鏡、腹腔鏡の使用はもちろんですが、がんによる気道狭窄に対して行う硬性鏡や気管支鏡を用いたステント治療(筒状のステントを狭くなった気道に挿入し狭窄部位を押し拡げ、空気の通り道を確保する)、甲状腺がんに対する鏡視下手術、放射性ヨード治療などがあります。また、比較的希少な多発性骨髄腫に対する専門的治療を受けることのできる施設でもあります。

 

当センターは、ハイリスク分娩・超低体重児に対する専門性の高い周産期医療に尽力しています。母体・胎児集中治療部門(MFICU)6床と、新生児部門(NICU)18床を有し、24時間体制でハイリスク妊産婦・新生児の受け入れが可能です。

 

循環器疾患の診察は、国立病院時代からの歴史があり、当センターでは、ほとんどの成人の心臓病に対応しています。特記すべきは、循環器内科では難病である「肺高血圧症」に対して、血管拡張薬を用いた独自の治療法や、新しいカテーテル治療を実用化し、優れた治療成績をあげています。心臓血管外科においても24時間365日体制で緊急手術に対応しています。一方、胸・腹部の大血管に対する治療として身体への負担が少ないステントグラフト挿入術も導入しています。

また、患者さんの心臓疾患への理解を促し、運動指導・安全管理・危険因子管理・心のケアなどを総合的に行う「心臓リハビリテーション」の分野においては、日本心臓リハビリテーション学会認定の研修施設に認定されています。

 

呼吸器疾患の治療には専門性が求められるケースが多数あります。当センターでは、呼吸器内科担当医が6名、呼吸器外科担当医が3名、放射線担当医が4名、さらに後期研修医が数名在籍しており、手厚い診療体制を整えています。肺がん治療では、基本となる手術・放射線・化学療法のほか、超音波気管支鏡検査、気管・気管支病変に対する硬性鏡下治療・ステント留置術(呼吸器)などの実績があります。また、難治性の気管支喘息を治療する気管支鏡下サーモプラスティーなど、新しい治療にも積極的に取り組んでいます。

 

当センターの整形外科は、背椎・脊髄外科、関節外科を中心に治療を行っており、この分野では我が国のオピニオンリーダー的に活躍しています。

 

背椎・脊髄外科では2018年現在、年間手術件数が約600件あり、内視鏡下腰部椎間板ヘルニア摘出手術、最小侵襲腰椎前方固定術、内視鏡下胸椎固定術などの専門的な手術を行っております。

関節外科では、人工関節置換術を積極的に行っています。特に肩関節においては、腱に疾患があっても肩関節挙上が可能なリバース型人工関節をいち早く導入し、実績を重ねてきました。

外傷外科においては、より低侵襲な手術法の開発、3Dイメージを使用した専門的手術、また、ナビゲーションシステムを組み合わせた骨折手術を導入しています。

 

当センターは、1988年の腎移植手術開始以来、2018年現在まで延べ約350例の手術を行ってきました。腎移植が可能な施設のひとつとして、精力的に実施しています。

また、骨髄バンクおよび臍帯血バンクの認定施設であり、1991年には成人の造血幹細胞移植を導入しました。特に多発性骨髄腫における造血幹細胞移植に関しては、力を入れて取り組んでいます。

 

当センターは、臨床研修指定病院や外国医師臨床修練指定病院に認定されています。肺高血圧症などに対する循環器医療や、脊椎・脊髄外科の手術など、国内外から医療従事者が研修・視察に訪れています。

 

2018年現在、初期研修医は32名の医師が在籍し、新専門医制度では内科・外科・総合診療科の専門研修基幹施設に指定されています。

 

当センターの臨床研究部では、成育医療(妊娠・出産・新生児・小児・思春期医療を含む)、循環器医療(心臓疾患・脳血管障害)及び移植医療(腎臓、骨髄)を中心とした高度先端医療の研究に邁進しています。

 

地域包括ケア医療・在宅医療のニーズが大きくなっているなか、急性期病院の当センターが地域医療に貢献するためには、地元の他医療機関との病診連携や病病連携の強化が重要となります。

 

当センターは地元の御津医師会と岡山中央病院、金川病院をはじめとした10の病院と連携する「岡山市北部地域合同連携デスク」を2015年4月に設立し、当院にハブ電話を設置して患者紹介の際の疾患重症度に基づくトリアージを行う体制を構築しました。

 

2016年6月には「岡山市北部地域病診医介ネットワーク会議」として、在宅医療に従事する関係者や病院調整関係者がつながるネットワークを立ち上げ、病床の振り返りや運用面の改善など、連携体制のさらなる強化を図り、地域包括ケア完成のために活動しています。

 

地域の方々に医療をより身近に感じてもらうことを目的に、オープンホスピタルである「病院フェスタ」を毎年開催しています。災害医療についてわかる消防展示や、普段なかなか見る機会のない手術室の探検、外科手術体験コーナーなどの参加型企画が見所です。

 

 

佐藤 利雄院長

当センターは「患者さんが安心して受診できる病院」、「命の瀬戸際になったときに頼っていただける病院」でありたいと思っています。これからも地域に根ざし、みなさまの役に立てる医療の実現を目指してまいります。