唇が白い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授
門野 岳史 先生【監修】
唇は人体の中でも皮膚が非常に薄い部位であり、皮膚の下を走行する毛細血管の色調が透けて見えるため、通常の皮膚よりも赤みを帯びています。健康的な唇の色は薄紅~赤色ですが、唇の色はさまざまな原因によって変化します。唇の色は健康状態を示すバロメーターとも考えられており、中でも白い唇は比較的よく見られる症状のひとつです。
これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。
唇の白い変色は日常生活上の好ましくない習慣によって引き起こされることもあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下のとおりです。
唇は皮膚のバリア機能を担う角質層が薄いため、他部位よりも乾燥しやすく、唇が荒れて白っぽく見える原因になることがあります。
唇は外気の影響を受けやすいため、空気が乾燥しやすい季節には保湿効果の高いリップクリームやリップバームなどを使用しましょう。また、特に冬場などは加湿器や濡れタオルを用いて室内の湿度を十分に保つことも大切です。
寒い外気やエアコンの強い冷風などが当たると体が冷え、血管が収縮します。その結果、血色が悪くなり、唇が白く見えることがあります。
寒い時期は温かい服装を心がけるのはもちろんのこと、夏場であっても冷房の風には直接当たらないよう注意しましょう。また、体温調節できるような羽織物やひざ掛けなどを用意しておくのもおすすめです。
血管は交感神経が過度に緊張すると収縮して血色が悪く、唇が白く見えることがあり、ストレスや疲れ、緊張などが原因となることも多いとされています。
日常生活からストレスを完全に排除することはできませんが、日頃から熱中できる趣味を持ち、十分な睡眠・休息時間を確保するなど、ストレスや疲れをためない生活を心がけましょう。
日常生活上の好ましくない習慣を改善しても症状が改善しない場合は、思わぬ病気が潜んでいる可能性もあります。中には早急に治療を開始するべき病気もありますので、看過せずにそれぞれの症状に合わせた診療科を受診するようにしましょう。
唇の色はさまざまな原因によって変化しやすいため、健康状態を示すひとつの指標と考えられています。中でも、唇の白い変色は比較的よく見られる症状であり、思わぬ病気が原因のこともあるため注意が必要な症状です。
唇が白くなる主な病気には、以下のようなものが挙げられます。
唇が白くなる病気には、唇自体に生じる病気が挙げられます。原因となる主な唇の病気は以下のとおりです。
唇に炎症が引き起こされる病気で、原因は紫外線や外気、飲食物の刺激などの外的な要因、ウイルスや細菌感染などの内的な要因が挙げられます。発生頻度の高い症状であり、唇のかゆみや痛み、発赤、腫れなどを引き起こしますが、中には唇が高度に乾燥して皮膚が毛羽立つように剥け、唇全体が白っぽく見えるようになることがあります。
単純ヘルペスウイルスに感染することによって発症する病気で、唇や唇の周りに痛みを伴う水疱を形成します。水疱は表面が白く、悪化すると潰れて潰瘍を形成することも少なくありません。また、いったん症状が改善してもウイルスが体内から完全に排出されることはなく、体調不良など免疫力が低下しがちなときにウイルスが再活性化して再発を繰り返すのが特徴です。
唇やまぶた、頬や口腔内などに突然強い腫れが生じる病気です。明確な発症メカニズムは解明されていません。かゆみや痛みなどは軽いことが多く、多くの場合は1日以内に何事もなかったかのように回復するのが特徴で、再発を繰り返します。
唇に発症した場合は唇全体が大きく腫れ上がるため、通常時よりもやや白っぽく見えることがあります。
唇が白くなる病気には、唇以外の部位に生じる病気が挙げられます。原因となる主な病気は以下のとおりです。
血液中のヘモグロビン濃度が低下し、全身に運搬される酸素量が低下する病気です。乳幼児から高齢者まで幅広い年代に見られる症状のひとつであり、原因は鉄分やビタミンの摂取不足、胃潰瘍や子宮筋腫などによる慢性的な貧血、白血病などの骨髄機能の低下など、さまざまなものが挙げられます。一般的には、めまいや動悸、息切れなどの症状を引き起こし、赤色色素を有するヘモグロビンが減少することで、結膜や爪などさまざまな部位が白っぽく見えるようになります。また、唇も血色を反映しやすい部位であるため、唇が白っぽく見えるようになることも少なくありません。
自律神経を成す交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで全身にさまざまな不調を引き起こす病気です。過度なストレスや疲れ、更年期などが発症の引き金になると考えられていますが、明確な発症メカニズムは解明されていません。
突然の発汗や紅潮、動悸、めまいなどの身体症状や抑うつ気分、不眠などの精神症状を生じます。また、過度に交感神経が緊張した状態が続くと血管が収縮するため血色が悪くなり、唇が白っぽく見えることもあります。
唇の白い変色は比較的よく見られる症状であり、化粧をすると目立ちにくくなるため軽く考えられがちな症状のひとつでもあります。しかし、中には恐ろしい病気が潜んでいることもあるため、唇が白い状態が続くときは病院を受診することがすすめられています。
特に、唇に水疱やできもの、腫れなどの病変を伴う場合、唇に強い痛みがある場合、何らかの全身症状がある場合には、なるべく早めに病院を受診する必要があります。
受診に適した診療科は皮膚科ですが、めまいなどの全身症状を伴う場合は、かかりつけの内科などで相談するのもよいでしょう。受診の際には、いつから唇の白さが気になるようになったか、その誘因、随伴する症状、現在罹患している病気などを詳しく医師に説明することが大切です。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。