耳が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

耳が痛い

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 異物が耳に入った、けがなどきっかけがはっきりしており、痛みが強い
  • 眠れないほどの痛みがある
  • 出血がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 発疹、発熱、耳の周りの腫れ、耳垂れなどがある
  • 痛みの程度は強くないが、異物が耳に入ったおぼえがあり取れない
  • 日常生活に支障はないが、痛みが数日以上続いている

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授

堀井 新 先生【監修】

耳の痛みは聞こえに関する症状などを伴うことも多く、不快に感じることの多い症状です。さらに、痛み方によっては耳や耳以外の部分に病気が隠れていることもあるため注意が必要です。

  • 耳の痛みとだるさ、めまいが続いている
  • いつもより自分の声が大きく聞こえてストレスになっている
  • 耳と歯が同時に痛んでいる気がする

このような症状がみられたとき、考えられる原因にはどのようなものがあるでしょうか。

耳が痛くなる原因には気温や気圧差なども考えられますが、症状によっては病気が引き金となっていることもあります。

耳の痛みの原因となる主な耳の病気には、以下のようなものがあります。

外耳炎

外耳炎とは、細菌・ウイルス感染によって外耳道(耳の穴から鼓膜までの部分)に炎症が起きてしまう病気です。耳を引っぱるなど物理的に動かしたり、顎を動かしたりすると強い痛みが出るのが特徴で、ときには発熱や耳周辺のリンパ節が腫れることもあります。

耳かきで外耳道を傷つけたことでも発症することがあるので、耳そうじをする際は外耳道に刺激を与えないように優しく行うことが大切です。

外耳炎
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中耳炎

中耳炎とは、中耳(鼓膜と内耳の中間部分)が風邪などでウイルスや細菌に感染し、痛みや発熱の症状が出る病気です。これらの症状と併せて耳鳴りや難聴、耳閉感などの症状も現れることがあります。

また、子どもは耳管(中耳と喉を繋ぐ管)が太くて短いためウイルスや細菌が中耳に移動しやすく、中耳炎を発症する頻度が大人と比べて高くなる傾向があります。発熱や風邪の後に耳を痛がる、詳しい場所が分からないが痛がっている様子があるなどの場合には注意が必要です。

中耳炎
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耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)耳管開放症(じかんかいほうしょう)

耳管狭窄症とは、かぜなどによる炎症で耳管(耳と喉をつなぐ管)が腫れて狭くなる病気で、耳閉感や難聴、耳鳴りのほか、耳が痛む症状が出ることがあります。場合によっては上咽頭がんや扁桃腺の腫れが耳管狭窄の引き金となっていることもあります。

また、同じく耳管開放症も耳管に関係する病気ですが、こちらは反対に、閉じている耳管が開いたままの状態になってしまう病気です。耳管が開いているため、自分の声や呼吸音が不快に感じるほど耳に響いたり、耳の痛みや耳鳴り、めまい難聴の症状が現れたりする場合もあります。原因にはストレスや睡眠不足が挙げられていますが、急激な体重減少によるものも多いとされています。

耳管狭窄症
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耳管開放症
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異物・外傷

耳の病気以外にも、耳の痛みは耳の中の傷や、虫、小石などの異物が入ったことで引き起こされることもあります。

どちらの場合にも、耳の中が傷つけば外耳炎を引き起こして激しい痛みが出てしまうため、耳に違和感がある場合はそれ以上耳の中を傷つけないよう注意することが大切です。

耳の中に入った異物を自分で取り除くことが難しい場合は、無理をせずに耳鼻科で取り除いてもらうようにしましょう。

急性耳下腺炎

10歳くらいまでの子どもに多く発症するおたふく風邪として知られています。耳の後ろにある耳下腺とよばれる唾液腺(唾液を作る腺)がムンプスウイルスに感染し、耳の下の腫れと痛み、発熱、喉の痛みが出る病気です。また通常、これらの症状は2~3週間の潜伏期間を経て現れます。

髄膜炎や睾丸炎、膵炎などの合併症の可能性もある病気のため、早めに医療機関を受診しましょう。

おたふく風邪
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ハント症候群

ハント症候群耳性帯状疱疹(じせいたいじょうほうしん))とは、水痘帯状疱疹ウイルスによって顔面の皮膚にピリピリとした強い痛みや水疱を生じる病気です。特に耳には強い痛みが出るほか、麻痺やぐるぐると回転するようなめまい難聴頭痛などの症状を伴うこともあります。

水痘帯状疱疹ウイルスは過去にみずぼうそうにかかったことのある人の体内に潜んでおり、何らかのきっかけで再び活性化し帯状疱疹を起こします。

上で説明した耳の病気以外にも、神経や顎に関連する病気が耳の痛みの引き金になっていることもあります。

三叉神経痛(さんさしんけいつう)

三叉神経痛とは、動脈硬化などで曲がった血管が顔面の感覚を司る神経(三叉神経)を圧迫し、顔面に激しい痛みが出てしまう病気です。痛みが出る場所は頬、耳、顎が多いとされ、最初は虫歯による痛みだと勘違いすることもあります。また、歯磨きや食事、会話で痛みが誘発され、一日に何度が繰り返す傾向が見られます。

痛みが出る時間は数秒~2分程度と短いものの、痛みが激しく、日常生活に大きな支障が出る場合もあるといわれています。

三叉神経痛
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顎関節症

顎関節症とは、耳の下あたりにある顎関節や下あごを動かす咀嚼筋に負担がかかり、痛みや「ゴリゴリ」といった音、口の開けづらさなどの症状が出る病気です。患部が耳の近くにあるため、耳の痛みだと感じる人もいます。

顎関節症
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耳の痛みが一週間以上続く場合や、痛みが強い時、痛みと同時に発熱、めまい、顔面の激しい痛みなどがあるときは早めに耳鼻科を受診しましょう。

受診の際は、痛みが出始めた時期や痛む時間、頻度、痛む場所と痛みの出方、発熱や全身の症状など、耳以外の体調もできるだけ詳しく医師に伝えてください。

耳の痛みの原因は、日常生活を送る環境に存在することもあります。

飛行機への搭乗や高階層のエレベーターに乗ったときなど、外の気圧が急激に変化すると鼓膜が押されて痛みが生じることがあります。

気圧の変化で耳が痛いときは

唾液を飲み込んで耳管を開け、気圧を調整する方法があります。ガムや飴を食べて唾液を出し、飲み込んでみましょう。また、あくびをするなども効果があります。

通常は気圧が調整されると痛みや聞こえづらさは自然とよくなりますが、数日たってもよくならないような場合には耳鼻科へ受診しましょう。

症状がよくならない時には思いもよらない原因が潜んでいることもあります。一度耳鼻科で相談してみましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。