難聴:医師が考える原因と対処法|症状辞典
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気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
兵庫医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
三代 康雄 先生【監修】
難聴とは、音楽や人の会話、生活音などが何らかの原因により聞こえにくくなる状態のことをいいます。大切な聞こえに関する症状のため、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
このような症状がある場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。
難聴が現れた場合、随伴症状の有無や症状の出方によってはなんらかの病気が原因である可能性があります。
以下のような耳に関する病気は、難聴を引き起こす代表的な例です。症状が共通するものも多く、専門家以外では見極めが難しいため、診断には医師による診察と検査が必要です。
突発性難聴とは、ある日突然耳が聞こえにくくなる病気です。難聴のほか、めまいや耳鳴りを伴うことがあり、通常、片耳だけに症状が出ることが多いとされています。
原因には内耳(聴力と平衡覚を司る器官がある部分)のウイルス感染やストレス、内耳の血管にある障害が挙げられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
突発性難聴は治療に時間がかかったり聴力が完全に戻らなかったりするケースもあるため、早急に治療を開始することが大切です。
低音障害型感音難聴とは、低い音だけが急に聞こえなくなる病気です。耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴り、音がゆがんで聞こえるなどの症状を感じる事が多いとされています。突発性難聴と異なり、明らかに聞こえなくなった・聞こえないと感じない事もあるため、受診が遅れる事が少なくありません。
原因にはストレスや睡眠不足、疲れなどがあるのではないかといわれています。
中耳炎とは、鼓膜と内耳の中間部分(中耳)がウイルスや細菌によって炎症を起こし、耳の痛みや耳閉感、難聴、耳鳴りなどの症状を引き起こす病気です。中耳に炎症が生じた状態、時期により急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎に分けられます。
急性中耳炎は乳幼児に多い中耳炎です。上気道炎(鼻やのどの炎症)から耳管(中耳と鼻の奥を繋ぐ管)を通して感染が起こります。難聴だけでなく、耳痛や発熱、鼓膜が破れた場合は耳だれなどの症状が現れます。
滲出性中耳炎は、耳管が開いて適度な換気が行われないことで中耳に滲出液がたまり、難聴や耳鳴りの症状が現れる病気です。乳幼児に多く、耳の痛みがないため発見が遅れる事があります。テレビのボリュームを上げたがる、後ろから呼びかけても反応しないなどで気づく事も少なくありません。
慢性中耳炎は慢性穿孔性中耳炎と真珠腫性中耳炎に分けられます。慢性穿孔性中耳炎は、急性中耳炎の繰り返しなどで鼓膜に穴が残ってしまった中耳炎です。炎症を起こすと耳だれが出たり、鼓膜に穴が開いているために難聴を起こしたりします。
真珠腫瘍性中耳炎は鼓膜や皮膚の一部が中耳に入り込んで増殖していく難治性の中耳炎です。腫瘍ではありませんが骨を破壊するため、顔面神経麻痺やめまい、強い難聴、髄膜炎などの重篤な合併症を起こす事があります。初期には症状がなく、発見が遅れる事もすくなくありません。原因は不明ですが鼻をすする癖のある人に多いという報告もあります。
いずれにしても専門家でなければ見分けることが難しいため、当てはまる症状がある場合は医療機関へ受診しましょう。
メニエール病とは、平衡感覚に異常が生じて、吐き気やぐるぐると回るめまいを発作的に繰り返す病気です。めまい発作の際には、難聴や耳鳴り、耳閉感の症状を伴います。
ストレスや疲れ、睡眠不足によって、内耳にあるリンパ液の調整ができなくなることが原因だとされています。
耳管狭窄症とは、炎症などで耳管(中耳と喉を繋ぐ管)が腫れ、耳鳴りや耳閉感、耳の痛み、難聴の症状が出る病気です。上咽頭がんやアデノイドという鼻の奥の扁桃組織の腫れが耳管狭窄の引き金となっていることもあります。
耳硬化症とは、鼓膜の内側にあるアブミ骨とよばれる耳小骨の動きが悪くなり、難聴や耳鳴りの症状が出る病気です。
原因には遺伝的要素の関連が指摘されていますが、はっきりとしたことはわかっていません。
外リンパ瘻とは、頭部をぶつけるなどの外傷や、急激な気圧の変化によって内耳の一部に穴が開き、外リンパという液体が漏れてしまう病気です。症状としてはめまいや耳鳴り、難聴、嘔吐などの症状が挙げられます。
頭部の外傷以外にも、くしゃみやトイレでのいきみ、強く鼻をかむなど、日常生活での行動が原因になることもあります。
聴神経腫瘍とは、多くは前庭神経から発生する良性腫瘍です。徐々に進行する難聴が特徴的ですが、突発性難聴のように急に発症することもあります。腫瘍が増大すると、めまいや顔面神経麻痺を起こすこともあります。
難聴の症状が一週間以上続く場合は、耳鼻科を受診しましょう。特に突発性難聴など早期治療が鍵となる病気もあるため、突然聞こえづらくなったと感じたら、なるべく早く医師に相談することが大切です。
受診の際は、症状が出始めた時期や聞こえづらさの程度、耳鳴りや痛み、熱の有無、めまいなど他の症状があるかを伝えるとよいでしょう。
難聴が起こる原因には様々なものがありますが、日常生活の中にも原因が潜んでいる場合があります。
年齢を重ねると聴力に関連する神経が老化し、内耳の感覚細胞が減っていくため徐々に音が聞こえにくくなっていきます。
もし聞こえづらさを感じ年齢のせいかなと思っても、まずはなんらかの病気が原因となっていないかの確認を耳鼻科で受けましょう。
耳栓をすると外部の音が遮断されるのと同様、耳の中に水や虫・異物などが入ると音が聞こえにくくなります。
耳かきなどで無理に異物を出そうとすると外耳道を傷つけてしまう可能性があるため、自宅で対処しても取れない場合は耳鼻科を受診しましょう。
また、水が入ったときは水が入った方の耳を下に傾けて、片足で軽くジャンプすると排出されることが多いです。ティッシュなどを無理に入れて水を吸わせるようなことは控えましょう。
耳垢が溜まったままの状態を放置していると耳垢が耳の中に詰まり、音が聞こえにくくなることがあります。耳垢を取り過ぎることもよくありませんが、耳垢の栓ができるほど放置することもよくありません。
入浴後、適度に湿った耳の穴に柔らかい綿棒をそっと入れ、外耳道の壁を強くこすらないように綿棒を回転させるようにしましょう。綿棒を入れる深さは耳の穴から1cm程度が適切です。回数は週に1~2回で十分です。
どうしても気になる場合には耳鼻科で耳垢を取り除いてもらうのがよいでしょう。
また、耳掃除をする時には座って安全な場所で行いましょう。転んだり、子どもやペットが飛びついてきたりして誤って鼓膜を破る事があります。
飛行機への搭乗やエレベーターでの移動など、気圧差が生じる環境では鼓膜が内側に押されて難聴や耳閉感、耳鳴りなどの症状が出ることがあります。
飴やガムを口に含んで唾液を出し、飲み込んでみましょう。こうすることで気圧差を調整することができます。また、あくびをすることも効果的です。
耳は想像以上にデリケートな器官です。以上のことを心がけても改善の兆しが見えないときは、一度耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。