聞こえない:医師が考える原因と対処法|症状辞典

聞こえない

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 聞こえなくなったタイミングがはっきりわかるくらい、突然聞こえなくなった

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 耳鳴り、耳がふさがっているような感じ、めまいがある
  • 耳や耳の周辺に発疹ができており痛みがある
  • 打撲などのきっかけがある
村上 信五 先生

[監修] 村上 信五 先生

名古屋市立東部医療センター 病院長/名古屋市立大学病院 副病院長/耳鼻いんこう科 診療科部長、名古屋市立大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学 教授

突然音が聞こえにくい・聞こえないという症状が現れたとき、大変不安に感じることが多いのではないでしょうか。中には迅速な対応が必要な場合もあるため、注意が必要です。

  • テレビを見ていたら急に片方の耳が聞こえなくなった
  • 耳周辺に赤いブツブツができて痛く、聞こえも悪くなった
  • ライブで大音量の音楽を聴いた翌日、聞こえにくくなっていることに気づいた

このような症状が見られた場合、どのような原因が考えられるでしょうか。

聞こえなくなった・聞こえにくくなったと感じた場合、考えられる病気にはどのようなものがあるでしょうか。

突然聞こえなくなったと感じることが多い病気には、主に以下のようなものがあります。

突発性難聴

急に片耳の聞こえが悪くなる病気です。ほとんどは、聞こえなくなった日時やタイミングを正確に言えるほど突然の症状が現れます。

難聴の他に耳鳴り、めまいが起こる場合もあります。これは、聞こえについて大切なはたらきをしている蝸牛のとなりにある、三半規管という体のバランスをつかさどる部位にも障害が及んでいる場合があるためです。原因はウイルス感染・内耳の血流障害などがあるとされていますが、原因不明の場合も多いといわれています。

メニエール病

メニエール病とは、平衡感覚に異常が生じ、吐き気やめまいを発作的に繰り返す病気です。このほか、難聴や耳鳴り、耳閉感の症状を伴うこともあります。

ストレスや疲れ、睡眠不足によって、内耳にあるリンパ液の代謝が悪くなることが原因といわれています。

低音障害型感音難聴

低音障害型感音難聴とは、突然耳閉感(耳が詰まったような状態)におそわれたり、難聴になったりする病気です。聴力検査をすると、低い音だけが聞こえにくくなっているため、このような病名で呼ばれています。

人によっては耳鳴り、音が歪んで聞こえるなどの症状も一緒に現れることがあります。これらの症状はメニエール病と似ていますが、違いとしてめまいがないことが特徴です。

感染症

帯状疱疹の一種であるラムゼイハント症候群は、過去にみずぼうそうにかかったことのある人の体内に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化し、顔面の皮膚に強い痛みが出る病気です。耳の痛みのほか、難聴、頭痛、顔面神経麻痺、回転性のめまいなどの症状が生じることもあります。

このほか、おたふくかぜウイルスによるムンプス難聴、細菌やウイルスの感染が原因の急性中耳炎でも急激な難聴を起こすことがあります。

音響外傷(急性音響性聴力障害)

ディスコ難聴、ロック難聴などとも呼ばれます。大音量の音を聞いたあとに、耳が聞こえにくくなる病気です。大きな音のエネルギーによって蝸牛の感覚細胞が損傷されたことによるものと考えられています。

外リンパ瘻

外リンパ瘻とは、頭部をぶつけるなどの外傷や、急激な気圧の変化によって蝸牛の窓に穴が開き、外リンパという液体が漏れてしまう病気です。症状としてはめまいや耳鳴り、難聴、嘔吐などの症状が挙げられます。

頭部の外傷以外にも、くしゃみやトイレでのいきみ、強く鼻をかむなど、日常生活での行動が原因になることもあります。

耳管狭窄症・耳管開放症

中耳と咽頭をつないでいる耳管は、開いたり閉じたりすることで中耳の圧を調節しています。しかし、この機能に問題が起こると、耳鳴り、耳が詰まった感じ、自分の声が響くといった症状が起こることがあります。

耳管狭窄症は、炎症などで耳管が腫れ、耳閉感や耳の痛み、難聴の症状が出る病気です。上咽頭がんやアデノイド(咽頭扁桃)の腫れが耳管狭窄の引き金となっていることもあります。

他方、耳管開放症とは、耳管狭窄症とは反対に、通常は閉じている耳管が開いたままになってしまう病気です。耳管が開いているため、自分の声や呼吸している音が不快に感じるほど耳に響いたり、耳鳴りやめまい、難聴を併発したりする場合もあります。

徐々に聞こえにくくなる場合、自分では気づきにくく、周囲の人から「聞き返すことが多くなった」と指摘されて気づく場合もあります。

考えられる病気には以下のようなものがあります。

老人性難聴

加齢に伴い耳が遠くなることはよく知られていますが、これは蝸牛の細胞の老化によることもあれば、音を受け取る脳の機能低下による場合もあります。

日常生活に不便を感じるようであれば、補聴器などの使用が必要な事もあります。年齢のせいと諦めず、一度耳鼻咽喉科で相談してみましょう。

耳硬化症

中耳で音を伝達する役割をしている耳小骨のひとつである鐙骨の周りが固まってしまい、動きが悪くなる病気です。このため難聴や耳鳴りなどの症状が現れますが、徐々に進行することが特徴です。また両耳同時、もしくは時期がずれて両耳に起こるころが多いのも特徴です。

聴神経腫瘍

体のバランスや音を脳に伝える神経に腫瘍ができる病気です。聞こえの神経はとても繊細で、腫瘍が比較的小さくても難聴の症状が現れることがあるといわれています。また、腫瘍の成長速度によっては急激な難聴の原因となる場合もあります。

急激に聞こえなくなった場合は速やかに治療を行う必要がある場合が多く、できるだけ早く受診する事が大切です。また、何となく聞こえが悪くなったような気がする、聞こえにくく感じたり、よくなったりを繰り返しているような場合にも一度受診が必要です。

受診科目は耳鼻咽喉科が適しています。

受診時には、いつから聞こえにくいのか、耳の痛みなど他の症状はあるかなどについて医師に伝えましょう。

聞こえにくさを感じた場合、日常生活上の出来事が原因となっている場合もあります。

イヤホンやヘッドホンを使用し音楽を聴くことを習慣にしていると、知らないうちに聴力が落ちていることもあります。

耳を守るためには

イヤホンやヘッドホンを使っているとつい音量を大きくしてしまいがちですが、できるだけ小さい音にとどめ、周囲の音が十分聞き取れる程度にしておきましょう。また、一日中・長時間使用するなどは控え、耳を休ませる時間をとるようにしましょう。

子供や高齢者に多いですが、耳垢が栓のようになって聞こえにくさの原因になっている場合もあります。

正しい耳掃除の方法とは

入浴後、柔らかい綿棒などを使い外耳道の壁を強くこすらないようにして行います。綿棒を回転させるようにするとよいでしょう。

また、綿棒を入れる深さは耳の穴から1cm程度までが適切です。それ以上深くには入れないようにし、どうしても気になる場合には耳鼻科で耳垢を取り除いてもらいましょう。聞こえが悪く感じるほどであれば、自分で無理に取り除こうとせず、まず耳鼻科への受診でもよいでしょう。

症状がいつまでもよくならない場合には、思いもよらぬ原因が潜んでいるかもしれません。一度耳鼻咽喉科で相談してみましょう。