低音の耳鳴り:医師が考える原因と対処法|症状辞典
帝京大学医学部附属溝口病院 耳鼻咽喉科 教授/科長
白馬 伸洋 先生【監修】
耳鳴りとは、実際には発生していない音が耳に聞こえている状態です。聞こえる音はさまざまですが、低音が聞こえにくくなったときには耳鳴りを自覚することもあるため注意が必要です。
耳鳴りは、水泳の後や飛行機に搭乗したときなどに、鼓膜の奥にある中耳腔気圧の調整がうまく行われないことで生じる場合があります。このような場合の多くは時間が経過すれば自然と解消されますが、耳や自律神経に関連する病気が原因で発生していることもあります。
このような症状が続く場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。
耳鳴りの原因が、日常生活での行動や習慣にある場合もあります。
仕事や育児、人間関係などから発生するストレスや疲労は自律神経を乱し、耳鳴りを起こす原因となることがあります。
好きなことをする時間をつくる、お風呂でリラックスする、運動をするなど、それぞれの方法でストレス解消に努めましょう。何もしないでぼーっとすることも立派なストレス解消法のひとつです。
疲労に対しては日々の休息の取り方が大切です。なるべく規則正しい生活を送り、疲れが取れる睡眠時間を確保するようにしましょう。仕事とプライベートをしっかり分けることも疲れをためないポイントです。
睡眠不足もストレスや疲労と同様、自律神経に悪影響を与え、耳鳴りの原因になります。
まずは一定の時間に寝て起きる習慣を身につけ、適切な睡眠時間と質のよい眠りを確保できるようにしましょう。また、普段からカフェインやアルコールなど、脳を刺激して睡眠の質を下げるものを取り過ぎないようにすることも大切です。
適度な運動やゆったりとした入浴も、質の高い睡眠を得るために効果的です。
耳鳴りが続くと想像以上のストレスになり、生活の質を下げてしまう可能性があります。自分でできる対処法を試しても症状に改善が見られないときは、一度医療機関を受診するようにしましょう。
耳鳴りはある日突然気圧の変化によって起こることもありますが、症状の出方や随伴症状によっては突発性難聴やメニエール病などの病気が原因である可能性があります。
耳は外側から外耳、中耳、内耳で構成されています。中耳炎は、中耳に細菌やウイルスが感染して炎症を起こす病気です。風邪などが発症のきっかけとなることがあります。
耳鳴りや耳の痛みが生じるほか、難聴、耳閉感、耳から膿が出る耳漏などの症状を伴うことがあります。
耳管(耳と喉をつなぐ管)が短い子どもの発症頻度が高い傾向にあります。
内耳にある内リンパ液の調整ができず、平衡感覚に異常が生じて吐き気やめまいを発作的に繰り返す病気です。
発症すると「ゴー」や「ボー」といった比較的低音の耳鳴りや吐き気、めまいのほか、難聴、耳閉感などの症状が現れることがあります。
30代~40代の、比較的若い世代に多く発症するといわれています。明確な発症原因は特定されていません。
突発性難聴とは、突然耳が聞こえにくくなる病気です。難聴のほか、めまいや耳鳴りを伴うことがあります。明確な発症原因はわかっていません。
治療しても完全に聴力が回復しないことがあるため、症状が出てから一週間以内など、早めに治療を開始することが大切です。
低音だけが聞こえにくくなったり、耳閉感が現れたりする病気です。低音の耳鳴りを伴うこともあります。症状がメニエール病と似ていますが、めまいは伴いません。
耳管狭窄症とは、風邪などで耳管が腫れて狭くなり、耳閉感や耳鳴りが起こる病気です。中耳の状態によっては中耳の粘膜から滲出液が出ることもあります。
他方、耳管開放症とは、通常は閉じている耳管が開放状態になる病気です。耳管が開いているため、自分の声や呼吸している音が不快に感じるほど耳に響くことがあります。また、耳鳴りやめまい、難聴を伴うことがあります。
耳管開放症の明確な発症原因はわかっていません。
巨大な音を聞いたり、騒音環境で長期に働いたりしていると内耳にある音を感じ取る細胞に障害が発生し、聴力が低下します。耳鳴りがしたり、音がこもって聞こえたりすることもあります。
騒音環境で働いている人などは、注意が必要です。
高血圧が続くと頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状が出る場合があります。
高血圧を放置していると、将来、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの重い病気を発症する可能性があるため、注意が必要です。
さまざまな臓器の活動や血圧などを調整する自律神経のはたらきが乱れることで、心身にさまざまな症状が出る病気です。症状は耳鳴りのほか、頭痛、動機、不眠、肩こり、めまい、精神的不安定、倦怠感など多岐にわたります。
耳鳴りが一週間以上続く、聴力の低下やめまい、頭痛、吐き気などの症状を伴う場合は早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
受診の際は、耳鳴りが始まった時期や音の聞こえ方、めまいや吐き気などの症状の有無を医師に伝えるとよいでしょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。